後宮にて、あなたを想う

じじ

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97 皇帝の問い

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「それで薬膳茶会はどうだった?うまく行ったのか」

なんでもないことのように聞きながら、その奥に心配する声音を敏感に感じ取った蔡怜は思わず微笑む。

「はい、ありがとうございます。ご心配頂かずとも皆様とても素晴らしい方々でございました。」

蔡怜の言葉に皇帝は苦笑し続けた。

「あなたは私から心配されるのが嫌かもしれないが、それくらい許してくれ。そうでなくてもあなたには嫌な役目を押し付けている自覚があるんだ。」
「私が陛下のお役に立てるのであれば何よりでございます。」
「だが…」

食い下がろうとした皇帝に蔡怜はにっこり微笑んで答えた。

「陛下。私の心配頂くよりご優先すべきは御身のご振舞いかと」
「どう言う意味だ」

不思議そう首を傾げた皇帝に蔡怜はいたずらっぽい笑み浮かべて続けた。

「皆様、陛下からの訪がない旨嘆いておられましたよ。」
「だが今の状態で私が訪れることを怖がる妃もいるだろう。ただでさえ、あまり優しいとは言えぬ方法で後宮に召し上げた娘たちだ。余計な恐怖は与えたくないのだが」
「お優しいですね。ですが、美しい陛下の訪れが昼であれば嫌がるものもおりませんでしょう」

暗に明るいうちに顔だけでも見せに行け、と蔡怜から言われた皇帝は一瞬絶句する。

「私のところに来ていただけるのももちろん嬉しゅうございますが、その幸せは私だけが独り占めしているようで、他の妃方が嘆かれるのを見て心が痛みました」
「だが…」
「私があちら側であれば、どれほど陛下のお出でを待ち侘びるだろうか、と。」

切なげに目を伏せて蔡怜が言うと、皇帝は今度こそ完全に言葉を無くして黙り込んだ。

「それで、本来ならお一人ずつに顔をお見せになられるのがよろしいかとは存じますが、お忙しい陛下ですもの。なかなか毎日一人ずつとは参りませんよね」
「あ、ああ。中途半端に顔を出すくらいなら、あなたと貴妃だけと思っていたのだが…」

あまりに素直で正直な言葉に蔡怜は愉快になる。蔡怜には謎解き、黄貴妃には情報収集と用途を使い分けているのだろう、とあたりをつける。

「貴妃様が園遊会を催しましょう、とお誘い下さったのです。もちろん主賓に陛下をお呼びして」
「なに」
「今のままでは、私と黄貴妃様だけしか実質陛下の訪を受けておりません。」
「だが、あなた達ふたりは正妃と側妃筆頭だ。私の寵を受けていても妬まれる立場ではないだろう」

皇帝に問われた蔡怜はばつが悪そうに答えた。
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