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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭です! 18~中西花奏~
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ダンス部新体操部合同ダンスでは、一年に二度行われる二つの部活の合同競技である。
二度と言うのは、体育祭と文化祭。
平日の体育祭と違い、文化祭は休日に行われるので外部や保護者のお客様を沢山招くことになる。
言わば今回の体育祭は前哨戦のようなものだ。
特に今年の文化祭である『常葉祭』は三年に一度の大きなイベントになる。それに向けての気合の入り方はやはり特別なものがあった。
今年のダンステーマは「シンメトリー」
入場後のダンス部と新体操部は、二つに分かれて鏡合わせのように配置をする。
センターポジションであるダンス部4人と新体操部4人を真ん中に、取り巻くように外側の配置になった各部員が観客席の前に立つことになり、どこのポジションでも目立つ。
勿論、センターは観客からは遠い中央まで視線を持ってこなければならないので、より上手い部員になるが、誰もが主役である、という構成には違いがなかった。
新体操部のセンターの一人である中西花奏は、横目で同じくセンターにいる小牧ひとみを見て、一瞬にやけそうになるのを我慢する。
競技の衣装に着替えた小牧ひとみは、すらりと長い手足が美しく、そのスタイルの良さを隠しようもない。
独特の雰囲気から、何故か猫背がちに勘違いされやすいのだが、こうしてみれば背筋もしっかり伸びバランスの良さは誤魔化しようもなかった。
ダンス部との差をはっきりつけるために、新体操部ではクラブとフープを半々の人数分けで持っている。衣装の色は白。ダンス部は素手に黒の衣装だ。
白の衣装が誰よりもお姉さまが似合う、と身内のひいき目か花奏は確信していた。
曲が始まってしまえば、そのお姿を見ることは出来ないのだけが残念である。
もし二人に分身出来れば、絶対一人観客になるというのに。
花奏は知っている。
助言者である小牧ひとみは、存在感がなく会話も上手な方ではない。
重々しい雰囲気が、どこか人を寄せ付けない。
人慣れしておらず、突拍子のない行動だって平気でする。
でも、ひとたび曲がかかり、競技に入れば。
誰よりも綺麗なお姉さまなのだ
何度も練習した音楽が流れて、競技が始まると、迷いなく花奏は動いた。
普段のような室内での演技ではないため、制限される動きも勿論あるのだが、それも踏まえて考えたプログラムだ。
失敗なんてするわけがない。
緊張を高揚に置き換えることが出来る花奏は、本番だからどうということはない。
指先一本まで意識をやって、何度も繰り返す完璧を目指すだけ。
『本番はとても緊張するけど、花奏が一緒と思うと少し安心する』
決して顔にも態度にも緊張なんて出さないくせに、そんなことを漏らした助言者の、全く不安を感じさせない息の合った動きを確認する。
口に出して言うのだから、小牧ひとみは本当にそう思っているのだろう。
そこは疑うこともない。
良いですよ、存分に安心してください。
去年の体育祭は、中等部の授業中で全く見ることが出来なかったのだ。
それが今年は一緒に競技に参加出来ている。
それが楽しくて仕方ない。
自分の持っているクラブと、小牧ひとみのフープが空中で交差して入れ替わり手元に収まるとその流れのままターンをする。
高等部に入り、小牧ひとみのメンティとして誰よりもその近くで演技することが、花奏の中等部での夢だった。
そして今は、その夢の中にいるのだ。
お姉さまの魅力に今日気付く人もいるかもしれない。
でもおあいにく様。
小牧ひとみのメンティは、最初からずーっとこれからも花奏一人なのである。
そう誰もが納得するだけの自分でいるのだ。
そのための努力は、決して惜しまない。
二度と言うのは、体育祭と文化祭。
平日の体育祭と違い、文化祭は休日に行われるので外部や保護者のお客様を沢山招くことになる。
言わば今回の体育祭は前哨戦のようなものだ。
特に今年の文化祭である『常葉祭』は三年に一度の大きなイベントになる。それに向けての気合の入り方はやはり特別なものがあった。
今年のダンステーマは「シンメトリー」
入場後のダンス部と新体操部は、二つに分かれて鏡合わせのように配置をする。
センターポジションであるダンス部4人と新体操部4人を真ん中に、取り巻くように外側の配置になった各部員が観客席の前に立つことになり、どこのポジションでも目立つ。
勿論、センターは観客からは遠い中央まで視線を持ってこなければならないので、より上手い部員になるが、誰もが主役である、という構成には違いがなかった。
新体操部のセンターの一人である中西花奏は、横目で同じくセンターにいる小牧ひとみを見て、一瞬にやけそうになるのを我慢する。
競技の衣装に着替えた小牧ひとみは、すらりと長い手足が美しく、そのスタイルの良さを隠しようもない。
独特の雰囲気から、何故か猫背がちに勘違いされやすいのだが、こうしてみれば背筋もしっかり伸びバランスの良さは誤魔化しようもなかった。
ダンス部との差をはっきりつけるために、新体操部ではクラブとフープを半々の人数分けで持っている。衣装の色は白。ダンス部は素手に黒の衣装だ。
白の衣装が誰よりもお姉さまが似合う、と身内のひいき目か花奏は確信していた。
曲が始まってしまえば、そのお姿を見ることは出来ないのだけが残念である。
もし二人に分身出来れば、絶対一人観客になるというのに。
花奏は知っている。
助言者である小牧ひとみは、存在感がなく会話も上手な方ではない。
重々しい雰囲気が、どこか人を寄せ付けない。
人慣れしておらず、突拍子のない行動だって平気でする。
でも、ひとたび曲がかかり、競技に入れば。
誰よりも綺麗なお姉さまなのだ
何度も練習した音楽が流れて、競技が始まると、迷いなく花奏は動いた。
普段のような室内での演技ではないため、制限される動きも勿論あるのだが、それも踏まえて考えたプログラムだ。
失敗なんてするわけがない。
緊張を高揚に置き換えることが出来る花奏は、本番だからどうということはない。
指先一本まで意識をやって、何度も繰り返す完璧を目指すだけ。
『本番はとても緊張するけど、花奏が一緒と思うと少し安心する』
決して顔にも態度にも緊張なんて出さないくせに、そんなことを漏らした助言者の、全く不安を感じさせない息の合った動きを確認する。
口に出して言うのだから、小牧ひとみは本当にそう思っているのだろう。
そこは疑うこともない。
良いですよ、存分に安心してください。
去年の体育祭は、中等部の授業中で全く見ることが出来なかったのだ。
それが今年は一緒に競技に参加出来ている。
それが楽しくて仕方ない。
自分の持っているクラブと、小牧ひとみのフープが空中で交差して入れ替わり手元に収まるとその流れのままターンをする。
高等部に入り、小牧ひとみのメンティとして誰よりもその近くで演技することが、花奏の中等部での夢だった。
そして今は、その夢の中にいるのだ。
お姉さまの魅力に今日気付く人もいるかもしれない。
でもおあいにく様。
小牧ひとみのメンティは、最初からずーっとこれからも花奏一人なのである。
そう誰もが納得するだけの自分でいるのだ。
そのための努力は、決して惜しまない。
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