拝啓、お姉さまへ

一華

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第一章 4月

お姉さまは有名人? ★8★

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「それは学園公認ということですか?」
「OGからの干渉については、公認というより黙認ね。助言者メンターになるにはある程度成果を上げることが必要だから、努力するようにとハッパをかけてくれる存在はマイナスとは言えないもの」
「そ、そうなんですか」
曖昧に笑うと、市原寮長はにっこり笑った。

「まあ、一代限りで終わる人達もいるから、気にしすぎることはないわ。私達は家系ごと楽しんでいるし」
花奏さんを見ると同意するようにニコニコしているから、まあ確かに楽しんでいるんだろう。
満開の花のような笑顔で説明に加わる。
助言者メンターとして認定されると、学園からバッチを二つ貰えるんだよ。その片方をペアになる後輩に渡して、二人で襟元につけるの」

あ、あれ?
どこかで覚えがあるような物が話題に出て、部屋の中の制服の襟元を頭によぎらせる。
それって、もしかして、もしかしなくてもまさか…?
我慢できず挙手して、どうぞと促されると勢い良く尋ねた。
「あの、襟元につけるバッチってもしかして、翼のデザインのバッチですか!?」
「あら、知っているの?」
ああ…!?
肯定する遥先輩の言葉に、言葉を失う。
ついつい、ちらりと制服を振り返ってしまう。
入り口の外にいる二人には見えないが、志奈のお下がりセーラーには、先ほど付けたばかりの両翼の翼のバッチが飾られているのだ。
つまりこれが常葉学園の助言者メンター制度に加わってる証なのだろうか?

そうすると、なんのつもりでこれを渡したのか分からない。
もうすでに、特定の上級生がいますよ、というダミーにしろというのだろうか?
そうだとすると、あんまり良策な気がしないよ、志奈さん。
困惑した様子の柚鈴を不思議そうにしながらも、ああ、そうだと遥先輩は言葉を足した。

「確か柚鈴さんは外部受験からの入学で、しかも特待生だったわね。きっと助言者メンターになった人からペアにどうかって声を掛けられるわね」
「え?私、ペアのメンティーとかいうものになるんですか?」
「同じような条件の人は、ほとんどね。外部受験からの新入生は、中等部の子に比べて常葉学園に馴染むのも時間が掛かると思われるもの。それに特待生は学力があるから来年度助言者メンターになる可能性も高いわ」
「そ、そうなんですか?」
来年度のことなんて、全く考えてなかっただけに、なんだか気が重いんだけど。
助言者メンターになることを見込まれてしまって、声を掛けられるとしたら、大変そうだ。

助言者メンターはペアをなるべく持つことを望まれるから、先生の方から紹介されて薦められる場合もあるわ。待っていても良いし、どなたか気になる先輩がいたら思い切って声をかけてもいいわね」
もしかして、ペアになりたがってると思われたのだろうか?
なりたいとかなりたくないとか以前の、義理の姉の仕掛けた謎の行動に挙動不審なだけです!
どちらかと言えば気が重いです!

…なんてことは言わないし、言っても意味がない。
もの言いたげな顔が分かったのか、遥先輩は安心させるように笑った。
「別に望まないのならそれでも良いのよ。どちらでも。まずは学園生活を楽しみましょう」
ふわりと笑う表情は、確かに上級生の頼りがいのあるもので、ほっとする。
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