後宮にて、あなたを想う

じじ

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71 侍女の代弁

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「せっかく蔡怜様を訪われたのに、いきなり他の男性と二人で会いたい、などと言われたからではございませんか?」
「でも、陛下から頼まれていることの一環としてなのだけれど…」
「それは当然です!理由もなく陛下以外の男性と二人で会いたいなどと仰れば問題でございます!」
「分かってるわよ。というか、奏輝。それほど怒らなくても…」
「いえ、怒っているわけでは…申し訳ございません。ただ、陛下が不憫で」
「不憫?」

奏輝は蔡怜の顔をじっと見つめた後、一度目を瞑ってから答えた。

「陛下は蔡怜様のことを大事に思われていますよ。きっと昨日も本当に顔を見に来られただけだったのでしょう。そしてお二人でたわいのないお話でもなさりたかったのでは?そんな癒しの時間のつもりだったのに、他の男性と会うための頼み事をされるなど…陛下が不憫です」

少しは響いただろうか、と奏輝は祈るような気持ちで蔡怜を見た。
しかし当の蔡怜は苦笑しながら答えた。

「まあ、お疲れのところ調整を頼んでしまったしね。私も陛下が私や他の側妃を大事に思ってくださってることは分かってるわ。ありがとう奏輝」
「…いえ」

奏輝は肩を落としそうになりがら、辛うじて返事だけはした。

「ところで蔡怜様、本日ご来訪予定の管修媛かんしゅうえん様なのですが、使いのものが先ほど参りまして、ご体調が芳しくないそうなのです。」
「まあ」
「いかがしますか?日を改められますか」
「いえ、貴妃様もお呼びしてるし、とりあえず二人で会うわ。今日のことは相談事ではなく、夏燕さんと勝手に先に会ったことを謝りたかっただけだし」
「分かりました。」

昼食をとって一息ついていると、黄貴妃がやってきた。

「蔡怜様、失礼いたします」
黄昭こうしょう様、どうぞお入りください」
「蔡怜様からお声がけいただいて嬉しいですわ。あら、李嬌りきょう様もご一緒だと伺ったのですが…」

室内を見渡して不思議そうに首を傾げた黄貴妃に蔡怜は告げた。

「ご体調がお悪いようです。先ほど奏輝が使いの者から聞いたようです。なんでも風邪気味だとか。」
「そうでしたか。早く良くなられるといいですわね。」
「ええ本当に。それで今日お呼びさせていただいた理由なのですが、前回のとき鸚鵡の件についてはお二人とともに侍女の話を聞く約束だったのに、私が先に一人で聞いてしまいましたので…申し訳ありません。」
「あら、無事詳細を知ってる侍女の方が見つかったのですね。良かったです」

からりとした様子で黄貴妃は答えた。
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