13 / 282
第一章 4月
お姉さまは有名人? ★6★
しおりを挟む
しかし、小鳥遊志奈とは全く関係がないということになってしまった。
勘違いしたのは向こうだが、言いたくない気もして黙っていたのは柚鈴だ。
本当に、良かったのだろうか。
一抹の不安が残りつつも。
いや、でも私、ごくごく平和に平凡に学園生活が送りたい。
最終的にその気持ちが勝ってしまい、『今は言わない』という方向で行くことにした。
今後、機会があるかもわからないが。
お二人とも、なんだかゴメンナサイ。
心の中だけでお詫びする。
「じゃあ常葉学園の昔からの伝統についてお話ししましょうか」
市原寮長、ではなく遥先輩の言葉に、それについてはと気力を振り絞って、手を挙げた。
「あ、あの。一つ聞いても良いですか?」
「何かしら?」
「常葉学園には上級生を様付で呼ぶ習慣があるんですか?」
「ないわね」
ええ?じゃあ二人はなんなんだ!
あっさり否定した遥先輩はツインテールを揺らしながら腕を組んだ。それが少しかっこいい。
「正確には今の常葉学園では『その習慣が当たり前にある』とは言い難いわ」
「今の?」
「ええ、そう。昔はあったのよ。常葉学園は元々、歴史ある女学校で、それこそお金持ちの商家のお嬢さまから、ちょっとした血筋のお嬢さま方も通っていたの。その時代は当たり前のように上級生を様付けで呼んでいたそうよ」
落ち着いた滑るような話し方を、花奏さんはニコニコしながら聞いている。
遥先輩の言葉は全く淀みない。
「理事が変わって大分、様変わりしたの。だから、その時の習慣は廃止されたものも多いわ。なのに何故、私のことを花奏が様呼びしているかと言うと。常葉学園にある制度が関係しているのよ」
そこまで言われて、志奈さんの言葉を思い出した。
学校公認の恐ろしい制度がある、と。
その話ではないだろうか。
勘違いしたのは向こうだが、言いたくない気もして黙っていたのは柚鈴だ。
本当に、良かったのだろうか。
一抹の不安が残りつつも。
いや、でも私、ごくごく平和に平凡に学園生活が送りたい。
最終的にその気持ちが勝ってしまい、『今は言わない』という方向で行くことにした。
今後、機会があるかもわからないが。
お二人とも、なんだかゴメンナサイ。
心の中だけでお詫びする。
「じゃあ常葉学園の昔からの伝統についてお話ししましょうか」
市原寮長、ではなく遥先輩の言葉に、それについてはと気力を振り絞って、手を挙げた。
「あ、あの。一つ聞いても良いですか?」
「何かしら?」
「常葉学園には上級生を様付で呼ぶ習慣があるんですか?」
「ないわね」
ええ?じゃあ二人はなんなんだ!
あっさり否定した遥先輩はツインテールを揺らしながら腕を組んだ。それが少しかっこいい。
「正確には今の常葉学園では『その習慣が当たり前にある』とは言い難いわ」
「今の?」
「ええ、そう。昔はあったのよ。常葉学園は元々、歴史ある女学校で、それこそお金持ちの商家のお嬢さまから、ちょっとした血筋のお嬢さま方も通っていたの。その時代は当たり前のように上級生を様付けで呼んでいたそうよ」
落ち着いた滑るような話し方を、花奏さんはニコニコしながら聞いている。
遥先輩の言葉は全く淀みない。
「理事が変わって大分、様変わりしたの。だから、その時の習慣は廃止されたものも多いわ。なのに何故、私のことを花奏が様呼びしているかと言うと。常葉学園にある制度が関係しているのよ」
そこまで言われて、志奈さんの言葉を思い出した。
学校公認の恐ろしい制度がある、と。
その話ではないだろうか。
0
お気に入りに追加
89
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。



魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

イルカノスミカ
よん
青春
2014年、神奈川県立小田原東高二年の瀬戸入果は競泳バタフライの選手。
弱小水泳部ながらインターハイ出場を決めるも関東大会で傷めた水泳肩により現在はリハビリ中。
敬老の日の晩に、両親からダブル不倫の末に離婚という衝撃の宣告を受けた入果は行き場を失ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる