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この気持ちの名は…
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※三条優紀視点
「いてて…」
「優紀くん大丈夫?変わろうか?」
「…いえ、平気です」
「そう?無理しないでね」
子供向けイベントの会場作りのバイト中、椅子を持つと腰に負担が来て痛くなる。
河原の奴、好き勝手やりやがって…俺がその気にさせたとはいえ加減を知らないのか。
腰だけではなく、なんか尻も違和感が残っている。
まさか、俺の尻が壊れたなんて事はない…よな?
バイト仲間のおじさんに心配され笑顔で断る。
息を吐いて、足と腕に力を入れて一気に運ぶ。
このくらいやらなきゃな…妹のチケット代もあるし…
椅子を組み立てて、看板の設置を手伝い掃除してバイトは終わった。
休みの日のバイトじゃないからあまり給料はもらえないが、まぁいいか。
日給の休日バイトは競争率が高くて、なかなか出来ないんだよな。
だから暇があれば平日の学校終わりにバイトをする。
頬をかすめる冷たい風を感じてすっかり遅くなった夜道を歩く。
空が暗闇に覆われ、星が散りばめられていた。
そういえば河原も出かけてるんだっけ、もう帰ってるのか?
教室では隣なのに一度も目が合わなかった。
気まずいというより、なんか違う感じだった。
紫乃が一生懸命声を掛けていたが、河原は無視していた。
紫乃も紫乃なりに心配してくれたんだろう。
俺からは、どうしても声を掛ける雰囲気ではなかった。
今朝はそんな事なかったのに、なにかしたっけと不安な気持ちになる。
……もしかして、俺を抱いた事…後悔してるのか?
最初は俺の悪ふざけだったけど、嫌なら突き飛ばせば良いのに…最後までするとは思わなかった。
なんで嫌ならあの時、俺にあんな事したんだよ。
なんか傷付く、もし河原が帰ってなかったら俺のせいだよな。
河原との関係が分からなくて、気まずくは感じていたがあからさまに嫌がられると胸が苦しい。
どうせ性処理に使ってるなんて自分で思っていたのに、なんか……何だよこの気持ち。
「早く物置片付けなきゃな」
顔も見たくないだろうし、今日は物置で寝るから……安心して帰ってこいよ、河原。
自然と歩くスピードが落ちてきた時、ズボンのポケットが短く震えた。
電話ではないな、SNSメッセージだろう…紫乃か始か?
電話じゃないから緊急ではなさそうだし後ででいいか、もう食堂閉まってるしコンビニで夜食を買ってから帰る事にした。
寮前に着き、自分の部屋がある窓を見つめた。
電気付いてるな、今朝は付けていないから河原帰ってるのか。
もう顔も見たくないのかと思っていたから、一先ずホッとして寮に入った。
もう10時半だ、夜更かしして何してるんだ?
……もしかして、俺が帰ってくると思って襲われるとか思って怖くて眠れないとか。
河原にかぎって怖いとか、ないなとその考えは消えた。
というか俺が襲うってなんだよ、と自分で勝手に思って微妙な顔をしながら部屋の前で鍵を差し込み開けた。
まだ気まずくて部屋を覗く、リビングのみ明かりが漏れて暗い廊下を薄く照らす。
「…た、ただいまー」
返事がない、声が小さかったからか…それとも俺とはもう話してくれないのか?
河原とはいい友達になれると思ったのにな、と寂しく思う。
…胸がズキズキ痛む、彼女にフラれた時と同じだ。
何だこれ、河原に嫌われたと思っただけなのに吐き気がする気持ち悪い。
夜食が入ったコンビニ袋を落として急いでトイレに駆け込む。
吐きたいが飯を食べていないから液体しか出ない。
……あの時と同じだ、違うのは場所くらいだ。
そういえばあの時、誰かがいたような気がした。
「メンタル弱いな、また吐いてんのかよ」
「…っ!?」
後ろから聞き覚えある声がしてこの部屋にいる人物なんて一人しか思い付かない。
トイレのドアに寄りかかる河原は俺をずっと見ていた。
吐いてる場面なんて汚くて見れないだろうに動こうとしない。
なにか用があるのか、あ…俺じゃなくてトイレにか。
仕方ない、コンビニ袋の中身全部出してビニール袋にでも出すしかない。
動くのもダルいけど何とか足に力を入れて立つ。
河原のためにも俺はいない方がいいだろう。
トイレの入り口に立つ河原を押し退けて歩き出した。
河原がどんな顔をしてるか分からない、顔を見る勇気はなかった。
玄関に起きっぱなしの買い物袋に近付こうとしたらいきなり後ろから肩を掴まれた。
驚く暇もなく押し倒されて地面に叩きつけられた。
頭を打ち顔を歪めていると目の前に河原の顔がありなにか言う前に唇を塞がれた。
「ふっ、ん、んー!!」
「…ちゅ、はぁ…んっ」
河原の口からなにかを流し込まれた、これは…水か?
唇が離れたと思ったら河原は持っていたペットボトルに口付けて、俺に口移しする。
前にも、こんな事があった…唇の感覚…水が喉に通る気持ちよさ…
今まで忘れていた事が一つ一つ思い出される。
そうだ、彼女にフラれた時同じ事をされたんだ。
じゃあ河原がファーストキスだと思ったら違ったのか?
いや、そうじゃない……同じなんだ…荒いのに何処か優しいキス…それに河原は転校する前から俺を知っていたという。
あの人は、河原だったのか…恩を覚えていたが顔はぼやけていて思い出すのに時間が掛かった。
ペットボトルの水が半分くらいになり、もういいと河原の肩を押す。
誰が訪ねてもいいように変装のままだった。
これじゃあ河原の顔が見えない、今どんな顔をしてるのか見たい。
河原のかつらを引っ張るとズルッと簡単に落ちて美しい金髪の河原が見えた。
いつもの河原らしくない、眉を寄せて悲しげな顔をしていた。
「いてて…」
「優紀くん大丈夫?変わろうか?」
「…いえ、平気です」
「そう?無理しないでね」
子供向けイベントの会場作りのバイト中、椅子を持つと腰に負担が来て痛くなる。
河原の奴、好き勝手やりやがって…俺がその気にさせたとはいえ加減を知らないのか。
腰だけではなく、なんか尻も違和感が残っている。
まさか、俺の尻が壊れたなんて事はない…よな?
バイト仲間のおじさんに心配され笑顔で断る。
息を吐いて、足と腕に力を入れて一気に運ぶ。
このくらいやらなきゃな…妹のチケット代もあるし…
椅子を組み立てて、看板の設置を手伝い掃除してバイトは終わった。
休みの日のバイトじゃないからあまり給料はもらえないが、まぁいいか。
日給の休日バイトは競争率が高くて、なかなか出来ないんだよな。
だから暇があれば平日の学校終わりにバイトをする。
頬をかすめる冷たい風を感じてすっかり遅くなった夜道を歩く。
空が暗闇に覆われ、星が散りばめられていた。
そういえば河原も出かけてるんだっけ、もう帰ってるのか?
教室では隣なのに一度も目が合わなかった。
気まずいというより、なんか違う感じだった。
紫乃が一生懸命声を掛けていたが、河原は無視していた。
紫乃も紫乃なりに心配してくれたんだろう。
俺からは、どうしても声を掛ける雰囲気ではなかった。
今朝はそんな事なかったのに、なにかしたっけと不安な気持ちになる。
……もしかして、俺を抱いた事…後悔してるのか?
最初は俺の悪ふざけだったけど、嫌なら突き飛ばせば良いのに…最後までするとは思わなかった。
なんで嫌ならあの時、俺にあんな事したんだよ。
なんか傷付く、もし河原が帰ってなかったら俺のせいだよな。
河原との関係が分からなくて、気まずくは感じていたがあからさまに嫌がられると胸が苦しい。
どうせ性処理に使ってるなんて自分で思っていたのに、なんか……何だよこの気持ち。
「早く物置片付けなきゃな」
顔も見たくないだろうし、今日は物置で寝るから……安心して帰ってこいよ、河原。
自然と歩くスピードが落ちてきた時、ズボンのポケットが短く震えた。
電話ではないな、SNSメッセージだろう…紫乃か始か?
電話じゃないから緊急ではなさそうだし後ででいいか、もう食堂閉まってるしコンビニで夜食を買ってから帰る事にした。
寮前に着き、自分の部屋がある窓を見つめた。
電気付いてるな、今朝は付けていないから河原帰ってるのか。
もう顔も見たくないのかと思っていたから、一先ずホッとして寮に入った。
もう10時半だ、夜更かしして何してるんだ?
……もしかして、俺が帰ってくると思って襲われるとか思って怖くて眠れないとか。
河原にかぎって怖いとか、ないなとその考えは消えた。
というか俺が襲うってなんだよ、と自分で勝手に思って微妙な顔をしながら部屋の前で鍵を差し込み開けた。
まだ気まずくて部屋を覗く、リビングのみ明かりが漏れて暗い廊下を薄く照らす。
「…た、ただいまー」
返事がない、声が小さかったからか…それとも俺とはもう話してくれないのか?
河原とはいい友達になれると思ったのにな、と寂しく思う。
…胸がズキズキ痛む、彼女にフラれた時と同じだ。
何だこれ、河原に嫌われたと思っただけなのに吐き気がする気持ち悪い。
夜食が入ったコンビニ袋を落として急いでトイレに駆け込む。
吐きたいが飯を食べていないから液体しか出ない。
……あの時と同じだ、違うのは場所くらいだ。
そういえばあの時、誰かがいたような気がした。
「メンタル弱いな、また吐いてんのかよ」
「…っ!?」
後ろから聞き覚えある声がしてこの部屋にいる人物なんて一人しか思い付かない。
トイレのドアに寄りかかる河原は俺をずっと見ていた。
吐いてる場面なんて汚くて見れないだろうに動こうとしない。
なにか用があるのか、あ…俺じゃなくてトイレにか。
仕方ない、コンビニ袋の中身全部出してビニール袋にでも出すしかない。
動くのもダルいけど何とか足に力を入れて立つ。
河原のためにも俺はいない方がいいだろう。
トイレの入り口に立つ河原を押し退けて歩き出した。
河原がどんな顔をしてるか分からない、顔を見る勇気はなかった。
玄関に起きっぱなしの買い物袋に近付こうとしたらいきなり後ろから肩を掴まれた。
驚く暇もなく押し倒されて地面に叩きつけられた。
頭を打ち顔を歪めていると目の前に河原の顔がありなにか言う前に唇を塞がれた。
「ふっ、ん、んー!!」
「…ちゅ、はぁ…んっ」
河原の口からなにかを流し込まれた、これは…水か?
唇が離れたと思ったら河原は持っていたペットボトルに口付けて、俺に口移しする。
前にも、こんな事があった…唇の感覚…水が喉に通る気持ちよさ…
今まで忘れていた事が一つ一つ思い出される。
そうだ、彼女にフラれた時同じ事をされたんだ。
じゃあ河原がファーストキスだと思ったら違ったのか?
いや、そうじゃない……同じなんだ…荒いのに何処か優しいキス…それに河原は転校する前から俺を知っていたという。
あの人は、河原だったのか…恩を覚えていたが顔はぼやけていて思い出すのに時間が掛かった。
ペットボトルの水が半分くらいになり、もういいと河原の肩を押す。
誰が訪ねてもいいように変装のままだった。
これじゃあ河原の顔が見えない、今どんな顔をしてるのか見たい。
河原のかつらを引っ張るとズルッと簡単に落ちて美しい金髪の河原が見えた。
いつもの河原らしくない、眉を寄せて悲しげな顔をしていた。
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