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67 蔡怜の驚き
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「そんな、まさか」
あまりの驚きに蔡怜が言葉を無くしていると、蔡怜の様子を不審に思った夏燕が蔡怜の方を見た。
「皇后様、何か私失礼なことを申し上げてしまったでしょうか」
尋常ならざる蔡怜の様子に気づいた夏燕がおろおろとした様子で聞いてくる。
やっと心を開きかけてくれている彼女を怖がらせはいけない。そう思い、蔡怜は一つ深呼吸した。
「ごめんなさいね。驚いてしまって…」
「いえ。」
「その弦陽様なのだけれど、律佳様の現在のご夫君なのよ」
「…左様でございましたか。それであれば確かに皇后様が驚かれるのもご無理ありませんね」
「ええ。夏燕さん、今日はありがとう。おかげで少しだけ前の側妃様方のことが分かった気がするわ」
「いえ、私の方こそ皇后様に気にかけていただきありがとうございました。湖月様の件で、もし何かお尋ねになりたいことがございましたら、いつでもお呼びつけください」
その言葉に微笑みながら蔡怜は答えた。
「ありがとう。でも、あんまり呼んでしまったら楊充儀様に怒られてしまうわ」
その言葉を聞いた夏燕は微笑みながら言った。
「いえ、楊充儀様からも、そう言われているのです」
言われた意味がわからず蔡怜が小首を傾げると、夏燕は続けて言った。
「皇后様からお呼びがあれば何より優先してお応えしなさい、と。失礼ながら皇后様のご気分を害さないためか、と思っておりましたが邪推だったようでございます。」
「まあ、私の機嫌をとっても、ねぇ」
「いえ、充儀様は皇后様のお役に立ちたいと思われたのだと思います。ですので、いつでもお呼びいただいて問題ございません。」
「そうなのね。充儀様にお礼をお伝えしてくれるかしら。それにあなたも。」
「ありがとうございます」
丁寧に一礼して夏燕は去って行った。
「水月様と律佳様は、恋敵、か」
腰掛けたままぼんやり呟いた蔡怜に、間髪入れず答えたのは奏輝だった。
「そうですね」
「へ。私、声に出していたかしら。」
「はい。はっきり仰っいました」
「ごめんなさい。でもあまりに驚いてしまって」
「いえ。ですが、そうであれば、律佳様に辛く当たられた水月様のお気持ちは分からなくもありませんね。」
「そうね。ご実家におられた時は片想いの相手の想い人。後宮では陛下の寵愛を奪い合う相手。憎くないはずがないわよね」
「鸚鵡が話す弦陽様のお名前、陛下にも聞かれたくなかったでしょうが、きっと律佳様にも聞かれたくなかったと思いますよ。律佳様が弦陽様を好いてらっしゃったことを、水月様がご存知だったか分かりかねますが…少なくとも弦陽様の瞳に誰が映っていたかはご存知だったのではないでしょうか」
「あら、どうして?」
不思議そうに尋ねた蔡怜に、苦笑いして奏輝は答えた。
あまりの驚きに蔡怜が言葉を無くしていると、蔡怜の様子を不審に思った夏燕が蔡怜の方を見た。
「皇后様、何か私失礼なことを申し上げてしまったでしょうか」
尋常ならざる蔡怜の様子に気づいた夏燕がおろおろとした様子で聞いてくる。
やっと心を開きかけてくれている彼女を怖がらせはいけない。そう思い、蔡怜は一つ深呼吸した。
「ごめんなさいね。驚いてしまって…」
「いえ。」
「その弦陽様なのだけれど、律佳様の現在のご夫君なのよ」
「…左様でございましたか。それであれば確かに皇后様が驚かれるのもご無理ありませんね」
「ええ。夏燕さん、今日はありがとう。おかげで少しだけ前の側妃様方のことが分かった気がするわ」
「いえ、私の方こそ皇后様に気にかけていただきありがとうございました。湖月様の件で、もし何かお尋ねになりたいことがございましたら、いつでもお呼びつけください」
その言葉に微笑みながら蔡怜は答えた。
「ありがとう。でも、あんまり呼んでしまったら楊充儀様に怒られてしまうわ」
その言葉を聞いた夏燕は微笑みながら言った。
「いえ、楊充儀様からも、そう言われているのです」
言われた意味がわからず蔡怜が小首を傾げると、夏燕は続けて言った。
「皇后様からお呼びがあれば何より優先してお応えしなさい、と。失礼ながら皇后様のご気分を害さないためか、と思っておりましたが邪推だったようでございます。」
「まあ、私の機嫌をとっても、ねぇ」
「いえ、充儀様は皇后様のお役に立ちたいと思われたのだと思います。ですので、いつでもお呼びいただいて問題ございません。」
「そうなのね。充儀様にお礼をお伝えしてくれるかしら。それにあなたも。」
「ありがとうございます」
丁寧に一礼して夏燕は去って行った。
「水月様と律佳様は、恋敵、か」
腰掛けたままぼんやり呟いた蔡怜に、間髪入れず答えたのは奏輝だった。
「そうですね」
「へ。私、声に出していたかしら。」
「はい。はっきり仰っいました」
「ごめんなさい。でもあまりに驚いてしまって」
「いえ。ですが、そうであれば、律佳様に辛く当たられた水月様のお気持ちは分からなくもありませんね。」
「そうね。ご実家におられた時は片想いの相手の想い人。後宮では陛下の寵愛を奪い合う相手。憎くないはずがないわよね」
「鸚鵡が話す弦陽様のお名前、陛下にも聞かれたくなかったでしょうが、きっと律佳様にも聞かれたくなかったと思いますよ。律佳様が弦陽様を好いてらっしゃったことを、水月様がご存知だったか分かりかねますが…少なくとも弦陽様の瞳に誰が映っていたかはご存知だったのではないでしょうか」
「あら、どうして?」
不思議そうに尋ねた蔡怜に、苦笑いして奏輝は答えた。
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