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89 薬膳茶会5
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花昭儀が改めて周りの妃達に謝罪をしたところで、黄貴妃が場の雰囲気を変えるように笑いながら話し出した。
「本当に愚痴の一つも言いたくなりますよね、陛下には。どうでしょう、蔡皇后様。私達で陛下をお招きして内輪の園遊会でも致しませんか。」
突然の申し出に驚いた蔡怜だが、黄貴妃の目に何かしらの考えがあることを見てとり、たおやかに頷いた。
「ええ、良いかと思います。」
「薬膳茶会は蔡皇后様がお招き下さいましたので、差し支えなければ園遊会のご準備は貴妃位である私が行いたいのですが、いかがでしょう」
蔡怜に一応伺う形を取りながらも、自分が取り仕切るつもりの黄貴妃の様子を不思議に思いながらも、蔡怜は頷いた。
「ええ。よろしくお願いします」
「それでは、蔡皇后様は陛下に園遊会の件をお伝えしていただけますか」
「ええ、分かりました。」
周りの妃達も、皇帝に出会えるかもしれないとあって場の雰囲気は一気に華やいだものになった。
「黄昭様、少しよろしいですか」
黄貴妃の提案から程なくしてお開きとなった薬膳茶会の後、蔡怜は周りに誰もいないのを確かめて黄貴妃を呼び止めた。
「蔡怜様。本日はありがとうございました。とても楽しかったですわ」
「それはよかったです。あのそれでお聞きしたいことがありまして」
「園遊会のことでしょうか」
「はい。黄貴妃様が何やら思惑がおありのようでしたので…」
「あら、蔡怜様。思惑だなんて人聞きの悪い。」
いたずらっぽい笑みを浮かべて蔡怜をからかった後、真剣な表情になり黄貴妃は続けた。
「ですが、仰る通り単純に園遊会を楽しみたいわけではございません。今日のあの場、蔡怜様はどのようにお感じになられましたか」
問われて蔡怜は考えた。
「強いて申し上げるなら、やはり後宮は特殊な場所だな、と。」
「なぜ、そのように思われましたか」
「姜修儀様がお渡りのない旨仰られた時に他の側妃方も安堵されたからです」
「ええ。普通は他人の夫婦仲など気にしないものです。もちろん話題にすることはあるでしょうが、隣の夫婦仲が自分達夫婦に影響を与えることはないでしょう。ですが一人の男性を取り合う後宮ではそう言うわけにも参りません。今日の茅賢妃の発言はいま側妃達が抱いている感情そのものといえるでしょう」
「ですが、私も含めて皆さん陛下からのお渡りがないのは同じではないでしょうか」
不思議そうに首を傾げた蔡怜を見て、黄貴妃は答えた。
「確かに渡りがないのは同じですが、蔡怜様や私は個人的に陛下にお会いする機会がございます。」
そう言われて蔡怜は自分の鈍さにようやく気付いた。
「本当に愚痴の一つも言いたくなりますよね、陛下には。どうでしょう、蔡皇后様。私達で陛下をお招きして内輪の園遊会でも致しませんか。」
突然の申し出に驚いた蔡怜だが、黄貴妃の目に何かしらの考えがあることを見てとり、たおやかに頷いた。
「ええ、良いかと思います。」
「薬膳茶会は蔡皇后様がお招き下さいましたので、差し支えなければ園遊会のご準備は貴妃位である私が行いたいのですが、いかがでしょう」
蔡怜に一応伺う形を取りながらも、自分が取り仕切るつもりの黄貴妃の様子を不思議に思いながらも、蔡怜は頷いた。
「ええ。よろしくお願いします」
「それでは、蔡皇后様は陛下に園遊会の件をお伝えしていただけますか」
「ええ、分かりました。」
周りの妃達も、皇帝に出会えるかもしれないとあって場の雰囲気は一気に華やいだものになった。
「黄昭様、少しよろしいですか」
黄貴妃の提案から程なくしてお開きとなった薬膳茶会の後、蔡怜は周りに誰もいないのを確かめて黄貴妃を呼び止めた。
「蔡怜様。本日はありがとうございました。とても楽しかったですわ」
「それはよかったです。あのそれでお聞きしたいことがありまして」
「園遊会のことでしょうか」
「はい。黄貴妃様が何やら思惑がおありのようでしたので…」
「あら、蔡怜様。思惑だなんて人聞きの悪い。」
いたずらっぽい笑みを浮かべて蔡怜をからかった後、真剣な表情になり黄貴妃は続けた。
「ですが、仰る通り単純に園遊会を楽しみたいわけではございません。今日のあの場、蔡怜様はどのようにお感じになられましたか」
問われて蔡怜は考えた。
「強いて申し上げるなら、やはり後宮は特殊な場所だな、と。」
「なぜ、そのように思われましたか」
「姜修儀様がお渡りのない旨仰られた時に他の側妃方も安堵されたからです」
「ええ。普通は他人の夫婦仲など気にしないものです。もちろん話題にすることはあるでしょうが、隣の夫婦仲が自分達夫婦に影響を与えることはないでしょう。ですが一人の男性を取り合う後宮ではそう言うわけにも参りません。今日の茅賢妃の発言はいま側妃達が抱いている感情そのものといえるでしょう」
「ですが、私も含めて皆さん陛下からのお渡りがないのは同じではないでしょうか」
不思議そうに首を傾げた蔡怜を見て、黄貴妃は答えた。
「確かに渡りがないのは同じですが、蔡怜様や私は個人的に陛下にお会いする機会がございます。」
そう言われて蔡怜は自分の鈍さにようやく気付いた。
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