後宮にて、あなたを想う

じじ

文字の大きさ
上 下
101 / 159

100 皇帝の言い訳

しおりを挟む
ꕤ୭*故イレーヌ・エンジェル王女殿下降臨前のミランダ(ミランダ視点)

 私は慈善事業に携わるイレーヌ王女殿下に貧困街で拾われて、下女にしていただきとてもかわいがられたと思う。感謝はしているけれど、神様の不公平さをこれほど実感したことはなかった。

――産まれながらにして王女様。美しくて頭が良くて全てをお持ちなイレーヌ様に比べてなぜ同じ人間なのに・・・・・・私はこうなの? おかしいよ・・・・・・

 その後退職し鍛冶屋の男と結婚したものの、うまくいかずに離婚。子供を抱えてどうしたら良いか悩みオスカー公爵家にすがりに行くと、すでにイレーヌ王女殿下は他界していた。

「オスカー公爵の後妻のふりをして、アイビーを虐めてよ。旦那様も国王陛下も会いには来ない。今のうちにイレーヌ王女殿下へのうっぷんを晴らしていいからね」
 なぜか侍女長になっている昔の同僚アンナに耳打ちされた。

 だから、後妻のふりをしてアイビーを追い詰めた。このアイビーがこの世からいなくなれば、なにもかもうまくいくんだって。

 演技をするうちに、私こそはオスカー公爵夫人だと思い込むようになった。娘にも実の父親はオスカー公爵だと言い含めると簡単に信じ込み楽しい生活が始まった。





「国王陛下と公爵様からの子供向けのプレゼントはその子のものにしていいわよ。そのかわりお礼の手紙は書かせてね?」
 アンナは私に、笑いながら言った。

「こんなをことしてばれないの?」

「大丈夫よ! アイビーが死んでくれればまるく収まるんだから」





ꕤ୭*故イレーヌ・エンジェル王女殿下降臨前のアンナの気持ち(アンナ視点)



 昔下女をしていた女が、アイビーと同じような年頃の娘を連れてやってきたのがアイビー7歳の頃。良い案を思いついた。

――この女のせいに全てしてアイビーを追い詰めれば・・・・・・うふふ、私の望みは全て叶う。アイビーが死んだところで大騒ぎして公爵を呼び寄せ、ミランダは隣国に逃亡させるーーこれはあのお偉い方が協力するとおっしゃっていた・・・・・私だけがアイビーーを庇ったことにすればいい。

「きっと感激した公爵様は健気なアンナに感謝して・・・・・・アンナを愛してくれるさ」
 お偉い方は私にそうなることを予言してくれた。


 イレーヌ様はお産で死んだと誰もが言うが、あの隣国のお偉い方に渡された薬をこっそり奥様の水差しにいれたのは私。お産のどさくさに忍び込み、すぐに侍女長としてそこにいられたのは、お偉い方が公爵のふりをして今までの侍女達を速やかに入れ替えたから。

 今や使用人は全て護衛騎士にいたるまで、隣国の者であの方の配下の者だ。

「私のプロポーズを断って腰抜け公爵の妻になった罰なんだ!」
 お偉い方は一度だけそうつぶやいて意気揚々と去っていった。

――なんて、気持ちの悪い男なんだろう。私の純粋な愛を見習ったらいいのに。でも、このお偉い方のお陰で楽しい生活ができて幸せだわ!

ーーそろそろ、アイビーの心がもたない。あんな小さな子が自分で死ぬなんてワクワクするわ。あの世で高潔なイレーヌ王女殿下と仲良く悔しがればいい! あっはは!
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~

悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。 強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。 お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。 表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。 第6回キャラ文芸大賞応募作品です。

後宮の偽物~冷遇妃は皇宮の秘密を暴く~

山咲黒
キャラ文芸
偽物妃×偽物皇帝 大切な人のため、最強の二人が後宮で華麗に暗躍する! 「娘娘(でんか)! どうかお許しください!」 今日もまた、苑祺宮(えんきぐう)で女官の懇願の声が響いた。 苑祺宮の主人の名は、貴妃・高良嫣。皇帝の寵愛を失いながらも皇宮から畏れられる彼女には、何に代えても守りたい存在と一つの秘密があった。 守りたい存在は、息子である第二皇子啓轅だ。 そして秘密とは、本物の貴妃は既に亡くなっている、ということ。 ある時彼女は、忘れ去られた宮で一人の男に遭遇する。目を見張るほど美しい顔立ちを持ったその男は、傲慢なまでの強引さで、後宮に渦巻く陰謀の中に貴妃を引き摺り込もうとする——。 「この二年間、私は啓轅を守る盾でした」 「お前という剣を、俺が、折れて砕けて鉄屑になるまで使い倒してやろう」 3月4日まで随時に3章まで更新、それ以降は毎日8時と18時に更新します。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

ヴェクセルバルクの子 ―― 取り替えられた令嬢は怯まず ――

龍槍 椀 
ファンタジー
エルデ=ニルール=リッチェルは、リッチェル侯爵家の中で強い疎外感を常に抱いていた。 その理由は自分の容姿が一族の者達とかけ離れている『色』をしている事から。 確かに侯爵夫人が産んだと、そう皆は云うが、見た目が『それは違う』と、云っている様な物だった。 家族の者達は腫れ物に触るようにしか関わっては来ず、女児を望んだはずの侯爵は、娘との関りを絶つ始末。 侯爵家に於いて居場所の無かったエルデ。 そんなエルデの前に「妖精」が顕現する。 妖精の悪戯により、他家の令嬢と入れ替えられたとの言葉。 自身が感じていた強い違和感の元が白日の下に晒される。  混乱する侯爵家の面々。 沈黙を守るエルデ。 しかし、エルデが黙っていたのは、彼女の脳裏に浮かぶ 「記憶の泡沫」が、蘇って来たからだった。 この世界の真実を物語る、「記憶の泡沫」。  そして、彼女は決断する。 『柵』と『義務』と『黙示』に、縛り付けられた、一人の女の子が何を厭い、想い、感じ、そして、何を為したか。 この決断が、世界の『意思』が望んだ世界に何をもたらすのか。 エルデの望んだ、『たった一つの事』が、叶うのか? 世界の『意思』と妖精達は、エルデの決断に至る理由を知らない。 だからこそ、予定調和が変質してゆく。 世界の『意思』が、予測すら付かぬ未来へと、世界は押し流されて行く。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

月華後宮伝

織部ソマリ
キャラ文芸
【10月中旬】5巻発売です!どうぞよろしくー! ◆神託により後宮に入ることになった『跳ねっ返りの薬草姫』と呼ばれている凛花。冷徹で女嫌いとの噂がある皇帝・紫曄の妃となるのは気が進まないが、ある目的のために月華宮へ行くと心に決めていた。凛花の秘めた目的とは、皇帝の寵を得ることではなく『虎に変化してしまう』という特殊すぎる体質の秘密を解き明かすこと! だが後宮入り早々、凛花は紫曄に秘密を知られてしまう。しかし同じく秘密を抱えている紫曄は、凛花に「抱き枕になれ」と予想外なことを言い出して――? ◆第14回恋愛小説大賞【中華後宮ラブ賞】受賞。ありがとうございます! ◆旧題:月華宮の虎猫の妃は眠れぬ皇帝の膝の上 ~不本意ながらモフモフ抱き枕を拝命いたします~

花ひらく妃たち

蒼真まこ
ファンタジー
たった一夜の出来事が、春蘭の人生を大きく変えてしまった──。 亮国の後宮で宮女として働く春蘭は、故郷に将来を誓った恋人がいた。しかし春蘭はある日、皇帝陛下に見初められてしまう。皇帝の命令には何人も逆らうことはできない。泣く泣く皇帝の妃のひとりになった春蘭であったが、数々の苦難が彼女を待ちうけていた。 「私たち女はね、置かれた場所で咲くしかないの。咲きほこるか、枯れ落ちるは貴女次第よ。朽ちていくのをただ待つだけの人生でいいの?」  皇后の忠告に、春蘭の才能が開花していく。 様々な思惑が絡み合う、きらびやかな後宮で花として生きた女の人生を短編で描く中華後宮物語。 一万字以下の短編です。

処理中です...