後宮にて、あなたを想う

じじ

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91 蔡怜の動揺

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蔡怜は驚いて思わず黄昭を見つめた。黄昭は蔡怜の視線を受けると妖艶に微笑んだ。

「黄昭様、今のはどのような意味でございましょう」

恐る恐る尋ねると、黄昭は笑みを深くした。

「あら。とくに言葉以上の意味はなかったのですが…」

明らかにからかいを含んでいる様子に、蔡怜は思わず本音を吐露した。

「黄昭様、そのように仰らないでください。私が陛下と話すことが目障りであれば控えるようにいたします。本来、皇后位は黄昭様にこそ相応しいこと、よくわかっておりますので。後宮の謎さえ解けてしまえば陛下も私に関心を無くされるでしょうし。ただ、園遊会はともかく、問題が解決するまでは陛下とお話する機会があることをお許しいただきたいのです。」

言いながら蔡怜は、胸に湧き上がってきた感情に自分自身驚いた。
実家の家格さえ高ければ、皇后であることに対してこれほど周りの側妃達に負い目を感じることはなかっただろう。皇帝を慕う気持ちを黄昭に悟られたくないと思うこともなかっただろう、と。

「え」

蔡怜の言葉を聞いた黄昭は、きょとんとしている。一拍置いて我に帰った黄昭は目に涙を浮かべながら笑った。先ほどの妖艶な笑みではなく、心底面白いと言った様子で。

「蔡怜様。申し訳ございません。とりあえず私の話を聞いてください」

お腹を抱えて笑っていた黄昭だが、なんとか息を整えると、蔡怜に改めて向かいあって話し出した。

「まず、私は蔡怜様が皇后であられ、私が貴妃であることにかけらも不満はございません。それは後宮での問題が解決しようがしなかろうが同じです。
そして園遊会で話すな、と言ったことですが先ほど申し上げたとおり以上の意味はございません。他の妃達の目につく場所でなければどれだけ仲良くなさっても良いと思いますよ。
それから…蔡怜様が陛下のことをお慕いしていること、存じております」

最後は流石に少し言いにくそうに黄昭は蔡怜に伝えた。絶句している蔡怜をみて、黄昭は取りなすように付け加える。

「政略結婚の多い貴族同士の婚姻で、ましてや後宮のような場所で互いに想い合える方とお出会いになられるなんて羨ましい限りです。私は陛下の貴妃でございますが、それ以上に蔡怜様のご友人ありたいと願っております。蔡怜様が陛下と共におられることが幸せなのであれば、私もぜひお役に立ちたく思います」
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