後宮にて、あなたを想う

じじ

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106 王位への道筋

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「話はこうです。まず、私の貴妃位をご解任いただきます。そして悪政を理由に現王たる兄を王位より降ろしていただき、代わりに私に王位をお与えください。
王位についた私は養女として蔡怜様をお迎えいたします。そして蔡家とは絶縁していただきます。
後宮の謎が解けた時、蔡家が罰せられたとしても、蔡怜様は黄家の養女であるためその時点ですでに無関係です。多少苦しい言い訳ではございますが、属国とはいえ他国の王族の養女である以上、貴族達も表立って反対することはできないでしょう。
その後、蔡怜様が御子をご懐妊され、お世継ぎが産まれれば、それを黄家の功績として黄国を独立国とお認めください。」
「なんだ、独立への道筋まで考えていたのか、結構なことだ。しかし皇后に子が生まれなければどうする?」
「ふふふ、そこは運を天に任せますわ」

あっけらかんと言い放った貴妃を呆れた表情で見ながら皇帝は呟いた。

「しかし、兄王殿の悪い噂は聞かないが…」

その言葉に黄貴妃は溜め息を吐いて答えた。

「はい。しかし兄は優しすぎるのです。悪政というのは言い過ぎです。ですが民であれ、取引のある諸国であれ、泣き付かれたり頼られたりすると全てを答えようとするあまり、結局どれも満足にできないと言うことがありまして…彼はよく幼い時分にこう言っておりました。昭が後継であれば、と。私もそう思います。芸事を好み繊細で優しい兄に政は不向きです。」
「その点、勝気で時に冷酷、容赦のない判断ができ、なおかつ奸智に長けたあなたは王に向いている訳か」

ぼそっと言った皇帝の評価を聞き逃さなかった黄貴妃はにっこり微笑んだ。

「あら、それほどお褒めいただけると恥ずかしゅうございますね」
「いや…」
「それで?私と手を組んでいただける、ということでよろしいでしょうか」
「ああ。だが、そのことはあなたの兄上は承知されているのか?無用な揉め事をこちらで被る気はないぞ」

冷酷な皇帝の物言いにも全く怯むことなく貴妃は返した。

「時期をみて、陛下に伺ってくれと言われて嫁いで参りましたので。黄島内で兄を差し置いて私が王位を継ぐのは些か…ですが主国たる真国皇帝から王位交代の命が下ったとあれば、多少真国に対して反発はあれど黄島内での無闇な争いは避けられます。」
「責任は私に押し付ける、と言っているようにしか聞こえないのだが。」
「はい。ですが、お許しいただけますでしょう?」

意味深に黄貴妃の唇が弧を描く。

「先程も言ったとおり無用な揉め事をこちらに持ち込まれては困る…」
「その代わり蔡怜様を養女として迎え入れるのですから」

被せるように言われて思わず皇帝は押し黙った。
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