ハニードロップ

蜜柑大福

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好きじゃない

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昨日はなんかあっただろうか、いつもと違うというと河原と、河原と………

河原の息遣いや、俺を呼ぶ声が脳内に焼き付いていて顔が熱くなる。

えっ!?あれでなんか変な雰囲気出してたか!?

顔を触ってみても分からない、河原も朝何も言ってなかったし…

廊下を歩く通行人の生徒達を見ると、顔を赤くする奴やトイレに駆け込む奴が続出していた。

…なんだ、何が起こってるんだ!?不安で顔が引きつる。

俺自身では変化は分からないから二人にすがるように見つめると始は言いにくそうに俺を見ていた。

「襲われたくなかったから一人にならない方がいいな」

「襲うって、そんな河原じゃないんだし…」

始が変な事を言うから、笑い飛ばしていた。

そこまで言いハッとなり口を手で塞いでこれ以上余計な事は言わないようにする。

…失言だった、ヤバい昨日の事を自分から暴露するなんて…

どう誤魔化せば…ダメだ、襲うってもうそれしか思いつかない!

始をチラッと見ると分かってないのか「どうした?」と首を傾げていた。

鈍感な始で良かったとホッとして、紫乃を見て顔を青ざめた。

紫乃はニヤニヤした顔をしてこちらを見ていた。

勘違いしているわけではなく、この顔は分かっている顔だ。

始と違い紫乃は鋭い、これは完璧にアウトだ。

「へー、優紀くんがねぇー…そっかそっか、だから色気が凄いんだねー」

「紫乃どうした?俺にも説明しろよ」

「…童貞は黙れ」

「あ!?お前も童貞だろバカ優紀!」

紫乃ならいいのに、始には何となく知られたくなかった。

俺と始は睨み合い紫乃だけが楽しそうに「恋の相談ならまかせて!」と言っていた。

紫乃はこういうところはイキイキとしているなぁ。

そういえば、そういう話が好きだった事を思い出した。

それにしても紫乃は今、なんて言ったんだ?

恋?誰が?誰を?紫乃はいったい何の事を言っているんだ?

この場には三人しかいないし、その中の二人は恋人だから違うだろう。

え、俺?…俺が紫乃と始みたいに河原を好き?

そんなまさかぁと本気にはしておらず始と睨み合いながら学校に向かった。

河原とはしたけど、好きかと言われてもよく分からない。

彼女に抱いていた感情とも微妙に違うからきっとこれは恋ではない。

彼女と付き合ってそういうのもするのかと思っていたが、したいとも特に思わなかった。

なのに河原とは……こんな性欲にまみれた関係…恋な筈がない。

恋って、もっと清らかで甘酸っぱいものだって本に書いてあった。

河原は美形だけど俺は普通に女の子が好きで…紫乃みたいな美少女顔ならまだしも、どう見ても女の子には見えない。

それどころか、俺を見つめる熱い瞳とか俺を気遣って抱える時とか、どう見てて彼女ではなく彼氏感がする。

どっちかというと、俺の方が彼女みたいで嫌だ。

俺だって男なのに、河原にからかわれたような気分になる。

そんな河原に恋をしたとか……そんな事…ない。

優しい時はあるが、俺様で強引で性欲魔人で…考えたらキリがない。

体の関係を持ったから紫乃はきっと勘違いしているんだ。

紫乃には悪いけど、期待に応える事は出来ない。

自分に言い聞かせて、紫乃達を通り過ぎて早足で歩く。

心臓が早くて、嫌な汗が流れる…違う、これは…違う。

紫乃達に体の関係がバレたから焦っているだけだ。

本当の恋人同士である紫乃達がまだなのに、付き合ってもいない俺が先にするって変な話だよな。

でも引かれなくて良かった、紫乃はそんな奴じゃないのは分かってるんだけどな。

俺自身が付いていけない感情だから、他人にどう思われるのか気になった。

後ろから紫乃達がのんびり付いて来ている。

「優紀くんは素直じゃないなぁ」

「なにがだよ」

「素直になればいいのに、あれ?でもなんで河原くんが優紀くんの部屋に来たの?泊まったの?」

「……なんで河原が部屋に来た事前提なんだよ」

「だって襲われたんでしょ?」

紫乃は目を輝かしていて、なにが楽しいのか分からない。

俺自身はこんなに悩んでいるのに…

俺の様子からして無理矢理ではないって分かっているからなんだろう。

もし無理矢理だったら、普段は明るい紫乃でも怒ってくれるだろう。

友達思いだからな、紫乃も…一応始もな。

とりあえず河原と同室になった事だけ話した。

あんな事はあったが河原の秘密を守る事はする。

だから、紫乃に詳しく聞かれても俺は秘密は絶対に言わない。

紫乃はもっと聞きたそうにしていたが、俺はすぐに話題を終わらせた。
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