後宮にて、あなたを想う

じじ

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16 黄貴妃の提案

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「蔡怜様、失礼ながらお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「ええ、何でしょう?」
「私の勘違いでしたら、申し訳ございません。先ほど皇后としてどのように捉えるべきか、と仰っていましたが、蔡怜様は、なぜ子を成した妃方が不幸に見舞われたのか、理由をお知りになりたいのではありませんか。もしかして陛下あたりからお願いをされたのかもしれませんが」

これは鎌をかけられているのだろうか。こちらから尋ねたのだから、私が噂の解明をしたいと思っていることを黄昭様に知られてしまうのは仕方ない。ただ、陛下からの依頼で動いているという点は、最低限内密にしなければいけない部分だ。

「どちらかといえば、陛下には私からお尋ねしたようなものでございます。新たに陛下のもとへ嫁いできた私達全員に関係しかねない話ですので…理由が分かれば対処の仕様があるでしょうし、対処ができれば、陛下の子を身籠ることを純粋に喜べます」
「そうでしたか。出過ぎたことをお聞きしてしまい申し訳ございません。蔡怜様の仰るとおり、今回の入宮は特殊な事情が絡んでいるため、心のうちでは陛下の子を身籠ることを怯えている者もおりましょう。怯える必要がなくなるのであれば、これほど幸せなことはございません。」

さすが黄昭様。聞いてはいけない部分だったと察してくださったようだ。しかも、今の返事から察するに、私が動くのを手助けしてくださる気がする。

「蔡怜様、微力ではございますが、私にもぜひお手伝いさせていただけませんか。私が表立って動くことは立場上、あまりよろしくないかと思います。ただ、失礼ながら蔡怜様より多くの情報を仕入れる術を黄家は持っております。おそらくお力になれるかと思うのですが。」
「ええ、ありがとうございます。黄昭様がお手伝いくださるなら、これほど心強いことはございません。」
「もし、真相を解明できた暁には、私のお願いごとを一つ聞いてくださいますか」

いたずらっぽい笑みを浮かべて黄昭が蔡怜に尋ねる。

「私にできることでしたら…」
「もちろんですわ、蔡怜様。では、どうぞよろしくお願いいたします。」

やっぱりただで手伝ってもらえるなんて都合の良いことはないか。でも黄昭様のお願いごとってなんだ。皇后としての地位に関することだろうけど、地位を譲れ、という話なら私にはどうしようもない。私としてはむしろ積極的に譲りたいけど…。まぁ、とりあえずは黄昭様に協力してもらっての真相解明が先だな。お願いごとについてはその後考えればいいし。

蔡怜は、そう思いながら黄昭の退室を見送る。優雅な一礼の後、桃色の紗沙を翻して黄昭は去っていった。

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