後宮にて、あなたを想う

じじ

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47 蔡怜と弟殿下5

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「それを言われると耳が痛いな。弁解の余地もない」

穏やかに微苦笑しながら言う皇帝の様子に蔡怜は胸が痛くなった。

「桂騎様、お言葉が過ぎるかと。陛下とて好んでそのような状況にされていたわけではございませんでしょうに」

言われるがままの皇帝を見て蔡怜は思わず桂騎に言い返した。それに対して答えたのは、皇帝自身だった。

「あなたに気を遣わせてしまってすまない。でも、桂騎の言うことも最もなんだ。私がもう少し後宮で上手く立ち回ればよかったのだが…即位したばかりで執務に追われていたのを言い訳に、律佳に苦労をかけてしまった。後宮で起こる争いごとは妃間の問題だ、と逃げてしまった私にも非はある」

自らの振る舞いを悔いている様子の皇帝に、そう言われてしまえば、蔡怜とて引き下がるしかなかった。

「事情を知らぬ身でありながら、余計な口出しをしてしまいました。申し訳ございません」

蔡怜が一言謝ると、桂騎が神妙な表情で詫びてきた。

「義姉上。本日は私の都合でお呼び立てしておきながら、最後に不快な思いをさせてしまいました。申し訳ない。兄上。義姉上のおっしゃる通りです。言葉が過ぎました。申し訳ありません。」

それに対して蔡怜は困ったように微笑み、皇帝は鷹揚に頷いた。
気まずい空気を払拭するように、殊更明るい声で、桂騎は続けた。

「義姉上に直接お礼も言えたし、私はそろそろ失礼させていただきたいと思います。義姉上、あまり役に立たないかもしれないけれど、兄上との間で困ったことがあったらいつでも相談に乗るよ」

気軽な口調で蔡怜にそれだけ言って、部屋を出た桂騎に、皇帝は溜め息をついた。

「まったく、あいつは。不快な思いをさせてしまってすまない。今日はわざわざ王宮まで足を運ばせてしまったな。詫びといってはなんだが、あなたの部屋まで私が送ろう。」

いえ大丈夫です、と断る間もなく手を取られた蔡怜は、仕方なく皇帝と一緒に歩き出した。黙ったまま歩くのも居た堪れなくて思わず皇帝に話しかけた。

「陛下。桂騎様はなぜ私をお呼びになられたのでしょう。」
「礼が言いたかったからだろう。あなたの知人から言伝も預かっていた」
「ええ。ですがそれだけではございませんよね。」

そう言った蔡怜をまじまじと見た皇帝はふっ、と笑って言った。

「なんだ気づいていたのか」
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