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24 侍医女官の話⑦
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もはや呪いだな。亡くなった状態で生まれた子と、それを知り自害する妃達。なんで、そんなことが起こるんだ。
蔡怜は心の中で呟いた。
「そうだったのね。あなたもきっと辛かったでしょうね。」
蔡怜は州芳を労るように声をかけた。州芳は、蔡怜を見つめながら、うっすら瞳に涙を溜める。
「皇后様…私は、自分が許せないのです。」
絞り出すような声で州芳は答えた。それを慰めるように蔡怜は言った。
「あなたのせいではないわ。今日は辛いこと話してくれてありがとう。」
「とんでもないことでございます。皇后様、最後のお一人の側妃様のことをこのままお話させてください。と、申しましても、ご出産当日のことしか知らないのですが…。
ご出産の際にお手伝いさせていただいたとさきほど申し上げましたが、実は他の御子方と異なり、だいぶ早くお生まれになったのです。
ご懐妊判明より五月ほどでご出産となられましたので、御子は両手で収まるほどの大きさであらせられました。他の御子同様に臍の緒は首に巻きついておりましたが、亡くなられた直接の原因は早くお生まれになったことかと。
三人目の側妃様、卓律佳様のご出産は我々侍医女官達も予期しておりませんでした。突然陣痛が始まったのです。だからその時、手が空いておりました私が侍医と共に対応させていただきました。
律佳様はいつもと違う侍医女官が来たことに一瞬戸惑われたようですが、泣きながらおっしゃいました。
『ごめんなさい、ごめんなさい。』と。
おそらく、早く御子を産んでしまうことへの謝罪だったのだと思います。
私は律佳様のお人柄はよく知りませんが、癖のある湖月様水月様に比べて、穏やかで優しいご性格だったようです。そのためか、湖月様や水月様に嫌がらせを受けることもあったそうで…。湖月様や水月様とのお茶会の後に一人でひっそり泣かれている姿を見たことがあると、侍女が話しているのを聞いたことがあります。
話が脱線してしまいました。申し訳ございません。律佳様ですが、小さい御子をお生みになった後、愛おしそうにその亡骸をご自身の横に寝かされました。そして御子の頭を親指で撫でながら、私と侍医に仰られたのです。
『ごめんなさい。私とこの子をしばらく二人きりにして欲しいの』と。
私達は先のお妃様方の件がございましたので、もちろんお側を離れる気はありませんでした。しかし澄み切った瞳で懇願され、渋々お側を離れることにしました。
しばらくして、お側に戻ると律佳様は決然とした表情で仰いました。
『私はもう皇帝陛下の御子を身籠ることはできないでしょう。』と。」
「どう言うことかしら。」
「精神的にということかもしれません。御子を亡くされた悲しみから、二度と御子を身籠ることを拒否されたのではないかと。」
「陛下にはなんと」
「ありのままお伝えしました。陛下も不憫に思われたのでしょう。それ以上問うこともなく、ご実家へお返しになられました。」
「律佳様のご実家はそれを許したの。」
「前皇后様の時とはだいぶ状況が違いましたので…娘だけでも無事で帰って来て良かった、と喜んでおられたと聞いております。」
「そう、それなら良かった。ありがとう、助かったわ。今日はもう下がりなさい。」
「はい。また何かございましたら、なんなりとお申し付けください。」
一礼して州芳は静かに去っていった。
蔡怜は心の中で呟いた。
「そうだったのね。あなたもきっと辛かったでしょうね。」
蔡怜は州芳を労るように声をかけた。州芳は、蔡怜を見つめながら、うっすら瞳に涙を溜める。
「皇后様…私は、自分が許せないのです。」
絞り出すような声で州芳は答えた。それを慰めるように蔡怜は言った。
「あなたのせいではないわ。今日は辛いこと話してくれてありがとう。」
「とんでもないことでございます。皇后様、最後のお一人の側妃様のことをこのままお話させてください。と、申しましても、ご出産当日のことしか知らないのですが…。
ご出産の際にお手伝いさせていただいたとさきほど申し上げましたが、実は他の御子方と異なり、だいぶ早くお生まれになったのです。
ご懐妊判明より五月ほどでご出産となられましたので、御子は両手で収まるほどの大きさであらせられました。他の御子同様に臍の緒は首に巻きついておりましたが、亡くなられた直接の原因は早くお生まれになったことかと。
三人目の側妃様、卓律佳様のご出産は我々侍医女官達も予期しておりませんでした。突然陣痛が始まったのです。だからその時、手が空いておりました私が侍医と共に対応させていただきました。
律佳様はいつもと違う侍医女官が来たことに一瞬戸惑われたようですが、泣きながらおっしゃいました。
『ごめんなさい、ごめんなさい。』と。
おそらく、早く御子を産んでしまうことへの謝罪だったのだと思います。
私は律佳様のお人柄はよく知りませんが、癖のある湖月様水月様に比べて、穏やかで優しいご性格だったようです。そのためか、湖月様や水月様に嫌がらせを受けることもあったそうで…。湖月様や水月様とのお茶会の後に一人でひっそり泣かれている姿を見たことがあると、侍女が話しているのを聞いたことがあります。
話が脱線してしまいました。申し訳ございません。律佳様ですが、小さい御子をお生みになった後、愛おしそうにその亡骸をご自身の横に寝かされました。そして御子の頭を親指で撫でながら、私と侍医に仰られたのです。
『ごめんなさい。私とこの子をしばらく二人きりにして欲しいの』と。
私達は先のお妃様方の件がございましたので、もちろんお側を離れる気はありませんでした。しかし澄み切った瞳で懇願され、渋々お側を離れることにしました。
しばらくして、お側に戻ると律佳様は決然とした表情で仰いました。
『私はもう皇帝陛下の御子を身籠ることはできないでしょう。』と。」
「どう言うことかしら。」
「精神的にということかもしれません。御子を亡くされた悲しみから、二度と御子を身籠ることを拒否されたのではないかと。」
「陛下にはなんと」
「ありのままお伝えしました。陛下も不憫に思われたのでしょう。それ以上問うこともなく、ご実家へお返しになられました。」
「律佳様のご実家はそれを許したの。」
「前皇后様の時とはだいぶ状況が違いましたので…娘だけでも無事で帰って来て良かった、と喜んでおられたと聞いております。」
「そう、それなら良かった。ありがとう、助かったわ。今日はもう下がりなさい。」
「はい。また何かございましたら、なんなりとお申し付けください。」
一礼して州芳は静かに去っていった。
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