後宮にて、あなたを想う

じじ

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103 黄貴妃の言葉

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「大切に、か。そうだといいのだがな。」

ほろ苦く笑う皇帝に、しかし黄貴妃は慰める様子もなく冷たく言い放った。

「そうだといいですわね。私の見解なので違うかもしれませんが」
「あなたには血も涙もないのか!」
「それならご本人に聞かれるまでは私の言葉を信じておいたらよろしいのでは?今から悩んでも仕方ありませんし」
「…あなたといると私の悩みは瑣末なことに思えるな。もっと単純に皇后に気持ちを伝えるべきなのかもな」
「そうでしょうね」

答えた黄貴妃は呆れたような瞳で皇帝を見ながら続けた。

「お話しだけお聞きしていると、まるで初めて恋した少年のようで愛らしいのですが…」
「やめてくれ」
「私達の前に四人のお妃がいらっしゃった方とは思えませんね」
「…」
「いずれにせよ、ご健闘お祈りします」
「ああ、ありがとう」

むすっとして答えた皇帝に柔らかな微苦笑一つで答えて、黄貴妃は表情を改めた。

「それで、貴族達の同意の件ですわね。ですがそもそもお聞きしてよろしいでしょうか。」
「なんだ。」
「蔡怜様が皇后位を降りられるとお考えになったご理由お聞かせ下さいませ」
「それは…」
「皇后様は入宮してすぐから前妃方の死因をお調べのようでした。今回入宮した妃達の不安を取り除くために皇后として知っておきたい、と仰っていましたが、陛下が命じられたのではございませんか」

半ば断定するような黄貴妃の言葉に皇帝は笑って返した。

「ああ。そのとおりだ。さすがだな。」
「それで?どうして蔡怜様の皇后位の返上と結びつくのです?」
「…」
「まさか…前妃方の死因、何か隠しておられるのですか」
「いや、はっきりと分かりかねるところがあって彼女に頼んだ。だが、その際万が一…」

言いづらそうに一度言葉を飲み込み、そして意を決したように皇帝は続けた。

「公にできない事実が発覚すれば、影響力の少ない低位の貴族が関わったことにする。」
「まさか。それを蔡家に押し付けるおつもりですか?」
「そうだ。彼女も了承してくれている」
「そんなこと許せません」
「あなたには関係ないことだろう」

語気を強める皇帝に黄貴妃は燃える眼差しで答えた。

「本気で仰っているなら、蔡怜様の皇后位は諦めてください」
「なんだと」

今度はふっと冷たい顔で皇帝を嘲笑う。

「蔡怜様がご自身を仮初の皇后だと思ってらっしゃるご理由がよく分かりました。陛下の言葉がお耳に届かないわけも。」
「…」
「生家を利用して、皇后位のままでいられるはずなどありませんよ」
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