103 / 282
第二章 5月‐序
姉妹っぽいこと ★10★
しおりを挟む
「その…ルーは使わずに、色々スパイスを使って作るカレーなんです。レシピがあるわけじゃないので、その時ごとに味は違うんですけど」
「2人とも辛いのが好きなの?」
「辛いのが好き、というか」
どう説明しても、分かってもらえるように上手く話すことはできない気がしたが、柚鈴は一度口を閉じて、頭の中を整理してみた。
「以前住んでいた場所の近くに、辛いけど凄く美味しいカレーやさんがあったんです。一番辛いメニューは、数量限定で本当に辛いんですけど、それだけじゃなくて、とても美味しくて。それで家でも辛いけど美味しいカレーを作ってみようって話になって。私もお母さんも甘いもの食べないじゃないですか。誕生日にケーキは必要ないから、代わりに」
「け、ケーキの代わりがカレー?」
その言葉に志奈さんが急に絶望的な顔をした。
志奈さんは甘党だから、なんだかとても良くないイメージをしたんだろうか。
その想像が何かを思い至ってから、慌てて訂正した。
「勿論、志奈さんの誕生日にはケーキ用意すると思いますよ。そもそも志奈さん、そんなに辛いものは得意じゃないでしょう?」
「そうねぇ。嫌いというわけでもないけれど」
顔を引きつらせたまま、自分に言い聞かせるようにブツブツと呟く。
「確かに辛すぎるものは得意とは言えないわ。でもそれが2人の共通点なら、一緒に挑戦するのは私の…」
「姉の役割じゃないと思います」
志奈さんの言葉を読んで繋げる、志奈さんは柚鈴を見上げて、不満そうに頬を膨らませた。
その目線は話が進まなくなるので無視することにする。
「お母さんも、カレーを作ったとしても、志奈さん用に甘く出来るようにすると思いますし」
「別にそこまで辛いのが苦手なわけじゃないのよ」
フォローするつもりだったが、挑戦したい気持ちが捨てきれなかったらしく、志奈さんは諦めきれないように言った。
「普通に辛いカレーならいいんですよね。わかりましたから」
「私は柚鈴ちゃんが作ってくれるなら同じ辛さのカレーがいいんだけど」
自信なさそうに尚も引かない志奈さんに、柚鈴はため息をついた。
まさか、そこで意地になるとは思わなかったのだ。
甘党の志奈さんに、スパイシーなカレーを作るなんて考えてもいなかったし、志奈さんが食べたがるとも当然思わなかった。
柚鈴とお母さんが作るカレーは辛い。
辛さだけでなく、美味しさの追求もしようと、トマトやリンゴなども加えているので甘みもあるのだが、後から火を吹くような辛さが出る。
どうも志奈さんが好きそうな食べ物に思えなかった。
寮で出るカレーも甘めだったしなぁ。ああいうのが志奈さんっぽいんだけど。
そう考えながら、困った話になったと思ったが、一応は請け負うことした。
「わかりました。お母さんが料理を作っても良いと言ったら、ちゃんと同じ辛さで志奈さんの分を作ります」
一応、辛くないバージョンも作っておいて、もし食べきれなかったら、出し直せばいいかと思うことにする。
柚鈴のそんな打算を知らない志奈さんは
「ええ。私、頑張るわ。お母さんに料理当番を変わって頂いて、柚鈴ちゃんにはとびきりのカレーを作ってもらいましょう」
と妙なやる気をみせることを忘れない。
頑張るのは、カレーを食べることなのか、それとも料理当番を変わってもらうことなのか。
当然、カレーを食べることなんだろうな。何も頑張らなくてもいいのだけど。
とは言え、だ。
お母さんにも志奈さんにも食べてもらえるのだから、ちゃんと辛くて美味しいカレーを作ろう。
志奈さんのがうつったのか、柚鈴も無駄にやる気が出てきて、決意を固めた。
「2人とも辛いのが好きなの?」
「辛いのが好き、というか」
どう説明しても、分かってもらえるように上手く話すことはできない気がしたが、柚鈴は一度口を閉じて、頭の中を整理してみた。
「以前住んでいた場所の近くに、辛いけど凄く美味しいカレーやさんがあったんです。一番辛いメニューは、数量限定で本当に辛いんですけど、それだけじゃなくて、とても美味しくて。それで家でも辛いけど美味しいカレーを作ってみようって話になって。私もお母さんも甘いもの食べないじゃないですか。誕生日にケーキは必要ないから、代わりに」
「け、ケーキの代わりがカレー?」
その言葉に志奈さんが急に絶望的な顔をした。
志奈さんは甘党だから、なんだかとても良くないイメージをしたんだろうか。
その想像が何かを思い至ってから、慌てて訂正した。
「勿論、志奈さんの誕生日にはケーキ用意すると思いますよ。そもそも志奈さん、そんなに辛いものは得意じゃないでしょう?」
「そうねぇ。嫌いというわけでもないけれど」
顔を引きつらせたまま、自分に言い聞かせるようにブツブツと呟く。
「確かに辛すぎるものは得意とは言えないわ。でもそれが2人の共通点なら、一緒に挑戦するのは私の…」
「姉の役割じゃないと思います」
志奈さんの言葉を読んで繋げる、志奈さんは柚鈴を見上げて、不満そうに頬を膨らませた。
その目線は話が進まなくなるので無視することにする。
「お母さんも、カレーを作ったとしても、志奈さん用に甘く出来るようにすると思いますし」
「別にそこまで辛いのが苦手なわけじゃないのよ」
フォローするつもりだったが、挑戦したい気持ちが捨てきれなかったらしく、志奈さんは諦めきれないように言った。
「普通に辛いカレーならいいんですよね。わかりましたから」
「私は柚鈴ちゃんが作ってくれるなら同じ辛さのカレーがいいんだけど」
自信なさそうに尚も引かない志奈さんに、柚鈴はため息をついた。
まさか、そこで意地になるとは思わなかったのだ。
甘党の志奈さんに、スパイシーなカレーを作るなんて考えてもいなかったし、志奈さんが食べたがるとも当然思わなかった。
柚鈴とお母さんが作るカレーは辛い。
辛さだけでなく、美味しさの追求もしようと、トマトやリンゴなども加えているので甘みもあるのだが、後から火を吹くような辛さが出る。
どうも志奈さんが好きそうな食べ物に思えなかった。
寮で出るカレーも甘めだったしなぁ。ああいうのが志奈さんっぽいんだけど。
そう考えながら、困った話になったと思ったが、一応は請け負うことした。
「わかりました。お母さんが料理を作っても良いと言ったら、ちゃんと同じ辛さで志奈さんの分を作ります」
一応、辛くないバージョンも作っておいて、もし食べきれなかったら、出し直せばいいかと思うことにする。
柚鈴のそんな打算を知らない志奈さんは
「ええ。私、頑張るわ。お母さんに料理当番を変わって頂いて、柚鈴ちゃんにはとびきりのカレーを作ってもらいましょう」
と妙なやる気をみせることを忘れない。
頑張るのは、カレーを食べることなのか、それとも料理当番を変わってもらうことなのか。
当然、カレーを食べることなんだろうな。何も頑張らなくてもいいのだけど。
とは言え、だ。
お母さんにも志奈さんにも食べてもらえるのだから、ちゃんと辛くて美味しいカレーを作ろう。
志奈さんのがうつったのか、柚鈴も無駄にやる気が出てきて、決意を固めた。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説
夏の出来事
ケンナンバワン
青春
幼馴染の三人が夏休みに美由のおばあさんの家に行き観光をする。花火を見た帰りにバケトンと呼ばれるトンネルを通る。その時車内灯が点滅して美由が驚く。その時は何事もなく過ぎるが夏休みが終わり二学期が始まっても美由が来ない。美由は自宅に帰ってから金縛りにあうようになっていた。その原因と名をす方法を探して三人は奔走する。
幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる