30 / 159
29 皇帝と皇后の密談4
しおりを挟む
「そうかもしれないな。ありがとう。あなたは聡明なところが柳栄とよく似ている。だから話しやすいのかもしれないな。あなたには失礼かもしれないが。」
「そう思っていただけるのであれば幸いにございます。」
「さて、湖月と水月についてだが、向こうの親からの強い勧めで、後宮に入ってもらうことになったんだが、美しいが気位の高い姉妹だったな。
ある時、湖月に鸚鵡という鳥が実家から贈られたんだが…鸚鵡は人の言葉を真似するというので、後宮での徒然の慰めに、ということだったのだろう…何も贈られなかった水月がそれを妬んだのか、湖月が部屋を離れた隙を見計らって侍女に鳥籠を開けさせたようだ。」
「あまり姉妹仲がよろしいとは言えないようでございますね。」
「だろうな。私もそう思う。まああの二人は一時が万事そのような感じでお互い張り合ってるようであったが、私に対してはある程度の礼儀をわきまえていたしな。」
「左様でございましたか。」
「ただ、私もさすがに柳栄から続けて妃を亡くしたのはこたえた。そして、律佳だが、彼女は控えめな女人だった。入宮してきたのは一番最後だったのもあって、常に他の妃達に気を遣っていた。それでもやはり水月や湖月から嫌がらせを受けていたようだが…健在の頃は柳栄がよく庇ってやっていたようだ。」
「水月様と湖月様は律佳様に辛くあたられたのは、自分達より後から入宮したにも関わらず、陛下の寵愛を律佳様が受けておられたためでしょうか。」
「いや、こんなことを言うとあなたには呆れられてしまうかもしれないが。」
「なんなりと。」
「柳栄以外の妃については、平等に接していたんだ。訪う頻度だけではなく、全てにおいてだ。そして、三人に妃として大切にする以上の特別な感情は持たなかった。だから、嫌がらせの理由はそれではないだろうな。」
「では失礼ながら、何か思い当たる節などはございませんでしょうか。」
「なくもない。律佳はもともと水月と湖月の実家で行儀見習いをしていたようだ。その時に嫌がらせを受けていた、と聞いたことがあるな。水月も湖月も美しい女人だったが、律佳のそれは男の庇護欲をそそるものだ。それが鼻についたのだろうな。律佳自身はそんなこと望んでいなかっただろうから哀れといえば哀れなのだが。」
「左様でございましたか。」
「現皇后のあなたに本来聞かすべき話ではないのだが、すまないな。」
「お気になさいませんよう。私はあくまで仮初の皇后でございますし。お聞きしたのも私でございますので。」
「まあ、そうなのだが。しかし仮初とは冷たいことを言ってくれる。」
いや、仮初だからな。謎が解け次第すぐにでも私はこの位を誰かに譲って、のんびり暮らすんだからな。
蔡怜はわざとらしく悲しげな表情を見せる皇帝を冷たく一瞥した。
「そう思っていただけるのであれば幸いにございます。」
「さて、湖月と水月についてだが、向こうの親からの強い勧めで、後宮に入ってもらうことになったんだが、美しいが気位の高い姉妹だったな。
ある時、湖月に鸚鵡という鳥が実家から贈られたんだが…鸚鵡は人の言葉を真似するというので、後宮での徒然の慰めに、ということだったのだろう…何も贈られなかった水月がそれを妬んだのか、湖月が部屋を離れた隙を見計らって侍女に鳥籠を開けさせたようだ。」
「あまり姉妹仲がよろしいとは言えないようでございますね。」
「だろうな。私もそう思う。まああの二人は一時が万事そのような感じでお互い張り合ってるようであったが、私に対してはある程度の礼儀をわきまえていたしな。」
「左様でございましたか。」
「ただ、私もさすがに柳栄から続けて妃を亡くしたのはこたえた。そして、律佳だが、彼女は控えめな女人だった。入宮してきたのは一番最後だったのもあって、常に他の妃達に気を遣っていた。それでもやはり水月や湖月から嫌がらせを受けていたようだが…健在の頃は柳栄がよく庇ってやっていたようだ。」
「水月様と湖月様は律佳様に辛くあたられたのは、自分達より後から入宮したにも関わらず、陛下の寵愛を律佳様が受けておられたためでしょうか。」
「いや、こんなことを言うとあなたには呆れられてしまうかもしれないが。」
「なんなりと。」
「柳栄以外の妃については、平等に接していたんだ。訪う頻度だけではなく、全てにおいてだ。そして、三人に妃として大切にする以上の特別な感情は持たなかった。だから、嫌がらせの理由はそれではないだろうな。」
「では失礼ながら、何か思い当たる節などはございませんでしょうか。」
「なくもない。律佳はもともと水月と湖月の実家で行儀見習いをしていたようだ。その時に嫌がらせを受けていた、と聞いたことがあるな。水月も湖月も美しい女人だったが、律佳のそれは男の庇護欲をそそるものだ。それが鼻についたのだろうな。律佳自身はそんなこと望んでいなかっただろうから哀れといえば哀れなのだが。」
「左様でございましたか。」
「現皇后のあなたに本来聞かすべき話ではないのだが、すまないな。」
「お気になさいませんよう。私はあくまで仮初の皇后でございますし。お聞きしたのも私でございますので。」
「まあ、そうなのだが。しかし仮初とは冷たいことを言ってくれる。」
いや、仮初だからな。謎が解け次第すぐにでも私はこの位を誰かに譲って、のんびり暮らすんだからな。
蔡怜はわざとらしく悲しげな表情を見せる皇帝を冷たく一瞥した。
1
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた8歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~
悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。
強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。
お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。
表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。
第6回キャラ文芸大賞応募作品です。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
雇われ側妃は邪魔者のいなくなった後宮で高らかに笑う
ちゃっぷ
キャラ文芸
多少嫁ぎ遅れてはいるものの、宰相をしている父親のもとで平和に暮らしていた女性。
煌(ファン)国の皇帝は大変な女好きで、政治は宰相と皇弟に丸投げして後宮に入り浸り、お気に入りの側妃/上級妃たちに囲まれて過ごしていたが……彼女には関係ないこと。
そう思っていたのに父親から「皇帝に上級妃を排除したいと相談された。お前に後宮に入って邪魔者を排除してもらいたい」と頼まれる。
彼女は『上級妃を排除した後の後宮を自分にくれること』を条件に、雇われ側妃として後宮に入る。
そして、皇帝から自分を楽しませる女/遊姫(ヨウチェン)という名を与えられる。
しかし突然上級妃として後宮に入る遊姫のことを上級妃たちが良く思うはずもなく、彼女に幼稚な嫌がらせをしてきた。
自分を害する人間が大嫌いで、やられたらやり返す主義の遊姫は……必ず邪魔者を惨めに、後宮から追放することを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる