後宮にて、あなたを想う

じじ

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29 皇帝と皇后の密談4

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「そうかもしれないな。ありがとう。あなたは聡明なところが柳栄とよく似ている。だから話しやすいのかもしれないな。あなたには失礼かもしれないが。」
「そう思っていただけるのであれば幸いにございます。」
「さて、湖月と水月についてだが、向こうの親からの強い勧めで、後宮に入ってもらうことになったんだが、美しいが気位の高い姉妹だったな。
ある時、湖月に鸚鵡おうむという鳥が実家から贈られたんだが…鸚鵡は人の言葉を真似するというので、後宮での徒然の慰めに、ということだったのだろう…何も贈られなかった水月がそれを妬んだのか、湖月が部屋を離れた隙を見計らって侍女に鳥籠を開けさせたようだ。」
「あまり姉妹仲がよろしいとは言えないようでございますね。」
「だろうな。私もそう思う。まああの二人は一時が万事そのような感じでお互い張り合ってるようであったが、私に対してはある程度の礼儀をわきまえていたしな。」
「左様でございましたか。」
「ただ、私もさすがに柳栄から続けて妃を亡くしたのはこたえた。そして、律佳だが、彼女は控えめな女人だった。入宮してきたのは一番最後だったのもあって、常に他の妃達に気を遣っていた。それでもやはり水月や湖月から嫌がらせを受けていたようだが…健在の頃は柳栄がよく庇ってやっていたようだ。」
「水月様と湖月様は律佳様に辛くあたられたのは、自分達より後から入宮したにも関わらず、陛下の寵愛を律佳様が受けておられたためでしょうか。」
「いや、こんなことを言うとあなたには呆れられてしまうかもしれないが。」
「なんなりと。」
「柳栄以外の妃については、平等に接していたんだ。訪う頻度だけではなく、全てにおいてだ。そして、三人に妃として大切にする以上の特別な感情は持たなかった。だから、嫌がらせの理由はそれではないだろうな。」
「では失礼ながら、何か思い当たる節などはございませんでしょうか。」
「なくもない。律佳はもともと水月と湖月の実家で行儀見習いをしていたようだ。その時に嫌がらせを受けていた、と聞いたことがあるな。水月も湖月も美しい女人だったが、律佳のそれは男の庇護欲をそそるものだ。それが鼻についたのだろうな。律佳自身はそんなこと望んでいなかっただろうから哀れといえば哀れなのだが。」
「左様でございましたか。」
「現皇后のあなたに本来聞かすべき話ではないのだが、すまないな。」
「お気になさいませんよう。私はあくまで仮初の皇后でございますし。お聞きしたのも私でございますので。」
「まあ、そうなのだが。しかし仮初とは冷たいことを言ってくれる。」

いや、仮初だからな。謎が解け次第すぐにでも私はこの位を誰かに譲って、のんびり暮らすんだからな。

蔡怜はわざとらしく悲しげな表情を見せる皇帝を冷たく一瞥した。
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