後宮にて、あなたを想う

じじ

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125 呵責

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「先程この話は紅霞が亡くなって聞き及んだと申し上げましたが、本当は本人に問いただしたのです。」
「え」
「彼女は泣きながら全てを話してくれました。湖月様にお酒を持っていくように言われたこと。周廉様のお酒に薬を入れて眠らせ共寝をしたと本人に思わせること。そして…祝いの品に添えた封書を必ず読ませることも」
「どういうことでしょうか」
「周廉様に酒と共に渡した手紙は湖月様が書かれたものでした」
「ええ」
「そこには婚約の祝いを記した直後に、嘲るかのように紅霞が出家する旨の偽りが書かれていたのです。切られた一束の黒髪と共に」
「なんて残酷なことを…」
「ええ。本当にそう思います。周廉様はすぐに真実であるか侍女にお聞きになられました。彼女はそれに対して是と答えたそうです」
「ご自身では…紅霞殿にお聞きになられなかったのですか?」
「女性の誇りとも言える黒髪と共に言い渡されて…恐らく真実だと思い込んだのだと思います。ご丁寧に渡された黒髪には常に紅霞が付けていた真珠の簪まで添えられていたそうですから」
「ひどいことをなさいますね…」
「呆然としている周廉様に、慰めとしてお酒を注ぎ飲ませて眠らせるのはたやすかったでしょう。翌朝起きると横には遣いの侍女が眠っているのです。何も起こらなかったという方が信じられないでしょう」
「そうですね…」
「周廉様は慌てて侍女を起こし、そして紅霞にあてて手紙を書いたようです。
出家を突然知らされて悲嘆にくれ、酒に飲まれてしまい、別の女性を抱いてしまったことを詫びる内容だったそうです。
他の女性を娶ることになるとしても紅霞との婚約を破棄しないうちに、男女の関係を持つような方ではなかったようですから」
「そんな…」
「遣いの侍女にも周廉様は深く詫びたそうです。このことが理由で彼女が嫁げなかった場合は自分が娶るとまで言ったそうですから。もちろん紅霞が出家すると信じた上での発言に他なりませんが…」
「その女性は真実を告げなかったのでしょうか」

悲しそうに黄怜が呟くと、律佳はすっと目を伏せた。

「それが言えるような者なら元より湖月様の謀をお聞きした時点で諫めたでしょう」
「そう…ですね」
「泣いて真実を話す彼女を…私はあろうことか責めたのです。なぜ紅霞にだけでも本当のことを言わなかったのか。それが理由で紅霞は自ら命を絶ったのではないか、と」
「…」
「怖くて言えなかった、と繰り返していた彼女でしたが…あなたなら抗えた?と聞かれた瞬間、私は言葉を無くしました。」


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