後宮にて、あなたを想う

じじ

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111 黄貴妃からの提案2

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「あ、ああ。」

そして蔡怜に向き直ると皇帝は苦笑いとともに答えた。

「気を使わせてすまないな」
「いえ…」

その様子を小さく溜め息を吐きながら黄昭は眺めた。思い合うわりに気遣い合い過ぎて、なかなか発展しない二人にもどかしさすら感じる。

「それで最悪の場合は、蔡怜様のご実家に罪を被っていただくのですよね」

歯に絹着せぬ言い方に、皇帝が一瞬顔を引き攣らせる。それを無視して黄昭は続けた。

「無実の罪を負って頂くのは心苦しいですが、それが蔡怜様と陛下の間でご納得されたことであれば、私から申し上げることは何もございません。」
「あの…」
「ですが、ご実家が断罪された後に蔡怜様が同じ地位にいらっしゃることは難しいかと思います。」
「もちろん…分かっております」

絞り出すように蔡怜は答える。

「はい。蔡怜様は聡明な方です。もちろん理解なさっておいででしょう。だからこそ、ご実家が断罪された後も皇后で居続けて頂くために、黄家の養女になっていただきたいのです。」

蔡怜はしばらく黙り込んだあと、言葉を選びながら話し出した。

「それは…とてもありがたいお言葉だと思います。ですが私は自分が皇后の地位に相応しい人間だとどうしても思えないのです。黄貴妃様にご迷惑をおかけしてまで、陛下の治世を危ぶませてまで、陛下の隣にいる価値のある人間だとは思えないのです。」

そして、決意に満ちた表情で黄昭に告げる。

「陛下のお隣は貴妃様の方が相応しいかと思います。」

黄昭が苦笑いとともに蔡怜のその言葉に答えようとした瞬間、皇帝がしれっと口を挟んだ。

「迷惑だそうだ」
「え」

蔡怜が驚いて黄昭を見ると、妖艶な笑みで黄昭は答えた。

「そう申し上げました。」
「それはあまりに…陛下が不憫では」

蔡怜が困ったような顔で言うと、黄昭は心底面白そうに笑った。
その二人の様子を見て皇帝は天を仰いだ。

「貴妃は厳しいからな。しかし不憫もやめてくれ」
「まあ、陛下は蔡怜様がいらっしゃれば、私がどのように思おうが無関心だとは思いますが」

さらりと評して、改めて皇帝に向き直る。

「陛下、祭礼様に言わなければならないことがございますでしょう?」 
「あ、ああ。」

黄昭に言われた皇帝が、蔡怜に向き直り改まった表情で告げた。

「先程のことだが、あなたが誰に皇后位を譲りたいと言っても、私がそれを認めることはない。」

強い眼差しで射抜くように言われて、蔡怜は驚いた。
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