後宮にて、あなたを想う

じじ

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154 黄貴妃の助言

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黙り込んだままの黄怜を後宮まで送り届けたあと、皇帝は黄貴妃の部屋の前で突っ立っていた。
黄怜のことも含めて相談したい気もするが、彼女の正論に打ちのめされそうな気もして部屋に入る決心がつかない。
今日は遅いし明日にしよう、そう思って踵を返そうとした瞬間、背後に貴妃が立っていることに気づき、皇帝はぎょっとしたように尋ねた。

「いつからいたのだ?」

小首を傾げるようにして黄貴妃は答えた。

「おそらく陛下が私の部屋の前で立ち止まられてからすぐです」
「なぜ声をかけてくれなかった」
「かけようかと思いましたが、お一人で何やらぶつぶつと仰っていたので…不気味で声をかけられませんでした」
「…」
「まぁ、お入りになってください。確かに今日はもう遅い時間ですし、先日日の明るいうちに次からは来いとお伝えしましたが、そのご様子では早くお聞きした方がよろしい内容でしょう?」
「いらっしゃって…とか言えないのか」

横暴な黄貴妃の言葉遣いにがっくりと頭を落としながら皇帝が反論すると、意外にもクスリと笑い声が聞こえた。

「失礼しました。来いなど陛下に使う言葉ではございませんでした」

それでようやく黄貴妃が自分の心を軽くするためにわざと軽口を叩いたのだと気づく。

「いや…すまない」
「黄怜様のご両親の件、ですわね」
「ああ。二人の首を刎ねた」
「ええ」
「彼らには自分たちの罪が怜への冷遇と領地不管理の罪だと伝えた。後宮の噂を払拭するために利用することは告げないままだった。これくらいのことで何故、と思っていただろうな」
「確かにどちらも珍しいことではないでしょうが、死罪にされても仕方ないことでしょう」

さらりと一切の情を挟まずに答えた黄貴妃に皇帝は面食らった表情をする。

「むしろ詳細をお知りになった上で望んで死罪を受け入れるような方たちであれば黄怜様もご実家での苦労などなさらなかったはずです」
「まあ、それはそうだろうが」
「黄怜様のご両親に関しては終わったことです。後は彼らの死を後宮の噂を打ち消すためにうまく使わねばなりません。陛下がなさることはその根回しでは?」

淡々と告げる黄貴妃に皇帝は言いづらそうに答えた。

「帰り道から黄怜が話さない。黙り込んだままなのだ」
「まさかそのご相談に来られたのですか」

大仰な溜め息を吐きながら尋ねた黄貴妃に皇帝はばつが悪そうに頷いた。
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