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第二章 5月‐序
姉妹っぽいこと ★8★
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「それでは本題よ」
倉庫から出て瓶を一度庭に出して、外の水道で洗ってから天日干しをすると、改めたように志奈さんは仕切り直した。
「私たちは、母の日の課題をクリアしなくちゃいけないのよね」
「勿論です」
色々、脇道に逸れてしまった気もしないでもないが、母の日どうするかというのは、変わらず大本命と言えるので、柚鈴は頷いた。
志奈さんも頼もしく頷いて見せる。
「そんな柚鈴ちゃんに、昨日私が徹夜で調べておいた成果を元にしたアイデアがあります」
志奈さんは自信満々に言い出した。
少しだけ、調べたと言っていたが、やっぱりみっちり調べたのだろうか。
矛盾を感じつつ、口にはしない。
それよりも、内容が気になる。斜め上のものだったらどうしようと言う、不安も感じる。
だが、志奈さんの提案は思いのほか庶民的なものだった。
「二人で、手作りカーネーションを作りましょう」
「て、手作りですか」
思わずほっとするが、そのことに志奈さんは気づいていない。
ちょっと申し訳ない気もしたが、あんなに豪華な食器を見せられた後では、一体どんな提案をしてくるのかと、不安になっても仕方がない。
柚鈴が多少、嬉しそうな顔をしているのをどう思ったのか、志奈さんはにっこりと笑った。
「それでね。一つ仕掛けをしようと思って」
「仕掛けですか?」
志奈さんは頷いてから、辺りを気にしたように見回す。
「どうしたんですか?」
「お父様に聞かれたら、ちょっと悔しいかと思って」
「いや、悔しくはないでしょう」
意味が分からずに柚鈴が否定すると、志奈さんは首を振った。
「いいえ、絶対悔しいわ。そしてこれは姉妹の秘密にしておかなければならないことなのよ」
「……」
もしかして『姉妹の秘密』が欲しいだけなんじゃあ。
一瞬よぎる考え。
しかし、母の日について考えるのは、志奈さんへのお礼だったことを思い出した。
つまり、ここは志奈さんに付き合うのが筋だろう。
「そ、ソウデスネ。そうしましょうか」
全く心がこもっていなかったが柚鈴が同意すると、志奈さんは更にやる気になったように、オトウサンがどこにいるのかを気にしつつ、家の中に入っていった。
一先ず柚鈴もそれに従って付いていく。
「柚鈴ちゃんはとりあえず二階のベランダに行ってて」
そう指示を受けて、階段を上がることにした。
志奈さんは、そのまま台所へと行ってしまう。
途中まで普通に階段を上っていて、もしかしたらここはオトウサンにばれないように、スパイのように静かに上ったほうがより良いのかと、意味もなく音を立てないように登ってみたりする。
一応、感謝の気持ちを込めて、一歩ずつ。
こんなことで、お礼になっているのかな…?
多少疑問は湧くが。気にしたら、なんというか自分に負けそうな気がしたので。
気にすることを止めた。
そうしてベランダに出ると、そこには志奈さんお気に入りのゆりかご椅子が、風のせいか、ぶらぶらと揺れていた。
迷ってからベランダの一角にあるテーブルと椅子の方に進む。
ゆりかご椅子には興味があるのだが、迂闊に使用すると、志奈さんが喜んで一緒に座ろうとする未来が見える。椅子が無難でいい気がする。
椅子に座ると、風が心地よく入ってきて気持ちよかった。
志奈さんは少ししてから、アイスティを二つ持って入ってきた。
「お父様は大丈夫だったわ。お昼ごはんの為に張り切って蕎麦を打っていたから」
「は?」
「蕎麦を打ってたの」
繰り返して言われてしまう。
蕎麦を打つ。
柚鈴は体験したことがないが、大変な作業に思える。
「オトウサンはそういう趣味があるんですか?」
「いいえ。今日の為に習いに行ったんですって」
「え、オトウサンってすごく忙しいんですよね?」
「ええ、すごく忙しいわ」
「……」
あっさりと肯定されて、柚鈴は沈黙を返すしかない。
倉庫から出て瓶を一度庭に出して、外の水道で洗ってから天日干しをすると、改めたように志奈さんは仕切り直した。
「私たちは、母の日の課題をクリアしなくちゃいけないのよね」
「勿論です」
色々、脇道に逸れてしまった気もしないでもないが、母の日どうするかというのは、変わらず大本命と言えるので、柚鈴は頷いた。
志奈さんも頼もしく頷いて見せる。
「そんな柚鈴ちゃんに、昨日私が徹夜で調べておいた成果を元にしたアイデアがあります」
志奈さんは自信満々に言い出した。
少しだけ、調べたと言っていたが、やっぱりみっちり調べたのだろうか。
矛盾を感じつつ、口にはしない。
それよりも、内容が気になる。斜め上のものだったらどうしようと言う、不安も感じる。
だが、志奈さんの提案は思いのほか庶民的なものだった。
「二人で、手作りカーネーションを作りましょう」
「て、手作りですか」
思わずほっとするが、そのことに志奈さんは気づいていない。
ちょっと申し訳ない気もしたが、あんなに豪華な食器を見せられた後では、一体どんな提案をしてくるのかと、不安になっても仕方がない。
柚鈴が多少、嬉しそうな顔をしているのをどう思ったのか、志奈さんはにっこりと笑った。
「それでね。一つ仕掛けをしようと思って」
「仕掛けですか?」
志奈さんは頷いてから、辺りを気にしたように見回す。
「どうしたんですか?」
「お父様に聞かれたら、ちょっと悔しいかと思って」
「いや、悔しくはないでしょう」
意味が分からずに柚鈴が否定すると、志奈さんは首を振った。
「いいえ、絶対悔しいわ。そしてこれは姉妹の秘密にしておかなければならないことなのよ」
「……」
もしかして『姉妹の秘密』が欲しいだけなんじゃあ。
一瞬よぎる考え。
しかし、母の日について考えるのは、志奈さんへのお礼だったことを思い出した。
つまり、ここは志奈さんに付き合うのが筋だろう。
「そ、ソウデスネ。そうしましょうか」
全く心がこもっていなかったが柚鈴が同意すると、志奈さんは更にやる気になったように、オトウサンがどこにいるのかを気にしつつ、家の中に入っていった。
一先ず柚鈴もそれに従って付いていく。
「柚鈴ちゃんはとりあえず二階のベランダに行ってて」
そう指示を受けて、階段を上がることにした。
志奈さんは、そのまま台所へと行ってしまう。
途中まで普通に階段を上っていて、もしかしたらここはオトウサンにばれないように、スパイのように静かに上ったほうがより良いのかと、意味もなく音を立てないように登ってみたりする。
一応、感謝の気持ちを込めて、一歩ずつ。
こんなことで、お礼になっているのかな…?
多少疑問は湧くが。気にしたら、なんというか自分に負けそうな気がしたので。
気にすることを止めた。
そうしてベランダに出ると、そこには志奈さんお気に入りのゆりかご椅子が、風のせいか、ぶらぶらと揺れていた。
迷ってからベランダの一角にあるテーブルと椅子の方に進む。
ゆりかご椅子には興味があるのだが、迂闊に使用すると、志奈さんが喜んで一緒に座ろうとする未来が見える。椅子が無難でいい気がする。
椅子に座ると、風が心地よく入ってきて気持ちよかった。
志奈さんは少ししてから、アイスティを二つ持って入ってきた。
「お父様は大丈夫だったわ。お昼ごはんの為に張り切って蕎麦を打っていたから」
「は?」
「蕎麦を打ってたの」
繰り返して言われてしまう。
蕎麦を打つ。
柚鈴は体験したことがないが、大変な作業に思える。
「オトウサンはそういう趣味があるんですか?」
「いいえ。今日の為に習いに行ったんですって」
「え、オトウサンってすごく忙しいんですよね?」
「ええ、すごく忙しいわ」
「……」
あっさりと肯定されて、柚鈴は沈黙を返すしかない。
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