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45 蔡怜と弟殿下3
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えっ、と言いかけて、蔡怜は慌てて声を飲み込んだ。
しかし、驚愕した表情に気づいた桂騎は面白がるような視線を蔡怜に向けて続けた。
「もしや義姉上は興味があるのかな」
「興味といいますか…」
「桂騎、からかってないで話してやれ」
どう答えたものか、と戸惑った蔡怜を見て皇帝が助け船を出した。その様子を少々意外そうな顔で見ながら、桂騎は続けた。
「兄上も柳栄意外の妃殿に気を遣うとことができたんですね」
「…気なら全ての妃に遣ってる」
「まぁ、それはそうなんでしょうけれど。そういう意味ではないというか」
もごもごといいながら、桂騎は改めて蔡怜の方に向き直った。
「からかうつもりはなかったんだけれど、あまりに素直な反応でつい、いたずら心が芽生えてしまったよ」
「はあ…」
悪気のない言い草に、若干呆れながら蔡怜は相槌を打った。
「それで、弦陽と律佳殿なんだけれど、陳家で顔を合わせていた時分からお互いを思っていたらしい」
「それは…」
この場で話していいのだろうか、と伺うように皇帝の方に視線を向けた蔡怜に気づいた皇帝が、鷹揚に頷きながら口を挟んだ。
「私も知っている話だ。気にしなくて良い。」
「私は気にしてませんよ」
軽口で返す桂騎に、冷たい口調で、お前には言っていない、と皇帝が返すのを見て、蔡怜はようやく安心した。
「では、陳家にいらっしゃった時分からお二人は許嫁のような間柄だったのでしょうか」
素朴な疑問を尋ねた蔡怜に、しかし皇帝は苦笑しながら答えた。
「あなたに私がどう見えているか分からないが、婚姻の約束をしている相手がいると分かっている者を、望んで後宮に迎えるほど人で無しではない。」
報奨金と引き換えに、貴族の娘に入宮を促すことは人で無しにはあたらないのか、と一瞬思った蔡怜に、皇帝は困ったように笑いながら続けた。
「まあ、あなた達にとったら、報奨金で娘を差し出すようにさせた私は人で無しかもしれないが。」
「いえ、そのようなことは」
思ったことを言い当てられて、慌てて蔡怜は皇帝の言葉を否定した。
その様子を見た桂騎はくっくっと笑いながら口を挟んだ。
「表情に出てるよ。ま、出なくてもふつうはそう思うよね」
「すみません…」
しょんぼりしながら謝った蔡怜に、皇帝はからっとした口調で続けた。
「そう思うのも当然だ。気にする必要はない。」
「ありがとうございます。」
二人の様子を呆れたような表情で見ながら、桂騎は続けた。
「随分と仲睦まじいことで。それで、続けていいかな」
「ええ。お願いします」
「陳家で顔を合わせていた時には、お互い相手の好意には気づかなかったらしい。だから、兄上に嫁ぐことが決まっても、二人の間に引き裂かれた恋人同士のような感情は湧かなかった。あくまで、初恋の相手、のような淡い思いだったからね。でも、弦陽にしたら一度は気にかけた相手だ。その娘がかつて陳家で、彼女をいじめていた姉妹のいる後宮に入る、というのは複雑だった。表立って彼女を心配する義理も道理も自分にはない。でも、自分がひっそりと愛した女性にせめて笑って生活を送って欲しい、という思いが私へのお願いにつながったわけだ」
純愛だよね~、と桂騎は続けた。
しかし、驚愕した表情に気づいた桂騎は面白がるような視線を蔡怜に向けて続けた。
「もしや義姉上は興味があるのかな」
「興味といいますか…」
「桂騎、からかってないで話してやれ」
どう答えたものか、と戸惑った蔡怜を見て皇帝が助け船を出した。その様子を少々意外そうな顔で見ながら、桂騎は続けた。
「兄上も柳栄意外の妃殿に気を遣うとことができたんですね」
「…気なら全ての妃に遣ってる」
「まぁ、それはそうなんでしょうけれど。そういう意味ではないというか」
もごもごといいながら、桂騎は改めて蔡怜の方に向き直った。
「からかうつもりはなかったんだけれど、あまりに素直な反応でつい、いたずら心が芽生えてしまったよ」
「はあ…」
悪気のない言い草に、若干呆れながら蔡怜は相槌を打った。
「それで、弦陽と律佳殿なんだけれど、陳家で顔を合わせていた時分からお互いを思っていたらしい」
「それは…」
この場で話していいのだろうか、と伺うように皇帝の方に視線を向けた蔡怜に気づいた皇帝が、鷹揚に頷きながら口を挟んだ。
「私も知っている話だ。気にしなくて良い。」
「私は気にしてませんよ」
軽口で返す桂騎に、冷たい口調で、お前には言っていない、と皇帝が返すのを見て、蔡怜はようやく安心した。
「では、陳家にいらっしゃった時分からお二人は許嫁のような間柄だったのでしょうか」
素朴な疑問を尋ねた蔡怜に、しかし皇帝は苦笑しながら答えた。
「あなたに私がどう見えているか分からないが、婚姻の約束をしている相手がいると分かっている者を、望んで後宮に迎えるほど人で無しではない。」
報奨金と引き換えに、貴族の娘に入宮を促すことは人で無しにはあたらないのか、と一瞬思った蔡怜に、皇帝は困ったように笑いながら続けた。
「まあ、あなた達にとったら、報奨金で娘を差し出すようにさせた私は人で無しかもしれないが。」
「いえ、そのようなことは」
思ったことを言い当てられて、慌てて蔡怜は皇帝の言葉を否定した。
その様子を見た桂騎はくっくっと笑いながら口を挟んだ。
「表情に出てるよ。ま、出なくてもふつうはそう思うよね」
「すみません…」
しょんぼりしながら謝った蔡怜に、皇帝はからっとした口調で続けた。
「そう思うのも当然だ。気にする必要はない。」
「ありがとうございます。」
二人の様子を呆れたような表情で見ながら、桂騎は続けた。
「随分と仲睦まじいことで。それで、続けていいかな」
「ええ。お願いします」
「陳家で顔を合わせていた時には、お互い相手の好意には気づかなかったらしい。だから、兄上に嫁ぐことが決まっても、二人の間に引き裂かれた恋人同士のような感情は湧かなかった。あくまで、初恋の相手、のような淡い思いだったからね。でも、弦陽にしたら一度は気にかけた相手だ。その娘がかつて陳家で、彼女をいじめていた姉妹のいる後宮に入る、というのは複雑だった。表立って彼女を心配する義理も道理も自分にはない。でも、自分がひっそりと愛した女性にせめて笑って生活を送って欲しい、という思いが私へのお願いにつながったわけだ」
純愛だよね~、と桂騎は続けた。
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