後宮にて、あなたを想う

じじ

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23 侍医女官の話⑥

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「でも、どうして自害されたのかしら。前皇后様と違って、お二人目をご妊娠できる可能性もあったのでしょう。」
「ええ。だから我々も非常に驚きました。私も侍医も前回の前皇后様の件がございましたので、できるだけ目は離さないようにしたつもりでしたが、それでもお止めするのは間に合いませんでした。」

そこまで話すと州芳しゅうほうは一旦口を閉じた。

「どうしたの。疲れてしまったかしら。水月様と四人目のお妃のお話も聞かせて欲しいのだれど、日を改めましょうか。」

蔡怜さいれいが優しく尋ねると州芳はゆっくり頭をふった。

「いえ、大丈夫でございます。お気遣いいただき感謝いたします。水月様なのですが、実は湖月様とほとんど同じ期間にご妊娠しておられました。本来お亡くなりになられた側妃様のことについて、このようなことを申し上げるべきではないのですが…その、湖月様と水月様は仲の良いご姉妹というわけではございませんでした。」

まあ、姉妹だからと言ってかならずしも仲良し、とは限らないだろうしな。自分とよく似た存在が、一人の男性を取り合う後宮にいると言うのは、愉快な状況ではないよな。
そう思いながら、蔡怜は不思議に思ったことを尋ねてみた。

「でも、水月様は湖月様と同じで、出産時の介助の際は、それまでの担当の侍医女官を外して、あなたにお願いしたのよね。なぜ、あまり好きではない姉君を担当した侍医女官にお願いしたのかしら。」
「ええ。そう思われるのも不思議ございません。私も呼ばれた際、不思議に思いましたから。それに、皇后様はお優しいので私にお気遣いくださったようですが、私がご担当させていただきました前皇后様と湖月様はお二人ともお亡くなりになっているのです。普通は縁起を気にして、私を避けるとお思いなりませんか。」

うん、確かにそれは一番に思った。でも流石に本人に直接それを聞くのが酷すぎることくらい分かる。
そう思いながら、蔡怜は話を続けるように促す。

「入室の許可を得るために、声をかけた際に全て分りました。
『湖月姉様を死に追いやった侍医女官ね。入りなさい。姉様の死をあなたがもたらしたなら、私にとっては幸運の女神だわ』
とおっしゃいましたので…お二人で謀って、侍女や侍医女官を虐められることもございましたので、皆お二人の間の溝に気づいていなかったのです。
私があまりに驚いた顔をしたためか、水月様も私をご覧になって一瞬驚かれたようでございます。
『なにか言いたいことでもあるの。』
と詰問されました。
私は、できるだけ水月様を刺激しないように、接させて頂きました。そしてご出産となり、御子がお生まれになった時、侍医と私は再度絶句することとなりました。やはり水月様の御子も先のお二人と同様に亡くなっておられたのです。
水月様にお伝えした瞬間、顔色がさっと変わり、その後は湖月様と同様でございます。」
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