後宮にて、あなたを想う

じじ

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18 侍医女官の話

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「蔡皇后様、侍医女官の州芳しゅうほうでございます。お呼びと伺い参りました。」
黄貴妃との対談の翌日、侍医女官の州芳が蔡怜のもとを訪れた。

奏輝そうきが言っていた侍医女官ね。今日はありがとう。」
「もったいないお言葉でございます。」
「早速だけれど、前皇后様の出産の際のお話を聞きたいのだけれど。」
「もちろんでございます。」
頭を下げた州芳は美しい女人だった。頭を垂れた際にはらりと一筋落ちる漆黒の髪。憂いを帯びた切れ長の黒い瞳は光の角度によって濃紺にも見える。白粉も紅も役職上、最低限のはずなのに、肌は透き通るように白く、唇は濃い紅を差したように赤い。

これは、女官の立場より妃の立場が似合いそうだな、と蔡怜はぼんやり思う。

「私が前皇后様を担当させて頂きましたのは、ご懐妊が判明してよりでございます。ご出産の当日まで毎日侍医と共に診させていただいておりました。時折辛さそうになさることもございましたが、概ね問題なくお子はお育ちになっておりました。」
「では、出産当日に何かしらの事故が起こったのかしら。陛下ですらご詳細をお知りにならなかったようだけど。」

だいたい皇帝ですら母子の死因の詳細を知らないということが、まずおかしいだろ。でも、もし侍医や侍医女官に出産時の手落ちがあったのであれば、すぐに手討ちとなっているはず。だが、州芳の話ぶりからは皇后と御子を死なせたにも関わらず、調べすら苛烈ではなかったようだし…。

「皇后様及び御子がお亡くなりの理由は陛下もご存じでいらっしゃいます。」
「私には、理由が分からないとおっしゃったのだけれど、どういうことかしら。」
「それは、おそらく、同じ理由で立て続けにお妃方と御子がお亡くなりになった理由が分からない、ということかと。」
「そう。亡くなられた理由は何だったの?」
「蔡皇后様。ここからさきお話する内容はどうぞ、皇后様の胸の内のみでお納めいただけますか。本来陛下より決して口外せぬようにと仰せつかってます。しかし、奏輝が後宮の安寧のため皇后様がさきのお妃方が亡くなられた理由をお調べになると申しましたので、お耳に入れさせていただきたいと思った次第なのです。」
「ええ。奏輝、あなたも出ていなさい。」
ちらっと横目で見ながら、蔡怜は側付きの侍女に退出を促した。
「ご配慮、感謝いたします。」
州芳はまた頭をたれる。

「御子は皆様、臍の緒が首に巻き付いてしまった状態でお生まれになりました。
おそらくお腹の中で、血の巡りが悪くなっていたのでしょう。お生まれになった時にはすでにお亡くなりになっていました。」
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