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39 蔡怜と侍女3
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「お二人がご一緒くださるのであれば心強いです。それでは奏輝に調整させますので、日時が決まりましたらお伝えさせていただきますね」
「ええ、お待ちしております」
そろそろお開きにしようと蔡怜が思うと同時に、李嬌がすっと席を立ち、優雅な動作で、お辞儀しながら述べた。
「蔡怜様、本日は楽しい一時をありがとうございました。三人で、お話ができて大変光栄でございました。あまりの居心地の良さについ長居をしてしまったようです。どうぞご無礼をお許しください」
「まあ、本当ですわね。蔡怜様、長々とお時間ちょうだいしてしまって申し訳ございません。それでは私達はそろそろ失礼させていただきたく存じます。」
「こちらこそ。ぜひ、またいらしてくださいね」
蔡怜の思いを汲み取り、退室した二人を見送りながら、やはり聡い二人だ、と改めて蔡怜は感じた。
「蔡怜様、さきほど陛下より使者がございました。」
二人の良き友に恵まれた、と感慨に耽っていた蔡怜に水を差すかのごとく、奏輝がそう告げた。
「その話、今聞かないとだめかしら」
皇帝の弟との対談の日時の報告に違いないと察した蔡怜は、顔をしかめながら奏輝に言った。
「皇帝陛下の弟君との対談の日時を知らせるものでした。当日の朝にお伝えした方がよろしければ、そのようにさせていただきますが。今お聞きになって、心の準備をなさった方がよろしいのでは」
からかうような視線を蔡怜に向けながらも、真面目な口調で諭すように言う奏輝を見て、蔡怜は降参した。
「今、聞きます」
「急ですが、明日の午後からお会いしたい、と」
「明日、ですか」
「皆様、よほど蔡怜様と早くお会いになりたいのですね。入宮してからの短期間でこれほど頻繁に面会や対談をなさるお妃様は、蔡怜様が初めてです」
「からかわれてるのかしら」
「いえ、仕事熱心だと申し上げております。それで、明日は特にご予定がございませんので、承諾しておきましたが、問題ございませんでしたか」
忙しい原因の一つは、この人使いの荒い侍女のせいでは、と一瞬思った蔡怜だが、皇帝の使者に理由もなく否と言えるはずもないと考え直し頷いた。
「ありがとう」
「蔡怜様、一つ申し上げてよろしいでしょうか」
「何かしら」
「明後日は先にご予定を入れておかれることをおすすめいたします」
「…私、顔に出てたかしら」
「申し上げにくいですが」
「明後日は、薬膳茶会の準備に一日使います。」
「承知しました。それでは、面会や対談のご依頼があってもお断りいたします」
やはり、よくできた侍女だ、蔡怜は思った。
「ええ、お待ちしております」
そろそろお開きにしようと蔡怜が思うと同時に、李嬌がすっと席を立ち、優雅な動作で、お辞儀しながら述べた。
「蔡怜様、本日は楽しい一時をありがとうございました。三人で、お話ができて大変光栄でございました。あまりの居心地の良さについ長居をしてしまったようです。どうぞご無礼をお許しください」
「まあ、本当ですわね。蔡怜様、長々とお時間ちょうだいしてしまって申し訳ございません。それでは私達はそろそろ失礼させていただきたく存じます。」
「こちらこそ。ぜひ、またいらしてくださいね」
蔡怜の思いを汲み取り、退室した二人を見送りながら、やはり聡い二人だ、と改めて蔡怜は感じた。
「蔡怜様、さきほど陛下より使者がございました。」
二人の良き友に恵まれた、と感慨に耽っていた蔡怜に水を差すかのごとく、奏輝がそう告げた。
「その話、今聞かないとだめかしら」
皇帝の弟との対談の日時の報告に違いないと察した蔡怜は、顔をしかめながら奏輝に言った。
「皇帝陛下の弟君との対談の日時を知らせるものでした。当日の朝にお伝えした方がよろしければ、そのようにさせていただきますが。今お聞きになって、心の準備をなさった方がよろしいのでは」
からかうような視線を蔡怜に向けながらも、真面目な口調で諭すように言う奏輝を見て、蔡怜は降参した。
「今、聞きます」
「急ですが、明日の午後からお会いしたい、と」
「明日、ですか」
「皆様、よほど蔡怜様と早くお会いになりたいのですね。入宮してからの短期間でこれほど頻繁に面会や対談をなさるお妃様は、蔡怜様が初めてです」
「からかわれてるのかしら」
「いえ、仕事熱心だと申し上げております。それで、明日は特にご予定がございませんので、承諾しておきましたが、問題ございませんでしたか」
忙しい原因の一つは、この人使いの荒い侍女のせいでは、と一瞬思った蔡怜だが、皇帝の使者に理由もなく否と言えるはずもないと考え直し頷いた。
「ありがとう」
「蔡怜様、一つ申し上げてよろしいでしょうか」
「何かしら」
「明後日は先にご予定を入れておかれることをおすすめいたします」
「…私、顔に出てたかしら」
「申し上げにくいですが」
「明後日は、薬膳茶会の準備に一日使います。」
「承知しました。それでは、面会や対談のご依頼があってもお断りいたします」
やはり、よくできた侍女だ、蔡怜は思った。
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