後宮の巫術妃

じじ

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今の皇帝

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「ねえ、そういえば私ってあんまり外出したことなかったわよね」

どこか弾んだ声の宝珠に梅寧が引き攣った顔で答える。

「初めての皇后様のお茶会でそのような…」
「あら、私、どこかおかしいかしら」

くるりと一回転しながら自分のおかしいところを確かめようとする宝珠に梅寧は疲れ切った顔でため息をつきながら答えた。

「格好ではございません」

小首を傾げて先を促す宝珠に梅寧は全くの情け容赦なく続けた。

「お気持ちの方です。外出自体、仰られたとおり前皇帝の時分から数えるほどしかなされておらず、巫妃様となられてからはこの宮から出られたことがないにも関わらず、よくそのような余裕がおありですね」

ともすれば嫌味にしか聞こえない物言いだが、付き合いの長い宝珠には梅寧が自分を心配していると言うことが痛いほど分かり、思わずくすりと笑った。

「巫妃様?」
「いえ、おかしくて」
「何がでしょう」

むすりとした表情で答える侍女にいよいよ宝珠はおかしくなってきた。

「だって巫宮から出るように言ったのはあなたじゃない」
「…」

思わず黙り込んだ梅寧に、宝珠はからかうような笑みを向けた。

「冗談よ。あなたが心配してくれているのは分かっているわ。それに感謝もしてるのよ。でもそんなに気負わなくても大丈夫。忘れているかもしれないけれど私は前皇帝と前皇后の娘よ?礼を失するような真似はしないわ」
「申し訳ございません。出過ぎた真似を…」
「いいえ。ところで私、今の後宮事情に詳しくないのだけれど皇后陛下は現皇帝陛下の御従姉妹よね」
「はい」
「後宮に入られてだいぶ経たれるようだけれどご懐妊の噂は聞いたことがないわ」

梅寧は生真面目な顔で答えた。

「あまり主上とご関係が良くないようです」
「あらどうして?もともとのご血縁なら政治的しがらみ以上に信頼関係があるののではないかしら」

素朴な宝珠の疑問に梅寧は眉間に皺を寄せて答えた。

「少し込み入ったお話にはなるのですが…現皇帝陛下范杜永様は御歳32歳になられるのはご存知ですか」
「ええ」

今の自分の歳に謀反を起こし、父から玉座を乗っ取ったのだと思うと恨めしいと思うより純粋に賞賛の気持ちが湧いてくるから不思議だ。今の自分に同じことをしろと言われても無理だと分かるからだろうか、と考えて宝珠は思わず苦笑した。
しかしそんな宝珠の様子を気にしたそぶりもなく梅寧は淡々と続けた。

「皇后陛下の胡桂花様は色々な意味で難がお有りの方なので」

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