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第四章 6月
お姉さま、予想外です! 13
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凛子先輩は、恐れをなしてしまった柚鈴を見てから苦笑してみせた。
「でも、和の意見はあながち悪くもないわ」
「凛子?」
「ペア作りを促進する活動も生徒会の仕事ではあるけれど、上級生の圧力があると判断される時には下級生側のフォローをするのも生徒会の仕事でしょう?昨年の生徒会長の義妹になった小鳥遊柚鈴さんが、上級生から学園生活に支障が出る程度に干渉を受けているなら、何か手立てを講じるのも私たちの仕事と言うことよ」
「だからってバッチを渡すことが最善でもないでしょう」
「まあねえ」
凛子先輩は紅茶を飲んで、考えこんだ。
「あの、ちょっと案があります」
言い出したのは幸だった。
「なにかしら?」
「ブロンズのバッチなら、柚…小鳥遊さんが持っているので、その上で提案なんですけど」
え?幸ちゃん、何を言い出すの?
急に言い出され、驚いて聞き返す前に「え?」と声を上げて凛子先輩と山下先輩が柚鈴を振り返った。
「持っているってどういうことなの?」
その勢いに柚鈴は出かけた言葉をひっこめた。
一度息を飲んでから答える。
「あ、あの。入学する前に志奈さんに貰いました」
「志奈さんに?」
「はい。お守りだって言われて」
頷くと、二人の先輩は驚いたように目を見合わせた。
幸はそれでですね、と言葉を繋いだ。
「いけないかもしれないですけど、提案したいんです。小鳥遊さんは生徒会のお手伝いをする。そして勝手に生徒会のバッチをつけるんです」
「え?」
凛子先輩が聞き返すと、幸は一気に自分の案の説明を始めた。
「つまりですね。生徒会のブロンズバッチをきちんと申請して受け取ると、ゆ…小鳥遊さんは大変なんですよね?だから元生徒会長のブロンズのバッチを勝手に付けて生徒会のお手伝いをしてしまって、その上でペアのお誘いはお断りするんです。バッチを見せてお断りしますと言えば、普通は生徒会のお手伝いをしてるって思いますよね?生徒会の先輩方は知らなかったことにしてしまって…」
「ち、ちょっと待って」
山下先輩は勢いづいた幸を慌てて止める。
「それって、生徒会は関係ないことにして、周りを騙すってこと?」
「騙す、ことにはなりますけど」
幸は突っこまれた言葉には申し訳なさそうい一度目を伏せてから、しかし気持ちを持ち直したようにまっすぐに目線を上げた。
「こういう言い方をしてはなんですけど。今回急に声を掛けてきた先輩方は、別に柚鈴ちゃ…小鳥遊さん自身に興味があるわけでもないようですから、おあいこにじゃないですか??きっとある程度時間がたてば興味なんて薄れるんじゃないかって思うんです」
「まあ、確かに」
柚鈴は頷いた。
自分で認めてしまうのも問題かもしれないけれど、東郷先輩は置いておくとして、柚鈴は本来地味で上級生がメンティにしたいと大勢押し掛けるような生徒ではない。
一度無理だと思わせてしまえば、しばらくした後でばれたとしてもその間に別の1年生をペアの相手に見つける可能性だってあるかもしれない。
行き当たりばったりではあるが、生徒会のお手伝いをしている間は身の安全があり、しかも件の同窓会会長殿に見込まれる危険を回避できるというならば、かなり好条件な気がした。
生徒会の手伝いをする。
志奈さんのバッチを勝手に襟元に付ける。
そしてお誘いを断る。
実にシンプルだ。
「生徒会である私たちの役割は、黙認するってことね」
「勿論、生徒会でお手伝いをするときはバッチは外すようにして、知らなかったことにしてしまえばご迷惑は掛からないと思います。多少周りが勘違いするような態度は取ってほしいのですけど」
「前生徒会長が義妹に渡したバッチを学園内でしていた。そしてペアの申し出を断った」
山下先輩は考え込むように一瞬黙ったが、凛子先輩の様子を伺うように目線を送った。
「まあ、文化祭が終わるくらいまでなら、いいんじゃない?万が一があったらバッチを渡した小鳥遊先輩に罪をかぶせてしまえば、結局誰も文句言わないでしょう」
「確かにね」
凛子先輩は苦笑してから、頷いた。
柚鈴は志奈さんを思い浮かべた。
誰も文句を言わない。
それが本当なのかどうかはわからないから、少しだけ罪悪感を感じる。
少しだけ迷う気持ちが浮かんだ。
だが、凛子先輩の言葉の方は早かった。
「幸さんの提案を受け入れましょう」
その言葉には全く迷いがなかった。だから柚鈴も迷う気持ちを飲み込んだ。
「でも、和の意見はあながち悪くもないわ」
「凛子?」
「ペア作りを促進する活動も生徒会の仕事ではあるけれど、上級生の圧力があると判断される時には下級生側のフォローをするのも生徒会の仕事でしょう?昨年の生徒会長の義妹になった小鳥遊柚鈴さんが、上級生から学園生活に支障が出る程度に干渉を受けているなら、何か手立てを講じるのも私たちの仕事と言うことよ」
「だからってバッチを渡すことが最善でもないでしょう」
「まあねえ」
凛子先輩は紅茶を飲んで、考えこんだ。
「あの、ちょっと案があります」
言い出したのは幸だった。
「なにかしら?」
「ブロンズのバッチなら、柚…小鳥遊さんが持っているので、その上で提案なんですけど」
え?幸ちゃん、何を言い出すの?
急に言い出され、驚いて聞き返す前に「え?」と声を上げて凛子先輩と山下先輩が柚鈴を振り返った。
「持っているってどういうことなの?」
その勢いに柚鈴は出かけた言葉をひっこめた。
一度息を飲んでから答える。
「あ、あの。入学する前に志奈さんに貰いました」
「志奈さんに?」
「はい。お守りだって言われて」
頷くと、二人の先輩は驚いたように目を見合わせた。
幸はそれでですね、と言葉を繋いだ。
「いけないかもしれないですけど、提案したいんです。小鳥遊さんは生徒会のお手伝いをする。そして勝手に生徒会のバッチをつけるんです」
「え?」
凛子先輩が聞き返すと、幸は一気に自分の案の説明を始めた。
「つまりですね。生徒会のブロンズバッチをきちんと申請して受け取ると、ゆ…小鳥遊さんは大変なんですよね?だから元生徒会長のブロンズのバッチを勝手に付けて生徒会のお手伝いをしてしまって、その上でペアのお誘いはお断りするんです。バッチを見せてお断りしますと言えば、普通は生徒会のお手伝いをしてるって思いますよね?生徒会の先輩方は知らなかったことにしてしまって…」
「ち、ちょっと待って」
山下先輩は勢いづいた幸を慌てて止める。
「それって、生徒会は関係ないことにして、周りを騙すってこと?」
「騙す、ことにはなりますけど」
幸は突っこまれた言葉には申し訳なさそうい一度目を伏せてから、しかし気持ちを持ち直したようにまっすぐに目線を上げた。
「こういう言い方をしてはなんですけど。今回急に声を掛けてきた先輩方は、別に柚鈴ちゃ…小鳥遊さん自身に興味があるわけでもないようですから、おあいこにじゃないですか??きっとある程度時間がたてば興味なんて薄れるんじゃないかって思うんです」
「まあ、確かに」
柚鈴は頷いた。
自分で認めてしまうのも問題かもしれないけれど、東郷先輩は置いておくとして、柚鈴は本来地味で上級生がメンティにしたいと大勢押し掛けるような生徒ではない。
一度無理だと思わせてしまえば、しばらくした後でばれたとしてもその間に別の1年生をペアの相手に見つける可能性だってあるかもしれない。
行き当たりばったりではあるが、生徒会のお手伝いをしている間は身の安全があり、しかも件の同窓会会長殿に見込まれる危険を回避できるというならば、かなり好条件な気がした。
生徒会の手伝いをする。
志奈さんのバッチを勝手に襟元に付ける。
そしてお誘いを断る。
実にシンプルだ。
「生徒会である私たちの役割は、黙認するってことね」
「勿論、生徒会でお手伝いをするときはバッチは外すようにして、知らなかったことにしてしまえばご迷惑は掛からないと思います。多少周りが勘違いするような態度は取ってほしいのですけど」
「前生徒会長が義妹に渡したバッチを学園内でしていた。そしてペアの申し出を断った」
山下先輩は考え込むように一瞬黙ったが、凛子先輩の様子を伺うように目線を送った。
「まあ、文化祭が終わるくらいまでなら、いいんじゃない?万が一があったらバッチを渡した小鳥遊先輩に罪をかぶせてしまえば、結局誰も文句言わないでしょう」
「確かにね」
凛子先輩は苦笑してから、頷いた。
柚鈴は志奈さんを思い浮かべた。
誰も文句を言わない。
それが本当なのかどうかはわからないから、少しだけ罪悪感を感じる。
少しだけ迷う気持ちが浮かんだ。
だが、凛子先輩の言葉の方は早かった。
「幸さんの提案を受け入れましょう」
その言葉には全く迷いがなかった。だから柚鈴も迷う気持ちを飲み込んだ。
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