桃の木かくれんぼ

蜜柑大福

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再会

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ーーー

翌朝、眠たい目を擦りながら学園に向かっていた。

挨拶したり楽しく話す生徒達に紛れてボーッと歩く。

朝食を食べていないから腹が小さく鳴って元気も出ない。
一睡も出来なかったけど、また保健室のお世話になるのは避けたい。

高校生にもなって、これはダメだよな…しっかりしないと…

するとバシッと思いっきり背中を叩かれた。

その衝撃で前のめりになる。
足に力を入れて踏ん張り、転がるのを避ける事が出来た。

背中が痛いが、おかげでスッキリ出来た。

「おっはよ!和音!」

「…お、おはよう、昨日はごめんね…岸くん」

「気にしない気にしない!それに風太でいいよ!なんか他人行儀みたいだし」

後ろを振り返ると白い歯を見せて笑う眩しい岸く…風太がいた。

友達でも苗字呼びの人はいるから馴れ馴れしいのが嫌かと思って苗字呼びをしたが、風太はどうやら苗字呼びが気に入らないようだった。

俺を和音と呼ぶのは家族だけだった、何だか不思議な気分だ。

これが、友達の距離なのか。

明らかに俺とは真逆の性格の風太が正直羨ましい。

俺なんかで、本当にいいの?

誰かを下の名前で呼ぶのは彼以来だから緊張するが、風太が期待の眼差しを向けるから頬を赤くしつつ口を開いた。

「えっと、じゃあ…ふう「キャー!!!」

名前を呼ぼうとしたら女子の黄色い声に遮られた。

驚いて口にしようとした言葉を飲み込んだ。

声がしたであろう風太の後ろ側を二人で見た。

瞳に映ったその人物を見て心臓が止まるほど驚いた。

風太は俺とは違い、面白いものを見るかのように見つめていた。

肩に掛けてある鞄がずり落ちた。

…あぁ、やっぱりそうだ…なんでこんなところに…

女子だけじゃなく、男子もその人物に憧れの眼差しを向けていた。

そこだけが周りとは違う非現実的な空間だった。

クリーム色の明るい茶髪に、美しく整った顔…瞳はダークブラウンで何も映していないような仄暗さがミステリアスだと女子が騒いでいた。

間違いない、彼だ…名前が似てるだけなんてもう言い訳が出来ない。

可愛さは見る影もないが中性的な色気がある。

すっかり忘れていて警戒心が緩んだ時に現れたから油断していた。

とっさに風太の後ろに隠れると風太は不思議そうに後ろを振り返る。

「どうしたの?なんかあった?」

「な、何でもない…」

そう言いつつ隠れるのをやめない。

これじゃあ昔のかくれんぼみたいじゃないかと苦い顔をする。

何度変わりたいと思っていても、結局俺は何も変わってない。

風太は俺より小さいから立つ風太に対してしゃがんで小さくならないと隠れられない。

他の人からしたら不審人物だけど、他の人の目に構っている余裕はなかった。

ビクビクしていたが、彼は俺を一度も見る事なく素通りした。

そういえば彼に気を取られていて、隣にいる子に気付かなかった。

ふわふわカールのダークブラウンの髪の男なら誰もが振り返るであろう美少女が彼の腕に絡みついて歩いていた。

そこで周りが昨日話していた言葉を思い出した。

…もしかして、あれが彼女か?

絵に描いたような美男美女の背中を眺めていた。

二人が見えなくなり、風太の影から出てくる。

何故か風太は暖かい瞳で見つめていた。

「分かる、分かるよ…モテ男なんて皆滅べば良いのにって思うよね」

「えっ…あ、いや…」

「良いって何も言わなくても…僕も同じだから恥ずかしくないよ、だいたい顔が良くて学年首席とか神様は意地悪すぎると思うんだよね!」

風太はなにか誤解したままだったが、深く聞かれたくないから合わせる事にした。

学年首席、昔から頭が良かったからあり得ない事ではない。

それにしても、違和感が凄かった。

周りはお似合いカップルだとか、「ももちゃん」と呼んでるとか、噂だけ聞くとラブラブカップルのように思える。

見た目は確かにお似合いだと俺も思う。

…でもさっきの彼は、隣で腕を絡めて話しかける彼女をまるでいないもののように扱っていた気がする。

眉一つ動かさない、視線も向けない彼は昔からそんな人だったっけ…思い出せない、俺と話していた彼しか知らないから…

確か彼はいつもニコニコしていて…

良い感じに彼は変わったのだと勝手に思っていた。

だから俺も変わろうと思ったんだ。

俺の知らない間に彼になにかあったのか?

思い出そうとすると、また頭がズキズキと痛くなった。

落ち着こうと軽く頭を振ると風太に肩を叩かれた。

「そろそろ行こ、遅刻しちゃうよ」

「…そうだね」

もう関係ないからどうでもいいと思い、風太と共に早足で学園に向かった。
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