103 / 159
102 皇帝の落胆
しおりを挟む
「恥?」
にやりと笑った黄貴妃を見て、皇帝は深い溜め息をついた。
「話すから、相談に乗ってくれ。そしてそんな面白そうな顔をするな」
「はい」
わざとらしく神妙な顔をした黄貴妃を見て、皇帝は再度息を吐いた。
「つまり、自分が他の側妃にばかり声をかけても落ち込むな、と仰ったのですか?」
「ああ」
「自信家ですわね。さすが、皇帝ともなると…すごいですわねー」
「やめてくれ」
「その場面、直接見たかってですわ。惜しいことをしました」
「それでだな。相談したいことにうつっていいか。」
皇帝が無理やり話題を変えると、黄貴妃はさっと次の言葉を引き継いだ。
「蔡怜様の皇后位の扱い、ですわね」
「ああ。話が早くて助かる。彼女はおそらく機会が来ればあなたに皇后位を譲りたいと考えているだろう。全体の調和と自分の立ち位置を冷静に把握してるからな。」
「迷惑ですわ」
「私の前だぞ。もっと他に言いようがないのか」
「あら、私が本気で皇后位を欲しがって困るのは陛下ではございませんか」
「ああ。さすが奸智に長けた黄狐姫殿だな」
「なんでしょうか、そのとってつけたような二つ名」
「言い得て妙だと思わないか。皇后は憂いの美姫、なんだろう?あなたも何か通り名が欲しいかと思ってな。」
「奸智に長けた、も狐も褒めているようには思えませんが」
「私の率直な感想だ」
「不要です。それより話を戻してくださいませ」
「ああ。皇后位、どうすれば彼女をそのまま据え置けるかと思ってな。」
「ちなみに蔡怜様のご意思を尊重される気はございますか」
「悪いが、ない。嫌がっても手放せない。彼女は私にとって掌中の玉だ。もちろんこの国にとってもだが」
「それをそのままおっしゃればいかがですか?」
「伝えたが響いてる気がしない。」
「どうせ言葉半分なのでしょう。蔡怜様はしっかり口説き落とすとして、問題は周りの貴族達かもしれませんね。」
「そちらは無視する。」
「分かってませんね。蔡怜様の皇后位を守りたければ、周りの貴族達の積極的な肯定が必要です。それが整わない限り蔡怜様は機を見て正妃の座を降りようとなさるでしょう」
「なぜだ」
「陛下の治世を重んじておられるのですから。足を引っ張るような真似なさるはずがありません。ご自身の立場が陛下の足手まといだと感じられれば、潔く身を引かれるでしょう。」
「私はそんなこと望んでいないのにか」
「同様に蔡怜様も陛下から家臣方が離れられる状況をお望みではないのでしょう。大切に思われておいでですわね」
にやりと笑った黄貴妃を見て、皇帝は深い溜め息をついた。
「話すから、相談に乗ってくれ。そしてそんな面白そうな顔をするな」
「はい」
わざとらしく神妙な顔をした黄貴妃を見て、皇帝は再度息を吐いた。
「つまり、自分が他の側妃にばかり声をかけても落ち込むな、と仰ったのですか?」
「ああ」
「自信家ですわね。さすが、皇帝ともなると…すごいですわねー」
「やめてくれ」
「その場面、直接見たかってですわ。惜しいことをしました」
「それでだな。相談したいことにうつっていいか。」
皇帝が無理やり話題を変えると、黄貴妃はさっと次の言葉を引き継いだ。
「蔡怜様の皇后位の扱い、ですわね」
「ああ。話が早くて助かる。彼女はおそらく機会が来ればあなたに皇后位を譲りたいと考えているだろう。全体の調和と自分の立ち位置を冷静に把握してるからな。」
「迷惑ですわ」
「私の前だぞ。もっと他に言いようがないのか」
「あら、私が本気で皇后位を欲しがって困るのは陛下ではございませんか」
「ああ。さすが奸智に長けた黄狐姫殿だな」
「なんでしょうか、そのとってつけたような二つ名」
「言い得て妙だと思わないか。皇后は憂いの美姫、なんだろう?あなたも何か通り名が欲しいかと思ってな。」
「奸智に長けた、も狐も褒めているようには思えませんが」
「私の率直な感想だ」
「不要です。それより話を戻してくださいませ」
「ああ。皇后位、どうすれば彼女をそのまま据え置けるかと思ってな。」
「ちなみに蔡怜様のご意思を尊重される気はございますか」
「悪いが、ない。嫌がっても手放せない。彼女は私にとって掌中の玉だ。もちろんこの国にとってもだが」
「それをそのままおっしゃればいかがですか?」
「伝えたが響いてる気がしない。」
「どうせ言葉半分なのでしょう。蔡怜様はしっかり口説き落とすとして、問題は周りの貴族達かもしれませんね。」
「そちらは無視する。」
「分かってませんね。蔡怜様の皇后位を守りたければ、周りの貴族達の積極的な肯定が必要です。それが整わない限り蔡怜様は機を見て正妃の座を降りようとなさるでしょう」
「なぜだ」
「陛下の治世を重んじておられるのですから。足を引っ張るような真似なさるはずがありません。ご自身の立場が陛下の足手まといだと感じられれば、潔く身を引かれるでしょう。」
「私はそんなこと望んでいないのにか」
「同様に蔡怜様も陛下から家臣方が離れられる状況をお望みではないのでしょう。大切に思われておいでですわね」
1
お気に入りに追加
139
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります。
とうや
恋愛
「私はシャーロットを妻にしようと思う。君は側妃になってくれ」
成婚の儀を迎える半年前。王太子セオドアは、15年も婚約者だったエマにそう言った。微笑んだままのエマ・シーグローブ公爵令嬢と、驚きの余り硬直する近衛騎士ケイレブ・シェパード。幼馴染だった3人の関係は、シャーロットという少女によって崩れた。
「側妃、で御座いますか?承知いたしました、ただし条件があります」
********************************************
ATTENTION
********************************************
*世界軸は『側近候補を外されて覚醒したら〜』あたりの、なんちゃってヨーロッパ風。魔法はあるけれど魔王もいないし神様も遠い存在。そんなご都合主義で設定うすうすの世界です。
*いつものような残酷な表現はありませんが、倫理観に難ありで軽い胸糞です。タグを良くご覧ください。
*R-15は保険です。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
『別れても好きな人』
設樂理沙
ライト文芸
大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。
夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。
ほんとうは別れたくなどなかった。
この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には
どうしようもないことがあるのだ。
自分で選択できないことがある。
悲しいけれど……。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
登場人物紹介
戸田貴理子 40才
戸田正義 44才
青木誠二 28才
嘉島優子 33才
小田聖也 35才
2024.4.11 ―― プロット作成日
💛イラストはAI生成自作画像
後宮の記録女官は真実を記す
悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】
中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。
「──嫌、でございます」
男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。
彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──
貴方に側室を決める権利はございません
章槻雅希
ファンタジー
婚約者がいきなり『側室を迎える』と言い出しました。まだ、結婚もしていないのに。そしてよくよく聞いてみると、婚約者は根本的な勘違いをしているようです。あなたに側室を決める権利はありませんし、迎える権利もございません。
思い付きによるショートショート。
国の背景やらの設定はふんわり。なんちゃって近世ヨーロッパ風な異世界。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様に重複投稿。
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる