後宮にて、あなたを想う

じじ

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133 庇う心

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「…先ほど申し上げた通りでございます。」

表情を変えることなく答えた州芳に、皇帝は重ねて問うた。

「事実を話せ。」

冷たく言い放たれた言葉に、しかし怯むことなく州芳は答えた。

「事実にございます。」

その様子を見て皇帝は不敵な笑みを浮かべた。

「そなたのその心遣いを相手が喜ぶと思うのか」

その言葉に州芳は一瞬、顔色を変えた。その変化を皇帝は見逃さなかった。

「やはりな。」

皇帝がそう呟いた瞬間、二人の間に枯れた老人の声が割って入った。

「州芳、もうよしなさい」
「先生…」

ぎょっとした様子で州芳が入り口を振り返ると、侍医が落ち着いた様子で部屋に入ってきた。

「陛下、お話中申し訳ございませぬ」
「いや…久しいな」
「本当に。陛下は頑健な身体をお持ちゆえ、私は久しく仕事がありませんでしたぞ。」

柔らかな声音で場に似つかわない軽口を言われた皇帝は柔らかに微笑んだ。その表情を崩さないまま、侍医に尋ねる。

「私の妃と子ども達が亡くなった理由はそなたか?」

問われた侍医は表情を変えることなく穏やかな声で答えた。

「仰る通りでございます」
「先生…違います!私が…」
「州芳、黙りなさい」

厳しい声で州芳を叱りつけた侍医は、すぐに元の穏やかな声で皇帝に答えた。

「陛下、言い訳も弁明もする気はございません。ただ先に事実はお伝えさせてください」
「いいだろう」
「まず、前皇后様と御子、律佳様と御子に関しては不幸な事故としか言いようがございませんでした。手を尽くしましたが、それでも救えなかった咎は私にあります」

頷くことなく侍医を見つめる皇帝の視線に臆することなく侍医は続けた。

「陳家のご姉妹とその御子方は私が殺しました。州芳は私の指示に従ったにすぎません」
「違います、私が…」
「黙れと言っておる。今、陛下は私に問われているのだ。口を開くな。陛下申し訳ございませぬ」

先ほどより遥かに厳しい叱責に、州芳は青ざめた表情のまま、ぽろぽろと涙を流した。その背中を黄怜は優しくさする。その様子をちらりと見た皇帝は、視線を侍医に戻して尋ねた。

「なぜだ」
「なぜ陳家のご姉妹と御子方を殺めたか、ということでしょうか」
「ああ。」
「彼女達に私の…最愛の娘を殺されたからです」
「…そなたに子はおらぬと思っていたが」
「はい。血の繋がりはございません」
「初めて聞いたが」
「ええ。知っている者はほとんどおりませんので。」
「その者とは?」
「紅霞と申す者です」

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