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第三章 5月‐結
お姉さま、ペア作りが本格起動です ★11★
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「ペア解消なんて出来るんですね」
「本当に異例よ。大概はどんなにトラブルを抱えても卒業まではペアのままだもの。ただ凛子のようなケースも珍しくて。私たちが1年生の間に起った事だったけれど、東組は東組の生徒とっていう風潮が多少残ってしまっても仕方ないのかもしれないわね」
困ったわね、と遥先輩はため息をついた。
「別に悪いことばかりというわけでもないと思うんだけど。これじゃあ凛子の耳に入れておかないといけないわね」
「伝えるんですか?」
気が進まない様子の遥先輩に、それを聞かされてしまう凛子先輩のことを思うとなんだか胸が痛む。
だが、遥先輩は頷いた。
「凛子は生徒会長として、助言者制度のバックアップをしなきゃならない立場でもあるもの。自分が原因で、2年生の東組の生徒が1年生の東組の生徒としか組み合わせ出来なくなっているということを知らない方が問題だわ」
「なるほど」
「皆んながそう思っていなければいいけど」
「組違いのペアは、問題なんでしょうか?」
「あら。柚鈴さん、それを私に聞く?」
「あ、そうですね。すみません」
肩を竦めてみせた遥先輩に、柚鈴は自分の失言に気付いて、しまったという顔になる。
そうだ、遥先輩は西組。東組の特待生である小牧ひとみさんとは、組違いのペア。
問題がある、とは言わないだろう。
遥先輩は、柚鈴の様子に微笑を浮かべた。
「まぁ、良いわ。まず問題と言えば、そうね。確かにペアの申請は通りにくくなるわね。先生方の承認が必要だもの。学校側からすれば、助言者制度で、より優秀な人材が育ってほしいのだから、同じ分野の先輩後輩でペアを組んで貰った方がいいでしょう」
「そうですね」
「だけど、この人に教わりたいと思うことがあるのなら、私は誰とペアを組んでもいいと思うのよ」
「そうなんですか?」
遥先輩は勿論よ、と頷いた。
「柚鈴さんがどうして、ペアに興味ないのか知らないけれど、嘘から出た真でもいいから、誰か見つかると良いわね。面倒なことも多いけれど、中々楽しいものだとは思うわよ。茶道部の茶会に行くのは本当なんでしょ?」
「それは、その。本当です」
どうやら、気になる先輩がいるという話が嘘だというのはバレていたらしい。
少しばかり気まずい気持ちで柚鈴は頷いたが、遥先輩は嘘の理由は聞くつもりはないらしかった。
「茶道部は昨年卒業された部長がユニークな方で、独自の動きでペア作りを支援しているのよ。楽しんでくるといいわ」
「楽しめるでしょうか?」
「なあに?あそこのメンバーは、育ちの良い人ばかりだから、無理矢理ペアにしようなんてしないと思うわよ。まあ、でも良い方がいたら仲良くしてもいいんじゃなかいかしら」
愛想良く笑う遥先輩の言葉に、柚鈴は申し訳ない気持ちになる。
遥先輩は、柚鈴が助言者を持つつもりがないとまでは思ってないのだ。
もしかしたら、東郷先輩と同じように、今までなかった制度に戸惑い、なかなか馴染めないだけと思っているのかもしれない。
『仲良くなってきた義理のお姉さんが希望するので、助言者制度はよく分からないし、ペアは作らなくてもいいかなと思いました』
それが柚鈴の実情なのだけど、我ながらツッコミどころが多すぎるように思える。
おそらく中間考査が終われば、東郷先輩も再度お誘いに来る気がするし、これは一度自分の状況を整理したほうが良いような気がした。
「さあ、ひとまず勉強を頑張りなさい。これで柚鈴さんが成績落として特待生維持できなかったら、冗談にもならないわよ」
暗い顔した柚鈴を励ますように、遥先輩は明るい声で言った。
特待生維持。
それは柚鈴にとっても絶対条件だ。
今日、どれだけ集中できるか分からなかったが、とりあえず特待生の位置にしがみつくために、柚鈴はおぼつかない足取りで実習室に戻った。
「本当に異例よ。大概はどんなにトラブルを抱えても卒業まではペアのままだもの。ただ凛子のようなケースも珍しくて。私たちが1年生の間に起った事だったけれど、東組は東組の生徒とっていう風潮が多少残ってしまっても仕方ないのかもしれないわね」
困ったわね、と遥先輩はため息をついた。
「別に悪いことばかりというわけでもないと思うんだけど。これじゃあ凛子の耳に入れておかないといけないわね」
「伝えるんですか?」
気が進まない様子の遥先輩に、それを聞かされてしまう凛子先輩のことを思うとなんだか胸が痛む。
だが、遥先輩は頷いた。
「凛子は生徒会長として、助言者制度のバックアップをしなきゃならない立場でもあるもの。自分が原因で、2年生の東組の生徒が1年生の東組の生徒としか組み合わせ出来なくなっているということを知らない方が問題だわ」
「なるほど」
「皆んながそう思っていなければいいけど」
「組違いのペアは、問題なんでしょうか?」
「あら。柚鈴さん、それを私に聞く?」
「あ、そうですね。すみません」
肩を竦めてみせた遥先輩に、柚鈴は自分の失言に気付いて、しまったという顔になる。
そうだ、遥先輩は西組。東組の特待生である小牧ひとみさんとは、組違いのペア。
問題がある、とは言わないだろう。
遥先輩は、柚鈴の様子に微笑を浮かべた。
「まぁ、良いわ。まず問題と言えば、そうね。確かにペアの申請は通りにくくなるわね。先生方の承認が必要だもの。学校側からすれば、助言者制度で、より優秀な人材が育ってほしいのだから、同じ分野の先輩後輩でペアを組んで貰った方がいいでしょう」
「そうですね」
「だけど、この人に教わりたいと思うことがあるのなら、私は誰とペアを組んでもいいと思うのよ」
「そうなんですか?」
遥先輩は勿論よ、と頷いた。
「柚鈴さんがどうして、ペアに興味ないのか知らないけれど、嘘から出た真でもいいから、誰か見つかると良いわね。面倒なことも多いけれど、中々楽しいものだとは思うわよ。茶道部の茶会に行くのは本当なんでしょ?」
「それは、その。本当です」
どうやら、気になる先輩がいるという話が嘘だというのはバレていたらしい。
少しばかり気まずい気持ちで柚鈴は頷いたが、遥先輩は嘘の理由は聞くつもりはないらしかった。
「茶道部は昨年卒業された部長がユニークな方で、独自の動きでペア作りを支援しているのよ。楽しんでくるといいわ」
「楽しめるでしょうか?」
「なあに?あそこのメンバーは、育ちの良い人ばかりだから、無理矢理ペアにしようなんてしないと思うわよ。まあ、でも良い方がいたら仲良くしてもいいんじゃなかいかしら」
愛想良く笑う遥先輩の言葉に、柚鈴は申し訳ない気持ちになる。
遥先輩は、柚鈴が助言者を持つつもりがないとまでは思ってないのだ。
もしかしたら、東郷先輩と同じように、今までなかった制度に戸惑い、なかなか馴染めないだけと思っているのかもしれない。
『仲良くなってきた義理のお姉さんが希望するので、助言者制度はよく分からないし、ペアは作らなくてもいいかなと思いました』
それが柚鈴の実情なのだけど、我ながらツッコミどころが多すぎるように思える。
おそらく中間考査が終われば、東郷先輩も再度お誘いに来る気がするし、これは一度自分の状況を整理したほうが良いような気がした。
「さあ、ひとまず勉強を頑張りなさい。これで柚鈴さんが成績落として特待生維持できなかったら、冗談にもならないわよ」
暗い顔した柚鈴を励ますように、遥先輩は明るい声で言った。
特待生維持。
それは柚鈴にとっても絶対条件だ。
今日、どれだけ集中できるか分からなかったが、とりあえず特待生の位置にしがみつくために、柚鈴はおぼつかない足取りで実習室に戻った。
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