41 / 41
不可思議な胸の痛み..
しおりを挟む
-1ーーー
昼休み、風太は劇の練習のため一緒に食べれなくなった。
椿くんと二人で廊下を歩く。
二人っきりになったのは初めてで、いつも風太が話題を出してくれていたからいざとなると何も話すことがない。
「まさかそっちのクラスが劇なんてなー、しかも風太がヒロインとか…ちょっと見てみたい」
「…俺のせいだ、ごめんなさい」
「俺に謝るなよ、風太が決めた事なら思いっきり楽しもうぜ」
椿くんに励まされて少し元気になった。
風太が助けてくれた、その勇気を無駄にしちゃいけない。
きっと俺が演じるより風太の方が似合うと思った…風太は童顔だし…
二人で食堂に向かった。
今日は生徒会は現れなかった、生徒会も劇の練習をしているのだろう。
話題が長く続かずいつもより早く食べ終わり、まだ昼休みが余ってるから風太を見に行こうという事になった。
教室に近付くとギャラリーが今朝より増えている。
女の子達はボーッと見惚れていて男子までも魅了していた。
椿くんと目を合わせて首を傾げて教室を覗く。
俺と椿くんは目を見開いて眺めていた。
そこには美しい光景が広がっていた。
今朝みたいに衣装を着てるわけじゃないのに凪沙はキラキラした砂糖菓子のような甘い王子様の雰囲気を出していた。
昨日までの彼はいったい何だったのか役になりきっていた。
昔から凪沙は全て完璧だった。
運動神経も抜群でいつも一位で運動会なんて中心人物になるほどだった。
勉強も出来て、担任が間違えた誤字を指摘して書き直したりしている…勿論テストは一位以外取った事がない。
演技まで出来たのは知らなかったが凪沙なら不思議じゃないだろう。
凪沙をずっと苦手としていた筈の風太でさえ凪沙の演技に頬を赤くして固まっていた。
セリフを言うが全く頭に入ってない様子だった。
「岸くん、セリフ」
「…え、あ…ごめん!」
風太が謝ると周りの人は凪沙の魔法が解けたようにハッとして笑って許していた。
俺の時はあんな明るい雰囲気じゃなかった。
自分が空気を乱していたのだろう、風太も楽しそうだし変えてよかったと思った。
ずっと俺のままだとあんな風にはならなかった。
そこの場所には俺は必要なかったんだ。
一緒に来ていた椿くんをチラッと見たらなんか複雑な顔をしていた。
「椿くん?」
「…あんな風太初めて見た」
そう言われ再び風太を眺める。
確かに俺達といる風太は楽しくないわけではないがちょっと大人びた面があった。
冷静に楽しんでるような…だからこんなに子供っぽく笑う風太は初めて見た。
凪沙がそうさせたのか、だとしたら友達を取られたようでちょっと悔しかった。
…俺を庇ってくれたのに本当に自分勝手だと思う。
あそこが風太の居場所なのかな。
「この前まで白川くんの事苦手だって言ってたのにな」
「あっ!和音!椿!」
風太は二人に気付いて駆け寄ってきた。
俺と椿くんの腕を引いて教室の中に入れる。
チラッと凪沙の方を見たら、目が合った。
むしろずっと見ていたようにゾクッと全身に悪寒が走る。
凪沙の視線は俺から俺の腕を掴む風太の手に向けられた。
嫌な予感がする、怒ってる?
早く振り払わないと風太になにかするかもしれない。
風太は凪沙の事を苦手じゃなくなったみたいだが凪沙は違う。
それはまるで道端に落ちてるゴミを見るような…明らかな嫌悪。
「二人共来てたんなら教えてよ!特等席で見せてあげ…」
「っ!!」
思いっきり振り払うと風太は驚いた顔をしていた。
風太は何も知らないから嫌な気分になったかもしれない。
すぐに我に返り謝ろうと口を開くが声が出なかった。
凪沙が風太の後ろにいた。
凪沙の指が風太の首に絡み付く。
ふと凪沙に首を絞められた時の苦しさ怖さを思い出した。
風太にそんな目に合ってほしくない。
でも、どうすればいいか分からない…助けられない?
初めてだった、普通の友達が出来て嬉しかった。
SNSをやって一緒にごはん食べて…遊びに行って…全てが初めてで楽しかった。
いつか一緒にあの喫茶店でごはん食べたかった。
まだまだ知らない事は沢山あった。
それを友達とやりたかった。
だから俺は凪沙から風太を守りたかった。
弱いままの自分じゃダメなんだ。
考えるより足が動いた。
風太が凪沙の方に振り返った。
大きな音が聞こえた。
昼休み、風太は劇の練習のため一緒に食べれなくなった。
椿くんと二人で廊下を歩く。
二人っきりになったのは初めてで、いつも風太が話題を出してくれていたからいざとなると何も話すことがない。
「まさかそっちのクラスが劇なんてなー、しかも風太がヒロインとか…ちょっと見てみたい」
「…俺のせいだ、ごめんなさい」
「俺に謝るなよ、風太が決めた事なら思いっきり楽しもうぜ」
椿くんに励まされて少し元気になった。
風太が助けてくれた、その勇気を無駄にしちゃいけない。
きっと俺が演じるより風太の方が似合うと思った…風太は童顔だし…
二人で食堂に向かった。
今日は生徒会は現れなかった、生徒会も劇の練習をしているのだろう。
話題が長く続かずいつもより早く食べ終わり、まだ昼休みが余ってるから風太を見に行こうという事になった。
教室に近付くとギャラリーが今朝より増えている。
女の子達はボーッと見惚れていて男子までも魅了していた。
椿くんと目を合わせて首を傾げて教室を覗く。
俺と椿くんは目を見開いて眺めていた。
そこには美しい光景が広がっていた。
今朝みたいに衣装を着てるわけじゃないのに凪沙はキラキラした砂糖菓子のような甘い王子様の雰囲気を出していた。
昨日までの彼はいったい何だったのか役になりきっていた。
昔から凪沙は全て完璧だった。
運動神経も抜群でいつも一位で運動会なんて中心人物になるほどだった。
勉強も出来て、担任が間違えた誤字を指摘して書き直したりしている…勿論テストは一位以外取った事がない。
演技まで出来たのは知らなかったが凪沙なら不思議じゃないだろう。
凪沙をずっと苦手としていた筈の風太でさえ凪沙の演技に頬を赤くして固まっていた。
セリフを言うが全く頭に入ってない様子だった。
「岸くん、セリフ」
「…え、あ…ごめん!」
風太が謝ると周りの人は凪沙の魔法が解けたようにハッとして笑って許していた。
俺の時はあんな明るい雰囲気じゃなかった。
自分が空気を乱していたのだろう、風太も楽しそうだし変えてよかったと思った。
ずっと俺のままだとあんな風にはならなかった。
そこの場所には俺は必要なかったんだ。
一緒に来ていた椿くんをチラッと見たらなんか複雑な顔をしていた。
「椿くん?」
「…あんな風太初めて見た」
そう言われ再び風太を眺める。
確かに俺達といる風太は楽しくないわけではないがちょっと大人びた面があった。
冷静に楽しんでるような…だからこんなに子供っぽく笑う風太は初めて見た。
凪沙がそうさせたのか、だとしたら友達を取られたようでちょっと悔しかった。
…俺を庇ってくれたのに本当に自分勝手だと思う。
あそこが風太の居場所なのかな。
「この前まで白川くんの事苦手だって言ってたのにな」
「あっ!和音!椿!」
風太は二人に気付いて駆け寄ってきた。
俺と椿くんの腕を引いて教室の中に入れる。
チラッと凪沙の方を見たら、目が合った。
むしろずっと見ていたようにゾクッと全身に悪寒が走る。
凪沙の視線は俺から俺の腕を掴む風太の手に向けられた。
嫌な予感がする、怒ってる?
早く振り払わないと風太になにかするかもしれない。
風太は凪沙の事を苦手じゃなくなったみたいだが凪沙は違う。
それはまるで道端に落ちてるゴミを見るような…明らかな嫌悪。
「二人共来てたんなら教えてよ!特等席で見せてあげ…」
「っ!!」
思いっきり振り払うと風太は驚いた顔をしていた。
風太は何も知らないから嫌な気分になったかもしれない。
すぐに我に返り謝ろうと口を開くが声が出なかった。
凪沙が風太の後ろにいた。
凪沙の指が風太の首に絡み付く。
ふと凪沙に首を絞められた時の苦しさ怖さを思い出した。
風太にそんな目に合ってほしくない。
でも、どうすればいいか分からない…助けられない?
初めてだった、普通の友達が出来て嬉しかった。
SNSをやって一緒にごはん食べて…遊びに行って…全てが初めてで楽しかった。
いつか一緒にあの喫茶店でごはん食べたかった。
まだまだ知らない事は沢山あった。
それを友達とやりたかった。
だから俺は凪沙から風太を守りたかった。
弱いままの自分じゃダメなんだ。
考えるより足が動いた。
風太が凪沙の方に振り返った。
大きな音が聞こえた。
0
お気に入りに追加
191
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。
ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。
だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
あちこち病んでいて怖いけど、どうなるのか続きが気になって、目が離せません。
小説を見ていただきありがとうございます!
周りは危険な奴ばかりで、暗い話ですが最後はちゃんと救いがあります!
これからも見ていただけるように頑張ります!
退会済ユーザのコメントです
小説を見ていただきありがとうございます!
気に入っていただけて私も嬉しく思います!
これからもよろしくお願いいたします。
毎日投稿お疲れ様です。これからの展開が楽しみです。無理し過ぎずに活動して下さい。
小説を見ていただきありがとうございます!
お気遣いとても嬉しいです。
これからも見ていただけるように頑張ります。