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第四章 6月
お姉さま、予想外です! 2
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「急に言われても困るでしょうから、良ければしばらくの間お昼や放課後にお時間を頂きたいの」
「私達も柚鈴さん自身のことも知りたいから」
柚鈴のことも、ということは、当然志奈さんのことも知りたい、ということだろう。
「見たところ、ペアのバッチも付けてないみたいだし、まだ助言者もいらっしゃらないんでしょう?」
襟元を確認されて、柚鈴は慌てて言った。
「あの、私、助言者を持つつもりはありませんので、すみません」
これだけ大勢の人相手では、ちょっと緊張するが、言わなければ大変なことになる。
しかし相手の先輩方は、ちっとも気にしない、というようににっこり笑った。
「では、お友達でも構わないわ」
「え?」
「私たちも資格は持っているけれど、今までペアを持つこと自体はまだ積極的には考えてなかったの。体育祭で小鳥遊志奈さまの義妹がいると聞いて、お近づきになりたくて。だからペアになるのがちょうど良いかしらと思っただけなの」
「もちろん助言者候補、でも嬉しいわ。一番は親しくなりたい、と思っているのだもの」
助言者でも、お友達でも構わない。
思いもかけない無邪気な申し出に、柚鈴は一瞬言葉を失った。
いやいやいや、何かがおかしい。
目の前の人たちは、恐らくというよりも間違いなく、柚鈴ではなく志奈さんのお近づきになりたい人達だ。
そんなことを悪びれなく言えてしまう人達、しかも先輩と、対等なお友達になれる気はしない。
悪い人達ではないのかもしれないが、悪くない分たちが悪い。
どうにか切り抜けないといけない、と柚鈴は急いで頭を回転させた。
「今日のほ、放課後は用が既にありまして」
「ではお昼は問題ない、ということでいいかしら?それから明日からの放課後も今の所は予定がない、ということで構わない?」
「え、と」
お昼はいつも、幸や時間が合えば薫や花奏とも食べているが、それは予定と言っていいのか。
なんだかそれは認められない気がする。
しかし。
ここでうんと言えば、しばらくの間は約束したことになり、柚鈴のお昼と放課後は自由がない、と思えば迂闊に返事は出来ない。
どうしたものかと固まってしまう。
その時、微笑みを絶やさない先輩方の後ろ、つまり学園側の方から、強く制止する声が割り込んできた。
「そう言ったお約束の求め方はいかがかしら」
柚鈴はそちらを見て、思わず固まる。
救い、とは到底思い難い人物。
どちらかと言えば柚鈴には天敵、ともいえる。
そう、そこに現れたのは東郷先輩だった。
「皆さん、おはようございます」
堂々と強気な雰囲気で、東郷先輩は改めて挨拶してから先輩方の集団を割って入るように進み出てから柚鈴の前に立った。
「はじめまして、の方もいらっしゃいますのでご挨拶しておきます。2年東組東郷千紗です。こちらの小鳥遊柚鈴さんには5月からペアの申し出をしてます」
「あら」
予想外だったのだろう。
顔を見合わせる『集団の先輩方』(東郷先輩と区別がつかないのでそう一まとめにすることにする)に東郷先輩は勢いのまま、叩き込んだ。
「と言うわけで、お昼や放課後の約束を後からきて取り付けられるのは私も困ります。遠慮してください」
純粋(?)に助言者を希望する東郷先輩と、とりあえず仲良くなれればいい『集団の先輩方』では分が悪いと思ったのか、明らかに相手は怯んだ。
「そうは言うけれど、柚鈴さんは助言者はいらないと思ってらっしゃるわけだし…」
『集団の先輩方』は、暗に東郷先輩に口出す権利があるのか、と意味合いを込めたような言葉を言いかけるが、東郷先輩に刺すように睨まれ口を閉ざした。
…つ、強い。
自分の信念のためなら敵を作っても構わない、と言ったところのある東郷先輩の強みなのだろう。
一歩も引く気はない、と言った雰囲気だ。
しかし、相手も集団という強みがあるのだろう。
困ったように顔を見合わせてから、しかし穏やかな雰囲気を保って、一人が思いついたように提案する。
「じゃあ、東郷さんも含めたここにいる全員一人ずつ、柚鈴さんと一緒の時間を過ごすローテーションを作れば問題ないのではないかしら」
この発言には柚鈴は眩暈を覚えた。
「私達も柚鈴さん自身のことも知りたいから」
柚鈴のことも、ということは、当然志奈さんのことも知りたい、ということだろう。
「見たところ、ペアのバッチも付けてないみたいだし、まだ助言者もいらっしゃらないんでしょう?」
襟元を確認されて、柚鈴は慌てて言った。
「あの、私、助言者を持つつもりはありませんので、すみません」
これだけ大勢の人相手では、ちょっと緊張するが、言わなければ大変なことになる。
しかし相手の先輩方は、ちっとも気にしない、というようににっこり笑った。
「では、お友達でも構わないわ」
「え?」
「私たちも資格は持っているけれど、今までペアを持つこと自体はまだ積極的には考えてなかったの。体育祭で小鳥遊志奈さまの義妹がいると聞いて、お近づきになりたくて。だからペアになるのがちょうど良いかしらと思っただけなの」
「もちろん助言者候補、でも嬉しいわ。一番は親しくなりたい、と思っているのだもの」
助言者でも、お友達でも構わない。
思いもかけない無邪気な申し出に、柚鈴は一瞬言葉を失った。
いやいやいや、何かがおかしい。
目の前の人たちは、恐らくというよりも間違いなく、柚鈴ではなく志奈さんのお近づきになりたい人達だ。
そんなことを悪びれなく言えてしまう人達、しかも先輩と、対等なお友達になれる気はしない。
悪い人達ではないのかもしれないが、悪くない分たちが悪い。
どうにか切り抜けないといけない、と柚鈴は急いで頭を回転させた。
「今日のほ、放課後は用が既にありまして」
「ではお昼は問題ない、ということでいいかしら?それから明日からの放課後も今の所は予定がない、ということで構わない?」
「え、と」
お昼はいつも、幸や時間が合えば薫や花奏とも食べているが、それは予定と言っていいのか。
なんだかそれは認められない気がする。
しかし。
ここでうんと言えば、しばらくの間は約束したことになり、柚鈴のお昼と放課後は自由がない、と思えば迂闊に返事は出来ない。
どうしたものかと固まってしまう。
その時、微笑みを絶やさない先輩方の後ろ、つまり学園側の方から、強く制止する声が割り込んできた。
「そう言ったお約束の求め方はいかがかしら」
柚鈴はそちらを見て、思わず固まる。
救い、とは到底思い難い人物。
どちらかと言えば柚鈴には天敵、ともいえる。
そう、そこに現れたのは東郷先輩だった。
「皆さん、おはようございます」
堂々と強気な雰囲気で、東郷先輩は改めて挨拶してから先輩方の集団を割って入るように進み出てから柚鈴の前に立った。
「はじめまして、の方もいらっしゃいますのでご挨拶しておきます。2年東組東郷千紗です。こちらの小鳥遊柚鈴さんには5月からペアの申し出をしてます」
「あら」
予想外だったのだろう。
顔を見合わせる『集団の先輩方』(東郷先輩と区別がつかないのでそう一まとめにすることにする)に東郷先輩は勢いのまま、叩き込んだ。
「と言うわけで、お昼や放課後の約束を後からきて取り付けられるのは私も困ります。遠慮してください」
純粋(?)に助言者を希望する東郷先輩と、とりあえず仲良くなれればいい『集団の先輩方』では分が悪いと思ったのか、明らかに相手は怯んだ。
「そうは言うけれど、柚鈴さんは助言者はいらないと思ってらっしゃるわけだし…」
『集団の先輩方』は、暗に東郷先輩に口出す権利があるのか、と意味合いを込めたような言葉を言いかけるが、東郷先輩に刺すように睨まれ口を閉ざした。
…つ、強い。
自分の信念のためなら敵を作っても構わない、と言ったところのある東郷先輩の強みなのだろう。
一歩も引く気はない、と言った雰囲気だ。
しかし、相手も集団という強みがあるのだろう。
困ったように顔を見合わせてから、しかし穏やかな雰囲気を保って、一人が思いついたように提案する。
「じゃあ、東郷さんも含めたここにいる全員一人ずつ、柚鈴さんと一緒の時間を過ごすローテーションを作れば問題ないのではないかしら」
この発言には柚鈴は眩暈を覚えた。
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