後宮にて、あなたを想う

じじ

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30 皇帝と皇后の密談5

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「さて、一通りあなたから話しも聞き終えたし、あまり長居をしてあなたに嫌われる前に失礼することにしよう。」
「私こそ、陛下にお辛いことを思い出させてしまって申し訳ございません。お引き止めしてしまいました。」
「いや。明日黄貴妃達に会うと言っていたな。二人には、私が話したことと州芳から聞いたこと、どちらも話してよい。」
「よろしいのですか。」
「ああ。ある程度事情が分からなければ、動きようがないだろうしな。いらぬ手間をかけさせる必要もないだろう。ただし、無用な忠告かとは思うが、他言しないようにはあなたからも伝えておいてくれ。」
「はい。承知いたしました。」
「それと、柳栄への私の想いは、あなたの胸に止めておいてくれると助かる。」
「もちろんでございますが…」
「前皇后を姉のように慕っていたと思われるのは気恥ずかしいのだ。知っているのはあなただけで充分だ。」
「かしこまりました。」

私も知りたくなかった、と一瞬思った蔡怜だが、ここで要らぬ一言を言うと皇帝が帰るのが更に遅くなる、と思い相槌を打つに留めた。

用事も終わっただろうし、さあ早く帰れ。そう思ったことがいけなかったのだろうか。立ち上がりかけた皇帝が何かを思い出したように、座り直した。

「いかがなさいましたか。」
「そうだ。一つあなたに伝え忘れていたことがあった。」
「何でございましょう。」
「我が弟があなたに会って伝えたいことがある、と言っておったぞ。」
「まあ。どのようなご用件でございましょう。」
「それが直接言いたいと言い張ってな。私にも内容を言わないんだ。…まったくあいつはあなたを私の妃だと本当に分かってるのやら。」

そう思うなら、なんとしても私を巻き込むなよ、と思いながら蔡怜は皇帝の言葉の続きを待った。

「申し訳ないが、一度会ってやってくれるか。おおかた、前に助けてもらった際のお礼でも改めて言いたいのだろう。」

冗談はやめてほしい。あんたは仮にも皇帝で、私はその皇后だろ。実弟とはいえ、他の男と会うことを認めてどうする。兄ならしっかり断れよ。

「ですが、後宮におります私とお会いになるのは、流石に外聞が悪うございましょう。」
「そうだな。だから王宮で会ってくれて構わない。悪いが日時はこちらで決めるので、あなたには後ほど使い者に伝えさせよう。」
「…かしこまりました」

そこまでして私にお礼を言いたいのか!迷惑だ。
蔡怜のげんなりした様子を見てくっくっと面白そうに笑って皇帝は立ち上がった。

「では、そろそろ本当にお暇しよう。夜分遅くまですまなかったな。」

できれば思い出す前に帰って欲しかった、と思いながら蔡怜は頭を下げた。

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