拝啓、お姉さまへ

一華

文字の大きさ
上 下
259 / 282
第四章 6月

お姉さま、予想外です! 6

しおりを挟む
放課後になるまでは、妙に長く感じた。
予想通り、というべきか。
休み時間にも顔を出してきた先輩がいたし、昼休みにもお誘いにきた方がいたらしい。
幸いだったのが、東組のほとんどの生徒が外部入学の生徒のため、柚鈴の義姉である小鳥遊志奈さんのことを体育祭で初めて知った生徒が多かったことだ。
そのため確かに綺麗な人ではあったけれども、だからといって柚鈴が注目される理由が分からないという様子であった。

しかも親同士の再婚で出来たばかりの姉だから、どちらかといえば急に持ち上がったような騒動に関して同情的で、休み時間の短い訪問程度なら、「小鳥遊さん?先生の手伝いに行きましたけど」などと、とぼけた対応などで柚鈴をかくまってくれたのだ。
どちらかと言えば冷静な東組の生徒だからかもしれない。
何にしろ、柚鈴はクラスメイトに守られる形になった。

お昼休みとなると、幸と共に、午後イチの授業の移動先である特別教室へすぐに向かい、先生の許可を得てそこで昼食をさせてもらった。
そうして放課後まで難を逃れた後は、幸と元々生徒会室に向かう予定だった絵里との3人で、教室を脱出したのだ。

絵里は生徒会室に向かうのが、凛子先輩から呼ばれたからだと聞くと、不思議そうに首を傾げてから確認した。
「幸さんが長谷川生徒会長に呼ばれたの?」
「うん。なんだかお手伝いがあるって」
「手伝い…?人数が必要なことなんてあったかしら」

絵里はそういいつつも2人を先導してくれる。
生徒会室のある同窓会館は、校舎から繋がっていないので一度靴に履き替えてから行くことになる。
他の建物よりも扉や内装が豪華な作りをしているため、生徒会室に用のない二人は、存在はしってても立ち入ったことはなかった。
無闇に入っていい場所にも思えず、正直敷居は高い。

「絵里ちゃんは今日はどんな御用があるの?」
少し緊張した様子で、そわそわとしつつ幸は尋ねた。
「特には。用がなくても私は顔を出したりするのよ。色々雑務があったりもするし」
「雑務?」
「同窓会メンバーがいらっしゃれば、お茶出しもするし、生徒会で決め事があったりすれば手伝いをするのよ」
「お茶出し…」
柚鈴と幸は顔を見合わせた。
まさしく雑務だ。
わざわざ生徒会室に行ってお茶出しをしなければならないとは。
「同窓会会長は中々マナーに厳しいから、3年生しか対応しないけれど、それ以外の方は」
「同窓会会長ってどんな人?」
「品のある方よ。ご高齢ではあるけれど、細やかなことにも目が届いて、OGを完全に纏めているわね」
「…厳しいの?」
「優しいは優しいのだけど」
何か言いにくそうに絵里は言葉を濁した。
志奈さんが高等部在学中一目置かれていた理由の一つが、同窓会会長をことだという話だったし、一筋縄でいく人ではないのだろう。
「そんなにいらっしゃるわけでもないし、気はにしなくてもいいと思うけど」
付け足した言葉も、多少引っかかるものがあるが、柚鈴はそれ以上聞かないことにした。

間もなく見えてきた同窓会館は黒煉瓦の建物だ。
対照的に入口となる真っ白な扉は定期的に塗りなおしているのだろう、まるで新品のようで、金色のドアノブだけは少しくすんでいて、それが妙に重厚感があるように思えた。

なんとなく緊張する柚鈴と幸の様子に気付かないように、絵里は迷うことなく扉を開けた。
生徒会室は会館の一階。入り口から少し歩くと左手に階段があり、右手が生徒会室の扉がある。
階段を上ると同窓会メンバーの使用する部屋があるはずだから、同窓会の方々は生徒会室前を通らなければならないということになる。
絵里はおそらくいつも通り、ドアをノックしてから開けた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

『天使』にも『悪魔』の顔がある

双葉 陽菜
青春
白藤学院ー そこは日本有数の進学県立の小中高の一貫校。 入学こそ簡単ではあるがエスカレーター式であるがゆえに簡単に落第されてしまうため、卒業が難しいと有名である。基本入試だが、中には金の力で入学してきた生徒も少なくない。 また、各学年の9、10組は財閥クラスとなっており、財閥令嬢や御曹司がそのクラスに入っている。 そしてのその中でも特に力のあるメンバーで構成されたグループがクラリスである。 そこに小学校で入学し、飛び級を重ねに重ねて12歳で高校1年生になった雛(ひな)。 幼なじみの悠・翔・朔と和音、新メンバーの亜衣と過ごしながら周りの人間の醜く落ちていく姿を楽しむのが双葉雛の楽しみ。 ~人物紹介~ ◯双葉雛(futaba hina) 12歳 高校1年生 1-2 飛び級を重ねに重ねて高校1年生になった。 少し自意識過剰なところがあるが、頭の回転が早く、その場の雰囲気から何が起こるのが予測する予知能力がある。 天使の笑顔でエグいことを普通にいう。超美少女。 ◯榛名悠(haruna yuu) 15歳 高校1年生 1-2 学年1の秀才。 落ち着いた性格でヒナと仲良し。 髪型の雰囲気が似ているためよくヒナとは兄弟と勘違いされる。ヒナの予測に対して1番いい対処法を判断する対処能力がある。かなりのイケメン。 ◯犬飼翔(inukai syou) 15歳 高校1年生 1-3 学年1喧嘩っ早い見た目ヤンキーの男子校生。 相手の行動を見抜く洞察能力がある。 小学生の時に朔と一緒に中等部の大群を潰したことがあるがほんとは仲間思いの優しい人で、見た目馬鹿そうなのに点数はある程度取れている。かなりのイケメン。 ◯水篠朔(mizushino saku) 15歳 高校1年生 1-3 翔と生まれた時からの仲良しでヒナ達の幼なじみ。 翔にはよく喧嘩に道連れにされていたので強くなった。おとなしい性格だが、学校1の情報通で校内全員の情報を持っている。かなりのイケメン。 ◯有馬和音(arima kazune) 15歳 高校1年生 1-2 小5~中2の春まで海外に留学していたが悠やヒナとは仲良し。父親が白藤学院の学長を務めているため教師も誰も彼には逆らえない。校内の噂話の真実など校内のことにはおまかせあれ☆ かなりのイケメン。 ◯香月亜衣(kazuki ai) 15歳 高校1年生 1-3 高校入学で白藤学院に入学し、そこからシックスターにメンバー入りした。モデル並みのスタイルではあるが、貧乳なのが玉に瑕。大人っぽいルックスの裏にはおしゃれ大好きの普通の女子高生がある。 クールな性格を演じて、女子を言いなりにさせることができる。超美少女。 誕生日がまだ来ていないので学年より1つ下の年齢から始まります。(雛は中1の年齢で高校1年から始まります)

愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

Dear my roommates

heil/黒鹿月
青春
ルームメイトだけど、あんまり話したことなくて――― ―――お互い、何を思ってるのかわかんなくて でも、私たちはどこか似てて――― ―――いつかは言えるかな。 『お互いの 気持ち』。 星花女子プロジェクト参加作品です。 墨森 望乃夏(黒鹿月 木綿稀)×白峰 雪乃(しっちぃ)。どこか似たもの同士不器用な2人が、仲良くなるまでの日記。 なろうからの改稿になります。 ※時たま話者が変わります。タイトルの所にどちら視点なのかを記載しています。 ※星花女子プロジェクトは、登美司 つかさ様の合同企画です。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

時々、僕は透明になる

小原ききょう
青春
影の薄い僕と、7人の個性的、異能力な美少女たちとの間に繰り広げられる恋物語。 影の薄い僕はある日透明化した。 それは勉強中や授業中だったり、またデート中だったり、いつも突然だった。 原因が何なのか・・透明化できるのは僕だけなのか?  そして、僕の姿が見える人間と、見えない人間がいることを知る。その中間・・僕の姿が半透明に見える人間も・・その理由は? もう一人の透明化できる人間の悲しく、切ない秘密を知った時、僕は・・ 文芸サークルに入部した僕は、三角関係・・七角関係へと・・恋物語の渦中に入っていく。 時々、透明化する少女。 時々、人の思念が見える少女。 時々、人格乖離する少女。 ラブコメ的要素もありますが、 回想シーン等では暗く、挫折、鬱屈した青春に、 圧倒的な初恋、重い愛が描かれます。 (登場人物) 鈴木道雄・・主人公の男子高校生(2年2組) 鈴木ナミ・・妹(中学2年生) 水沢純子・・教室の窓際に座る初恋の女の子 加藤ゆかり・・左横に座るスポーツ万能女子 速水沙織・・後ろの席に座る眼鏡の文学女子 文芸サークル部長 小清水沙希・・最後尾に座る女の子 文芸サークル部員 青山灯里・・文芸サークル部員、孤高の高校3年生 石上純子・・中学3年の時の女子生徒 池永かおり・・文芸サークルの顧問、マドンナ先生 「本山中学」

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...