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第三章 5月‐結
お姉さま、体育祭です! 15 ~前田光希~
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スウェーデンリレーの1年生の順番を前田光希は偵察のつもりで観戦していた。
スウェーデンリレーとはリレー方式で第一走者が100mを走る。次いで第二走者が200m、第三走者が300mと走り、最後の第四走者が400mを走ってゴール。合計1000mを競う競技だ。
本日、公私共に自分の敵であり標的になるのは1年生の高村薫である。
幸いなことに組分けが分かれ、自分が黄組、薫は赤組となった。
普段から生意気な薫を、まずは黄組優勝で仕留め、さらには借り物競争で捕まえて二重の勝利を手に入れようという魂胆である。
借り物競走も体育祭の点に入るわけだから、仕留めようとする勝利の順番は明らかにおかしいのだが、本人にとってはそんなことは小さなことだ。
結果的に両方とも勝てば目的達成となるわけである。
唯一の誤算は、自分の助言者である、有沢綾がよりにもよって薫と同じ赤組に振り分けられたことだ。
…お姉さまと一緒に勝利の感動を味わいたかったのに…!
そんな正直な気持ちは確かにある。
しかしこの戦いに勝てば、きっと綾は光希の勝利を我が事のように喜んでくれるはずである。
『頑張ったわね、光希』
その光景を思い描くだけで幸せな気持ちになれるのだから、ちょっとした幸せ病と言えるかもしれない。
2年生の中で陸上部次期部長として良い記録を持つ光希は、実はこのスウェーデンリレーのアンカーのお誘いを受けていたのだが、体育部対抗リレーの出場権を高村薫からもぎ取り、借り物競争に出場が決まっていたので、慎重に考えることにした。
400mと言えば、人によっては長く感じるだろうが陸上競技であれば短距離の分類だ。
流す程度に頑張れば良いのかも知れない。
だが光希が先に出場を決めた体育部対抗リレーと体育祭での順番が近い。
『お願いですから、体育部対抗リレーの出場権を譲って下さいよ』
各部4人という枠から洩れた高村薫が、珍しくも光希に頼み事をしてきたのをあざ笑うように断ってやったのだ。
しかもアンカーという花形である。
これは是が非でもトップでゴールをして、どうだ見てたかとばかりに勝ち誇ってやりたい。
この際それが同じ部活の勝利であってもどうでもいいのだ。
きっと羨ましそうな顔をするに違いないのだから、この勝負には負けられない。
と、すればだ。
残念ながら、スウェーデンリレーへの出場は見送るのが得策だろう。
『あんたは気分が高まると、ペース配分が下手くそになるのよね』
元陸上部エースでもある家系の大先輩、緋村楓に毎度呆れられるのだが、確かに光希は気分のムラがそのまま勝負に影響してしまうことが多い。
体育祭なんて気分が高まる一方なのに、どうしてペース配分なんて上手に出来るだろうか。
部対抗リレーにとっておける程の体力を残して、スウェーデンリレーを走れるくらいの出来た人間なら、光希のこれまでの苦労は半分程減っている気がする。たとえ400mと言えどもだ。自分でも分かっている。
万が一ペースを崩して、部対抗リレーで負けでもしたら、高村薫に逆にあざ笑われるかもしれない。
それだけは避けたい。憤死してしまうだろう。
というわけでスウェーデンリレーは見送り。
組対抗リレーも声を掛けられたが。
『私、借り物競争で燃え尽きてるかもしれないけどいい?』
そう同級生に聞いたら、とても嫌な顔をされて話はなかったことにした。
そういうわけで結局普段なら出場しない競技に参加することとなったのだ。
これで遠慮するところはないはずだ。
と、何故かペース配分不要という思い込みを光希はしてしまった。
そんな間違いに途中で気付ける光希ではない。
高村薫のやつ、スウェーデンリレーで疲れ切ってくれてないかな。
そんな淡い希望を抱きつつ、1年生からスタートしたスウェーデンリレーを見守るのだった。
スウェーデンリレーとはリレー方式で第一走者が100mを走る。次いで第二走者が200m、第三走者が300mと走り、最後の第四走者が400mを走ってゴール。合計1000mを競う競技だ。
本日、公私共に自分の敵であり標的になるのは1年生の高村薫である。
幸いなことに組分けが分かれ、自分が黄組、薫は赤組となった。
普段から生意気な薫を、まずは黄組優勝で仕留め、さらには借り物競争で捕まえて二重の勝利を手に入れようという魂胆である。
借り物競走も体育祭の点に入るわけだから、仕留めようとする勝利の順番は明らかにおかしいのだが、本人にとってはそんなことは小さなことだ。
結果的に両方とも勝てば目的達成となるわけである。
唯一の誤算は、自分の助言者である、有沢綾がよりにもよって薫と同じ赤組に振り分けられたことだ。
…お姉さまと一緒に勝利の感動を味わいたかったのに…!
そんな正直な気持ちは確かにある。
しかしこの戦いに勝てば、きっと綾は光希の勝利を我が事のように喜んでくれるはずである。
『頑張ったわね、光希』
その光景を思い描くだけで幸せな気持ちになれるのだから、ちょっとした幸せ病と言えるかもしれない。
2年生の中で陸上部次期部長として良い記録を持つ光希は、実はこのスウェーデンリレーのアンカーのお誘いを受けていたのだが、体育部対抗リレーの出場権を高村薫からもぎ取り、借り物競争に出場が決まっていたので、慎重に考えることにした。
400mと言えば、人によっては長く感じるだろうが陸上競技であれば短距離の分類だ。
流す程度に頑張れば良いのかも知れない。
だが光希が先に出場を決めた体育部対抗リレーと体育祭での順番が近い。
『お願いですから、体育部対抗リレーの出場権を譲って下さいよ』
各部4人という枠から洩れた高村薫が、珍しくも光希に頼み事をしてきたのをあざ笑うように断ってやったのだ。
しかもアンカーという花形である。
これは是が非でもトップでゴールをして、どうだ見てたかとばかりに勝ち誇ってやりたい。
この際それが同じ部活の勝利であってもどうでもいいのだ。
きっと羨ましそうな顔をするに違いないのだから、この勝負には負けられない。
と、すればだ。
残念ながら、スウェーデンリレーへの出場は見送るのが得策だろう。
『あんたは気分が高まると、ペース配分が下手くそになるのよね』
元陸上部エースでもある家系の大先輩、緋村楓に毎度呆れられるのだが、確かに光希は気分のムラがそのまま勝負に影響してしまうことが多い。
体育祭なんて気分が高まる一方なのに、どうしてペース配分なんて上手に出来るだろうか。
部対抗リレーにとっておける程の体力を残して、スウェーデンリレーを走れるくらいの出来た人間なら、光希のこれまでの苦労は半分程減っている気がする。たとえ400mと言えどもだ。自分でも分かっている。
万が一ペースを崩して、部対抗リレーで負けでもしたら、高村薫に逆にあざ笑われるかもしれない。
それだけは避けたい。憤死してしまうだろう。
というわけでスウェーデンリレーは見送り。
組対抗リレーも声を掛けられたが。
『私、借り物競争で燃え尽きてるかもしれないけどいい?』
そう同級生に聞いたら、とても嫌な顔をされて話はなかったことにした。
そういうわけで結局普段なら出場しない競技に参加することとなったのだ。
これで遠慮するところはないはずだ。
と、何故かペース配分不要という思い込みを光希はしてしまった。
そんな間違いに途中で気付ける光希ではない。
高村薫のやつ、スウェーデンリレーで疲れ切ってくれてないかな。
そんな淡い希望を抱きつつ、1年生からスタートしたスウェーデンリレーを見守るのだった。
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