後宮にて、あなたを想う

じじ

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48 王宮からの帰り道

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あっさりと認めた皇帝に、蔡怜は真面目な顔をして頷く。

「さすがに気づかない方がおかしいかと。」
「と、いうと?」
「殿下は女性の扱いに長けた方だとお伺いしました。」
「そうだな」
「にも関わらず、私の友人からのことづてとはいえ、内容は私に恥をかかせるものでした」
「それはすまない。知っていたら席を外したのだが」
「いえ、笑い話で済む内容ですから、そこは気にしていません。でも不思議に思いました。桂騎殿下はなぜ私を呼び出してまで伝えたのだろう、と。あの伝言の内容ならば陛下を通して言っていただくなり、手紙でいただくなりで充分事足ります。なんならこれから先に行事で顔を合わせることもあるでしょう。急ぎの要件でないことは明白ですので、その時でも充分なはずです。」
「なるほど。で、あなたはどう考えた?」
「直接出会って私が皇后に相応しいかどうか見極めるためではないか、と」

ちょうど部屋に着いたのもあって、蔡怜はにっこり微笑みながら皇帝をお茶に誘った。

「陛下、もしよろしければお茶を召し上がっていかれませんか」
「あなたからのお誘いとは珍しいな。しかし…」
「鮮岳様とお話される時間を私に少しいただけませんか。お茶一杯分でございます。」

さすがにギョッとした顔をした皇帝を見て蔡怜は再び微笑んだ。

「…どうして、桂騎ではなく鮮岳だと?」
「私の考え違いでなければ、鮮岳様は桂騎殿下をだしにされたのではありませんか。もちろん陛下と桂騎殿下はご承知の上でのことだと存じますが。」
「その通りだが…」
「鮮岳様だと思いましたのは、桂騎殿下には陛下に嫁ぐ前に、あのような形ではございますが、お会いしたことがあったからです。
殿下と知っての対応であれば無礼を責められもするでしょうが、私は殿下が陛下の弟君とは知りませんでした。
そして数日後には陛下に嫁ぐことも決まっておりました。見知らぬ男性を家に招くと言う要らぬ誤解を避けた私の対応を、桂騎殿下が咎められるとは思えません。」
「そうだな」
「それに陛下は最初にお会いした時、仰ってました。弟は女人の扱いに慣れており、よく言い寄られている。しかし、殿下を助けた私は殿下に興味を示さなかった、と。」
「…」
「おそらく好意的に伝えてくださったのだと思います。見目の良い男性が現れても新たに皇后となる女は、陛下を裏切るようなことはしない、と。」
「ああ」
「もし、そうであるならば殿下は私に会うことに固執されるとは思えません。それなのに今回呼び出されたということは、お会いしたもう一人の人物である鮮岳様が私の人となりを気にされたのでは、と思いました。」


 
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