ハニードロップ

蜜柑大福

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秘密

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ーーー

昼休みとなり、普通なら珍しい転校生に周りが寄ってくるがあの出会いの挨拶から誰も寄ってこない。

本人もそれでいいのは分かるが、ずっと高校生活ぼっちか?

始と紫乃が俺のところに来て、食堂行こうと教室を出ようとしたら担任に呼び止められた。

「三条くん、ちょっと待って!彼に校内を案内してほしいんだけど」

「…えー、俺腹減ってるんだけど」

「彼は理事長先生から特別扱いしてほしいと言われてね」

面倒な奴が転校してきたもんだな、仕方ない…購買寄って適当にパンでも買うしかねぇか。

始と紫乃も一緒に行ってくれるらしくありがたかった。

根暗くんと二人っきりは気まずすぎる、何話していいのか分からないし…

根暗くんの席に戻ると動く気配がなかった。

弁当を持って来てる気配もないし飯食わねぇのか?

ただ根暗くんは耳にイヤホン付けて音楽を聞いていた。

声を掛けても気付かないだろうから根暗くんの前に立ち手を振ってみると気付いたのかイヤホンを外した。

聞く体勢になったのはいいが、面倒そうにため息を吐かないでくれ。

「…なに?」

「いや、早くこの学園に慣れてもらうために校内を案内してあげようかと思ってさ」

「…は、随分と上から目線だな」

「あ?」

転校生のくせして上から目線はどっちなんだよ!

気に入らないな、コイツ…さっさと校内案内してもう担任のお願いなんて聞くか!

喧嘩は嫌だけどもうそんなのどうでもよくなるほどの根暗くんの態度に眉を寄せる。

俺と根暗くんが火花を散らしている時に紫乃は根暗くんの隙を見て根暗くんが持っているイヤホンを取り耳を近付ける。

紫乃は流行に敏感でだいたいの流行は分かっているから少しでも話の種になればと考えているのだろう。

さすが天使、生意気な奴でも優しさを持っている。

紫乃が聞いてるのに気付いた根暗くんはイヤホンを回収してズボンのポケットに入れる。

「…勝手に触んなよ」

「ご、ごめんね…でもそれSTAR RAINの新曲?聞いた事ない曲だけど好きなの?今凄い人気だよねー、僕も」

「…べらべらうるせぇよ、邪魔だどけ」

「わっ!」

「紫乃!」

せっかく紫乃が話していたのに紫乃を突き飛ばした。

近くにいた始が紫乃を受け止めたから怪我はしなくて済んだ。

しかし俺は友人が突き飛ばされて無関心でいるほど冷徹ではない。

教室を出た根暗くんを追いかけるために教室を飛び出した。

すぐに追いかけた筈だが、廊下を見渡しても何処にもいない。

だとしたら教室の目の前にある階段を使ったんだな。

上か下かどっちに向かったか…勘を頼りに下に向かって走り出す。

下には購買も食堂もあるから行く確率は上よりも高い。

しかし、何処にもいない…食堂も覗いたがそれらしい奴はいなかった。

走り過ぎてなんか腹減ったな…怒りもだんだん冷静になってきたし…紫乃置いてきちゃったから謝んないと…

それで根暗くんは忘れて皆で食堂に行こう、それがいい。

校内案内なんてしなくたって自然と覚えてくるだろうと投げやりになりながら元来た道を戻る。

歩いていたら、空き教室の前を通りすぎた時誰かの声が聞こえた。

ここは人気があまりない廊下の端だし、通るのは俺と見回り警備員くらいだろう。

なんせこの場所は幽霊が出るとか何とか言われていて誰も寄り付かないし、そもそも廊下の端は使われてない空き教室しかなくて鍵も掛かってるから行く用事がある奴なんていない。

俺は何となくいつも歩いているだけで特に理由はない。

しかしそこに人はいる、しかも鍵が掛かってる筈の空き教室の中に……気にならない奴なんていないだろう。

耳をすませると、よりはっきりと声が聞こえた。

それは愚痴のような吐き捨てる独り言のように感じた。

「…ったく、なんで俺がこんな格好しなきゃいけねぇんだよ…しかもアイツ俺の事忘れてやがるし…むかつく」

声からしてあの根暗くんか、何に怒っているんだ?誰か他にいるのか!

もう怒りはないが紫乃には謝ってほしいから教室のドアを開いた。

「根暗くん、ちょっと話が…あ」

「っ!?」

しばらく使われていなかった空き教室だからかドアが重く思ったより大きな音を立てて開けた。

そしてそのまま呆然と根暗くん?を見つめて固まった。

ずっとドアを開けっ放しにしたのが気に入らないのか根暗くん?は俺の手を引っ張り教室の中に引き入れてドアをすぐに閉めて鍵を掛けた。

いきなり引っ張られるから転倒して顔面を地面に打った。

いてぇ…モロに鼻打った…覚悟しとけよ、根暗ぁ~

と、その前にこの状況を理解するために起き上がった。

静かな空き教室に慌てて疲れたのか根暗くん?の息遣いが聞こえる。

手に持つのは黒い髪、そして今の根暗くん?の髪型は教室の窓から反射する太陽の光でキラキラと輝く金髪…

前髪が隠れていて分からなかったがハーフなのか海のように深く青い瞳が鋭くこちらを睨んでいる。

根暗とはなんだったのか、恐ろしいほど美しい少年がそこにいた。

「……鍵掛け忘れた俺にも非はあるけど、勝手に入ってくんなよ」

舌打ちする顔も絵になる男なんて今まで見た事がない。

着替えていたのかシャツ一枚で胸元が開いている。

着痩せするタイプなのか、ちゃんとしっかりした筋肉が付いていてまさに理想の美しい身体だ。

この学校だったら素顔見せてればあんな事言われなくて済むのに…

いや、男にモテても意味ないか…でもカツラまで被って何を隠そうとしているのか分からなかった。

そこでなにか見覚えがありひらめいた、もしかして…

「…どうするか、正体バレたしマネージャーに電話……いや、コイツ一人だけだし口止めすれば」

「心配するな、誰にも言わねぇよ」

「は、どうだか…いい脅しのネタじゃねーか」

「俺は金は好きだが汚い事はしない、金運が下がるからな」

ちゃんと自分の力で金を貯めた方が使う時楽しいだろ?

紫乃の写真は微妙だが、紫乃にも小遣いあげてるしカメラとか高かったんだから自分の力だ。

だから口止め料は絶対に受け取らないし、そういう金は好きじゃない。

俺ってそんなに口が軽いように見えるのか?地味にショックだ。
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