拝啓、お姉さまへ

一華

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第一章 4月

お姉さまに聞きたいことがあります! ★3★

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お風呂セットを持って部屋を出ると、隣の部屋から出てきたらしい子とばったりと出くわした。
一年生の子だ。名前はなんだったっけ?と記憶を辿る。
夕食の前に食堂の説明を受ける前に集まった一年生同士で挨拶をしたものの、緊張していたのでほとんど覚えていない。
困っているとこちらを見つめる澄んだ瞳と目が合った。
「改めて、はじめまして。隣の部屋に入ることになりました。一年生の春野幸はるのゆきです」
「こちらこそ、改めて。小鳥遊柚鈴です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
柔らかな笑顔で微笑まれて、可愛い子だなと思った。容姿云々というか、空気がほんわかしてる。
隣の部屋が幸みたいな子で、なんだかほっとした。

お風呂上がりかと観察してみると、幸の肩にかかる髪は後ろで一部分だけ纏められて結ばれているが、濡れていた様子はない。手には、お風呂セットを入れてるらしいカゴを抱えている。
どうやら幸も浴場に行くところらしい。
「あの、お風呂入る所だったら一緒に行かない?」
子犬みたいに、小首を傾げてお伺いを立てられる。
確か、幸さんは長野から来た、と言ってたな。
柚鈴は夕食前の自己紹介の時間のことを思い出した。
緊張しながらも笑顔で、ゆっくり丁寧に自己紹介をしていたのが彼女だった。

「なんだかみんなの大浴場なんて、どきどきしちゃうね」
「そうだね」
「さっきの食堂もなんだか緊張しちゃって、美味しかったのは覚えてるんだけど、何食べたかイマイチ覚えてないよ」
「え?ハンバーグだったよね?目玉焼き乗ってた」
「はぁ!そうだったー!半熟玉子だったね。美味しかったなぁ。また食べたいなぁ」
ころころ変わる表情に、ふふっと笑ってしまう。
このほんわかは、どうも感染するものらしい。

大浴場は一階の中央奥にある食堂を過ぎての、寮の最奥にある。
中は広々としていて、髪を乾かすための洗面台には大きな鏡が何枚も飾られている。奥に着替えるためのロッカー、それから大浴場に続く扉がある。
木材を多く使っていて、まるで温泉に続いているような内装に、まだ入ってもないのに癒し効果絶大。
幸と2人で感動していると、入浴を終えた1年生たちが「お先に」と部屋に帰っていくのにハッとした。
慌ててロッカーに向かう。

「はうっ憂鬱だなぁ」
「なにが?」
「私、体型キューピーちゃんなんだもん」
まじまじと言われ、思わず見つめると、はふっと体を両手で隠された。
「セクハラは大反対っ」
「大して私も変わらない気がするけど」
「違うよー!スレンダーとキューピーちゃんは違うよー!」
「スレンダーは褒めてない、よね?」
思わず手を止めて、言葉を返してしまい、中々着替えが進まない。

そうこうしてる内に後から入ってきた人が
「その調子だと、私が上がっても居そうね」
と笑って、先に浴場に進んで行ってしまった。
はっとして、2人で慌ててイソイソと服を脱いだ。
先に体を洗ってから、お風呂に浸かる。
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