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第二章 5月‐序
オトウサンとのお出かけ ★2★
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「わ、私は良いですよ!ドライブくらい」
「良くないでしょう!」
不満そうに言い返した志奈さんに、思い切りイヤイヤと首を振ってみせた。
志奈さん、落ち着いて。落ち着いてください。
「い、いえ。せっかく帰ってきたけど、この辺りが何があるかわからないし。志奈さんも忙しいなら、オトウサンにドライブ連れていってもらうのも楽しい気がします」
「本当に?」
「本当ですよ。ていうか、なんでそんなに疑うんですか!」
柚鈴の必死の説得に、志奈さんはむぅ、っと拗ねたように頬を膨らませた。
うん、とても可愛らしいのだけど、そこで拗ねられても困る。
「まあ、さっき僕に気を使って、二人のお出かけは諦めようかと話していたみたいだから悪いけどねえ」
オトウサンは苦笑して言った。
「このお休み中に、母の日のことを二人で考えるのなら、それに僕は仲間入りも出来ないだろうし。それでなくても柚鈴ちゃんと二人きりで話をする機会なんて、今くらいだろう?頼むよ」
オトウサン。あくまでも穏やかで、低姿勢。
正直、オトウサンこそ不機嫌になったりしても良いような状況なのに、文句ひとつ言わずに収めようとしていて、偉い。
そして志奈さんも、その様子をみて少し考えるように沈黙した。
流石に、自分の子供っぽい言動を振り返ったのかもしれない。肩を落として、大きなため息をついた。
「柚鈴ちゃんは、構わないのね?」
「え?あ、はい」
念押しのような確認に柚鈴が頷くと、志奈さんは仕方ないと言った様子で肩を竦めた。
「妹が父親と二人で出かけるのを断固阻止する程、意地悪じゃないわ。私も少し大人になって、二人を見送ります」
そう言って食器を片づけだす志奈さんに気付いて手伝うように柚鈴が立ち上がると、志奈さんは首を振った。
「いいの。片づけはしておくから、準備をして出かけてきて」
「でも」
昼食の手伝いも何もしていない柚鈴からすると、片づけくらいはしたい気持ちが強い。
だが、志奈さんは断固譲らなかった。もう一度首を振ってから柚鈴をまっすぐに見つめる。
「だって、片づけるものもなくなってしまったら、二人を待ってるのが退屈だもの。ゆっくり片づけて、ついでに掃除でもしてから夕飯の準備をゆっくり始めるわ」
「ありがとう、志奈」
オトウサンは一度笑ってから、悪戯っぽく付け加えた。
「じゃあ、ゆっくりゆっくり行ってくるよ」
「そこは早く帰ってくるよ、でしょう!?お父様」
不満そうに声を上げた志奈さんに、満面の笑みを返したオトウサンは支度をするために部屋に行ってしまう。
こういうところはさすがに親子なんだろう。志奈さんの子供のような表情に、柚鈴は思わず笑ってしまう。
下手下手に出ていたのに、なんだか一瞬でオトウサンが志奈さんを転がしていたような形になった。志奈さんをこんな風にからかう存在は、他にそうはいない気がする。
思いがけず良い物を見た気がしつつ、柚鈴も片づけを諦めて準備をすることにした。
「柚鈴ちゃん」
部屋を出ようとした柚鈴に志奈さんは声を掛けると、いつも通りふんわりと笑った。
「美味しいご飯用意して待ってるから」
「志奈さん」
その表情に曇りがないかを一瞬探ったが、その様子は全くなかった。
いつもどおりの志奈さんだ。
「別にゆっくりしなくてもいいけど、私のことを気にして早く帰る必要はないから。楽しんできてね」
そう言って志奈さんの表情は優しくて、柚鈴は素直に頷いた。
オトウサンに見せた子供の顔の志奈さんと、私に見せるお姉さんの顔の志奈さん。
こういうのが家族で、こういうのが姉妹なんだろうかなんて、少しだけ考えていた。
「良くないでしょう!」
不満そうに言い返した志奈さんに、思い切りイヤイヤと首を振ってみせた。
志奈さん、落ち着いて。落ち着いてください。
「い、いえ。せっかく帰ってきたけど、この辺りが何があるかわからないし。志奈さんも忙しいなら、オトウサンにドライブ連れていってもらうのも楽しい気がします」
「本当に?」
「本当ですよ。ていうか、なんでそんなに疑うんですか!」
柚鈴の必死の説得に、志奈さんはむぅ、っと拗ねたように頬を膨らませた。
うん、とても可愛らしいのだけど、そこで拗ねられても困る。
「まあ、さっき僕に気を使って、二人のお出かけは諦めようかと話していたみたいだから悪いけどねえ」
オトウサンは苦笑して言った。
「このお休み中に、母の日のことを二人で考えるのなら、それに僕は仲間入りも出来ないだろうし。それでなくても柚鈴ちゃんと二人きりで話をする機会なんて、今くらいだろう?頼むよ」
オトウサン。あくまでも穏やかで、低姿勢。
正直、オトウサンこそ不機嫌になったりしても良いような状況なのに、文句ひとつ言わずに収めようとしていて、偉い。
そして志奈さんも、その様子をみて少し考えるように沈黙した。
流石に、自分の子供っぽい言動を振り返ったのかもしれない。肩を落として、大きなため息をついた。
「柚鈴ちゃんは、構わないのね?」
「え?あ、はい」
念押しのような確認に柚鈴が頷くと、志奈さんは仕方ないと言った様子で肩を竦めた。
「妹が父親と二人で出かけるのを断固阻止する程、意地悪じゃないわ。私も少し大人になって、二人を見送ります」
そう言って食器を片づけだす志奈さんに気付いて手伝うように柚鈴が立ち上がると、志奈さんは首を振った。
「いいの。片づけはしておくから、準備をして出かけてきて」
「でも」
昼食の手伝いも何もしていない柚鈴からすると、片づけくらいはしたい気持ちが強い。
だが、志奈さんは断固譲らなかった。もう一度首を振ってから柚鈴をまっすぐに見つめる。
「だって、片づけるものもなくなってしまったら、二人を待ってるのが退屈だもの。ゆっくり片づけて、ついでに掃除でもしてから夕飯の準備をゆっくり始めるわ」
「ありがとう、志奈」
オトウサンは一度笑ってから、悪戯っぽく付け加えた。
「じゃあ、ゆっくりゆっくり行ってくるよ」
「そこは早く帰ってくるよ、でしょう!?お父様」
不満そうに声を上げた志奈さんに、満面の笑みを返したオトウサンは支度をするために部屋に行ってしまう。
こういうところはさすがに親子なんだろう。志奈さんの子供のような表情に、柚鈴は思わず笑ってしまう。
下手下手に出ていたのに、なんだか一瞬でオトウサンが志奈さんを転がしていたような形になった。志奈さんをこんな風にからかう存在は、他にそうはいない気がする。
思いがけず良い物を見た気がしつつ、柚鈴も片づけを諦めて準備をすることにした。
「柚鈴ちゃん」
部屋を出ようとした柚鈴に志奈さんは声を掛けると、いつも通りふんわりと笑った。
「美味しいご飯用意して待ってるから」
「志奈さん」
その表情に曇りがないかを一瞬探ったが、その様子は全くなかった。
いつもどおりの志奈さんだ。
「別にゆっくりしなくてもいいけど、私のことを気にして早く帰る必要はないから。楽しんできてね」
そう言って志奈さんの表情は優しくて、柚鈴は素直に頷いた。
オトウサンに見せた子供の顔の志奈さんと、私に見せるお姉さんの顔の志奈さん。
こういうのが家族で、こういうのが姉妹なんだろうかなんて、少しだけ考えていた。
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