後宮にて、あなたを想う

じじ

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104 黄貴妃の怒り

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「それは私がなんとかする」
「無理です。後宮にずっといらっしゃるのですか」
「それは…」
「そもそも、陛下が貴族の関与を必要とする、と判断された場合、それは娘の後宮入を目論んで妃達を弑した、とすることになるはずです。そのようにしておきながら、それを利用して皇后位になったとされる蔡怜様が後宮に居れるはずないではありませんか」
「だが…」
「普通は一族郎党斬首、温情に温情を重ねて事情の知らなかった蔡怜様のお命は助ける、と言う体にしても、どこぞの離宮に幽閉するしかないでしょう」
「…」
「無理を通せば今度は陛下と家臣方の間に溝ができます。妃一人のために国を揺るがすなど愚か者のすることです。」
「だが、彼女は命すら賭けると言ってくれた」

その言葉を聞いた黄貴妃は冷たく笑った。

「蔡怜様は命をかけて陛下にお尽くしになると仰ってるのに、陛下はあれも欲しいこれも欲しいとまるで子どものようですわね」
「どう言う意味だ!」

ついに声を荒げた皇帝に、黄貴妃は怯える様子もなく目をすっと細めた。

「言葉通りの意味です。不都合な真実が発覚した場合にそれを被ってくれる貴族が必要。でも、その生まれの蔡怜様も手放したくない…あまりに都合が良すぎませんか?蔡怜様が仰ったこととはいえ、事実と異なる物語が必要なら、陛下がご自身でその罪を被ってくれる相手を探さないといけないでしょう。それが無理ならどんな事実であれ公表することです。」
「だが…彼女の生家の領地を直轄地にするためにも、いざとなれば必要なのだ」

弱音を吐くように呟いたその言葉を聞いて黄貴妃は深く溜め息を吐いた。

「蔡家の領地が荒れ果てているからですか。蔡家に罪を被せることで事実の隠蔽ができるとともに領地の返還もなされる。考えましたわね。でもそれならなおさら蔡怜様は皇后位に置いておけませんよ。」
「私が彼女を守る」
「いいえ、陛下では守れません。他の貴族や妃達の不興を買うだけです」

淡々と言い放つ黄貴妃に皇帝は項垂れた。

「ですが、私なら蔡怜様をお助けできます」

黄貴妃は強い眼差しで皇帝を見つめた。

「どう言う意味だ」

問われた黄貴妃は笑みを浮かべた。

「陛下。私のこれからする話、ご内密に願えますか」

試すような眼差しにぞくりとした皇帝だが、黙って頷いた。
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