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123 慕う心
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「裏切ったと言う表現が適切かは分かりません…ただ少なくとも紅霞にとっては死を選ぶくらいのことだったのだと思います」
「何があったのかしら」
黄怜が問うと律佳はしばらく黄怜の瞳を見つめた。そして小さく息を吐くと、やがて決意したように簡潔に答えた。
「後に聞き知った話ではございますが、その手紙は周廉様から紅霞への別れを告げる内容だったそうです」
「そんな…」
「周廉様が婚約の破棄を申し出られたご理由は…湖月様だったそうです。」
意味が分からず律佳を見つめたまま首を傾げた黄怜に、律佳は寂しそうな微笑みを浮かべたまま答えた。
「皇后様は周りの方に恵まれておいでですのね」
およそ自分の生家が恵まれていた状況だったとは思えない黄怜は、なんと答えて良いものか分からず戸惑った。
「どうでしょうか…」
あやふやな答えを返した黄怜に、律佳は申し訳なさそうな表情をし、続けた。
「皇后様のご生家については失礼ながら噂程度には存じております。私が周りに恵まれていると申し上げたのは、現在の後宮のことでございます」
「ああ、それは確かにそうかもしれません」
得心がいった黄怜は頷く。それを哀しげな微笑みで見つめながら律佳は答えた。
「女性が集まるところ…特に男性の目がないところで揉め事が起きないことは珍しいかと思います。皆様の上に立たれる皇后様のお人柄が素晴らしいからですね」
本心からそう思っている調子で律佳から持ち上げられた黄怜は、思わず苦笑した。
「私ではありません。側妃方が皆様できた方なのです。私のような者が贄のように正妃の座に尽かされて、同情していただいているのかもしれませんが」
冗談めかして答える黄怜に、律佳は柔らかな微笑みで答える。
「そのようなことは…ですが、皇后様を筆頭に今のお妃様方は素晴らしい方々なのは間違いないでしょう。
話が脱線してしまいました。申し訳ございません。私が申し上げたかったことは、陳家では女性同士の間で揉め事が絶えなかったのです。」
「まあ…湖月様や水月様は嗜められたりされなかったの?」
「他家の亡き姫君方を悪様に言うべきではありませんが…揉め事の多くはお二人によって起こされるものでした」
当時を思い出したのか、律佳が眉を顰める。柔らかな美貌に不釣り合いなその表情を見て、黄怜は陳家での律佳の苦悩を
感じた。
「では紅霞殿の件、湖月様が何かなさったのですか」
「はい。湖月様はまずその当時にお気に入りだった侍女に、紅霞の主からとして婚約の祝の酒を持たせたそうです。」
「何があったのかしら」
黄怜が問うと律佳はしばらく黄怜の瞳を見つめた。そして小さく息を吐くと、やがて決意したように簡潔に答えた。
「後に聞き知った話ではございますが、その手紙は周廉様から紅霞への別れを告げる内容だったそうです」
「そんな…」
「周廉様が婚約の破棄を申し出られたご理由は…湖月様だったそうです。」
意味が分からず律佳を見つめたまま首を傾げた黄怜に、律佳は寂しそうな微笑みを浮かべたまま答えた。
「皇后様は周りの方に恵まれておいでですのね」
およそ自分の生家が恵まれていた状況だったとは思えない黄怜は、なんと答えて良いものか分からず戸惑った。
「どうでしょうか…」
あやふやな答えを返した黄怜に、律佳は申し訳なさそうな表情をし、続けた。
「皇后様のご生家については失礼ながら噂程度には存じております。私が周りに恵まれていると申し上げたのは、現在の後宮のことでございます」
「ああ、それは確かにそうかもしれません」
得心がいった黄怜は頷く。それを哀しげな微笑みで見つめながら律佳は答えた。
「女性が集まるところ…特に男性の目がないところで揉め事が起きないことは珍しいかと思います。皆様の上に立たれる皇后様のお人柄が素晴らしいからですね」
本心からそう思っている調子で律佳から持ち上げられた黄怜は、思わず苦笑した。
「私ではありません。側妃方が皆様できた方なのです。私のような者が贄のように正妃の座に尽かされて、同情していただいているのかもしれませんが」
冗談めかして答える黄怜に、律佳は柔らかな微笑みで答える。
「そのようなことは…ですが、皇后様を筆頭に今のお妃様方は素晴らしい方々なのは間違いないでしょう。
話が脱線してしまいました。申し訳ございません。私が申し上げたかったことは、陳家では女性同士の間で揉め事が絶えなかったのです。」
「まあ…湖月様や水月様は嗜められたりされなかったの?」
「他家の亡き姫君方を悪様に言うべきではありませんが…揉め事の多くはお二人によって起こされるものでした」
当時を思い出したのか、律佳が眉を顰める。柔らかな美貌に不釣り合いなその表情を見て、黄怜は陳家での律佳の苦悩を
感じた。
「では紅霞殿の件、湖月様が何かなさったのですか」
「はい。湖月様はまずその当時にお気に入りだった侍女に、紅霞の主からとして婚約の祝の酒を持たせたそうです。」
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