後宮にて、あなたを想う

じじ

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25 蔡怜と侍女

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州芳しゅうほうが退室して程なくして奏輝そうきが側に戻って来た。
蔡怜は、州芳との話を思い返しながら、奏輝に話しかけた。

「ありがとう、あなたが紹介してくれた州芳のおかげで四人の妃達について知ることができたわ。」
「左様でございますか。お役に立てましたなら、何よりにございます。」
「でも、そちらに夢中になってしまって、薬膳茶会の相談を忘れてしまったわ。」

最後は少し冗談めかして告げると、奏輝は意外にも、笑みを浮かべて答えた。

「よろしいかと存じます。薬膳茶会などと名前はついておりますが、皇后様が側妃様方のためにもてなすことが大切なのです。料理も使用するものに特に決まりはありませんゆえ、お好きなようにされて問題ございませんよ。」
「まあ、そうだったの。でも、料理はそろそろ決めないといけないわよね。」
「そうでございますね。もしよろしければ、いくつか主となるものをお決めいただけましたら、その他のものは私達で手配いたしますが、いかがでしょう。」
「ありがとう。助かるわ。」
「ところで、皇后様。州芳とお話されている間に、黄貴妃こうきひ様の使いの者が参りまして…可能であれば明日か明後日にでも、お会いしたいとのことでした。」
「なにかしら。お会いするにあたって何かおっしゃっていた?」
「はい。どうやら、管修媛かんしゅうえん様をご紹介したいとのことでした。」
「管修媛様を?」
「申し訳ございません。それ以上はおっしゃられなかったもので。」
「分かったわ。ありがとう。では明日お二人にお会いしますと伝えておいて。それから明日の衣の色は翠色でよろしくね。」
「承知いたしました。」

一礼して奏輝は蔡怜さいれいの側を離れた。
一人になった蔡怜は、今日のこと、そして明日のことについて考えを巡らした。

四人の妃達は、みんな子を亡くしており、そのうち三人の妃が死んでいる。これはもともと知っていた。州芳と話して新たに知ったことは、妃達の死は自殺であったこと、御子は臍の緒が首に巻きついていて死んでいたことだ。四人目の卓妃のみ他の妃達とは状況が若干異なるようだが、これを果たしてどう捉えるべきか…そして明日には黄貴妃が管修媛とともに訪れるという。忙しい。
あー、一日でいいからゆっくり考える時間が欲しい。

枕に頭を埋めながらうめいていると、さきほど側を離れたはずの奏輝が慌てたように声をかけてきた。

「皇后様、失礼致します。今しがた陛下の使いのものより言伝を賜りました。今宵、陛下がいらっしゃるそうです。」
「そう…」

来んな、帰れと言わなかった自分を誉めたい、そう思いながら蔡怜は重い体を起こして、支度を整えるのであった。






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