後宮にて、あなたを想う

じじ

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109 蔡怜の驚愕

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叱りつけるように奏輝から言われ、ようやく蔡怜も完全に覚醒する。

「目、覚めました。」
「よろしゅうございました。早速お支度にかからせていただきます」

奏輝や他の侍女に囲まれて着替えの後、髪を結われ、化粧を施される。毎度のことながら、じっと座ってるだけの自分を鏡越しに見て蔡怜は、これなら寝てても変わらないのでは、と思った。

「蔡怜様、起きてらっしゃいますか」

苦笑するように言われ、蔡怜は物思いに耽っていたことに気づいた。

「ごめんなさい、ぼーっとしてた」
「余裕がおありのようでよろしゅうございます」
「…怒ってるの?」

問われた奏輝はきょとんとした様子で蔡怜を見つめた。

「いえ。単純に関心しただけなのですが…。嫌味のように聞こえてしまいましたか?」
「…少しだけ」

蔡怜がぼそりというと、奏輝は申し訳なさそうに眉尻を下げた。

「私の物言いが蔡怜様をご不快にさせたなら申し訳ございません。ただ、陛下と貴妃様が揃って来られるということで少し…」
「確かに気になるし、落ち着かないわよね」
「はい。なぜお二人で揃って来られるのでしょうか。それも突然に」
「あのお二人のことだから政治的な事情が絡んでるのかもしれないわね。あまりややこしいことにならないと良いのだけれど…」

思案するように蔡怜が言うと、奏輝は困ったように微笑んだ。
その直後、外から声がかかる。

「陛下及び貴妃様がいらっしゃいました」

思わず奏輝と二人で顔を見合わせる。思っていたよりはるかに早い二人の訪に緊張が走る。

「どうぞ」

辛うじて冷静な声で答えると二人が揃って入ってくる。

「急にすまなかったな。」

部屋に入ってきながら詫びる様子に常とは違うものを感じる。

「陛下が急に色々とおっしゃられるもので…申し訳ございません、蔡怜様」

眉尻を下げながら黄貴妃も申し訳なさそうに告げてくる。なんとか平常心を保ちながら蔡怜は、二人に椅子を勧めた。二人は互いに顔を見合わせ席に着いた。

「皇后、すまないが人払いしてくれ。あなたと貴妃と三人だけで話したいことがある」

突然の申し出に戸惑い黄貴妃をちらりと見ると、黄貴妃も神妙な面持ちで頷いた。

「私からもお願いいたします。これからお話する内容を受けていただくにせよ、断られるにせよ、内密でお伺いしたいことなのです」

奏輝は心配そうな表情を見せながらも、一礼してその場を去った。

「奏輝は口外するようなものではありません」

釈然としない蔡怜が二人に告げると黄貴妃は申し訳なさそうに言った。

「もちろん承知しております。ですが私たちは蔡怜様の忌憚のない意見をお聞きしたかったものですから」
「何の話でしょう?」
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