91 / 91
10年後
最終話
しおりを挟む
フォーゼムと結婚してから10年が経った。
この時間が長かったのか短かったのか…正直分からない。
あの日。彼が私に心からの愛を誓ってくれたあの日。私の世界は変わり始めた。
与えられない愛に怯えて泣く必要がないことも。
周りの目を気にせず、自分の意思で生き方を決められることも。
そしてそれを特別なことではなく、当たり前だと思えることも。
全てフォーゼムが私に教えてくれたことだった。
あの日彼が私に誓ってくれたとおり、彼は変わらず私を深く愛してくれている。
私も心から彼を愛している。彼への愛情はきっとこの先も尽きることはないのだろう。
幸せ。そう感じられることがどれほど得難いものであるか私は知っている。
子ども達の柔らかな頬に触れる時、フォーゼムに優しく手を取られた時、私は泣きたくなるほどの幸福感に包まれる。
「母様!あちらに綺麗なお花が咲いていたの。だから母様に花冠作ったの」
嬉しそうに駆けてくるのは九つになる長女のヘレンだ。
「花束もあるよ」
ヘレンの後ろからは、長男のジャンがにこにこしながら同じ花で作った小さい花束を渡してくれる。
「僕も花冠作りたかったんだけど…姉様みたいにできなかった」
「あら、花冠二つは母様が困るわよ」
少し得意げな様子で、弟を慰める姿が愛らしい。
「とても綺麗ね。嬉しいわ」
私が微笑みながら二人に言うと、二人は嬉しそうに頷いた。
「母様、花冠載せてくれる?」
きらきらした目で言ったヘレンの前に屈むと、冠を載せてくれる。
「似合うかしら?」
「「とっても!」」
声を揃えて答えた子どもたちにもう一度微笑みかける。
「カリーナ!ああ、ここにいたのか」
背後から呼ばれて振り返るとフォーゼムが驚いたように、目を見開く。
「あら、フォーゼム。どうなさったの?」
「いや…それ」
「ヘレンとジャンがくれたのよ。すてきでしょう?…少し可愛すぎるかもしれないけれど」
照れ隠しのように言うと、フォーゼムは私から視線を逸らすことなく告げた。
「とても似合っている…綺麗だ」
「まあ」
「母様、天使みたい」
甘えて抱きついて来た子ども達を抱きしめる。幸せのあまり涙がこぼれる。
私の涙を拭いながらフォーゼムは微笑んだ。
「天使のなみだ、だな」
この時間が長かったのか短かったのか…正直分からない。
あの日。彼が私に心からの愛を誓ってくれたあの日。私の世界は変わり始めた。
与えられない愛に怯えて泣く必要がないことも。
周りの目を気にせず、自分の意思で生き方を決められることも。
そしてそれを特別なことではなく、当たり前だと思えることも。
全てフォーゼムが私に教えてくれたことだった。
あの日彼が私に誓ってくれたとおり、彼は変わらず私を深く愛してくれている。
私も心から彼を愛している。彼への愛情はきっとこの先も尽きることはないのだろう。
幸せ。そう感じられることがどれほど得難いものであるか私は知っている。
子ども達の柔らかな頬に触れる時、フォーゼムに優しく手を取られた時、私は泣きたくなるほどの幸福感に包まれる。
「母様!あちらに綺麗なお花が咲いていたの。だから母様に花冠作ったの」
嬉しそうに駆けてくるのは九つになる長女のヘレンだ。
「花束もあるよ」
ヘレンの後ろからは、長男のジャンがにこにこしながら同じ花で作った小さい花束を渡してくれる。
「僕も花冠作りたかったんだけど…姉様みたいにできなかった」
「あら、花冠二つは母様が困るわよ」
少し得意げな様子で、弟を慰める姿が愛らしい。
「とても綺麗ね。嬉しいわ」
私が微笑みながら二人に言うと、二人は嬉しそうに頷いた。
「母様、花冠載せてくれる?」
きらきらした目で言ったヘレンの前に屈むと、冠を載せてくれる。
「似合うかしら?」
「「とっても!」」
声を揃えて答えた子どもたちにもう一度微笑みかける。
「カリーナ!ああ、ここにいたのか」
背後から呼ばれて振り返るとフォーゼムが驚いたように、目を見開く。
「あら、フォーゼム。どうなさったの?」
「いや…それ」
「ヘレンとジャンがくれたのよ。すてきでしょう?…少し可愛すぎるかもしれないけれど」
照れ隠しのように言うと、フォーゼムは私から視線を逸らすことなく告げた。
「とても似合っている…綺麗だ」
「まあ」
「母様、天使みたい」
甘えて抱きついて来た子ども達を抱きしめる。幸せのあまり涙がこぼれる。
私の涙を拭いながらフォーゼムは微笑んだ。
「天使のなみだ、だな」
100
お気に入りに追加
370
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(23件)
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

【完結】政略結婚はお断り致します!
かまり
恋愛
公爵令嬢アイリスは、悪い噂が立つ4歳年上のカイル王子との婚約が嫌で逃げ出し、森の奥の小さな山小屋でひっそりと一人暮らしを始めて1年が経っていた。
ある日、そこに見知らぬ男性が傷を追ってやってくる。
その男性は何かよっぽどのことがあったのか記憶を無くしていた…
帰るところもわからないその男性と、1人暮らしが寂しかったアイリスは、その山小屋で共同生活を始め、急速に2人の距離は近づいていく。
一方、幼い頃にアイリスと交わした結婚の約束を胸に抱えたまま、長い間出征に出ることになったカイル王子は、帰ったら結婚しようと思っていたのに、
戦争から戻って婚約の話が決まる直前に、そんな約束をすっかり忘れたアイリスが婚約を嫌がって逃げてしまったと知らされる。
しかし、王子には嫌われている原因となっている噂の誤解を解いて気持ちを伝えられない理由があった。
山小屋の彼とアイリスはどうなるのか…
カイル王子はアイリスの誤解を解いて結婚できるのか…
アイリスは、本当に心から好きだと思える人と結婚することができるのか…
『公爵令嬢』と『王子』が、それぞれ背負わされた宿命から抗い、幸せを勝ち取っていくサクセスラブストーリー。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから
すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。
伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。
「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」
「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」
しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。
微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。
ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。
「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」
彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。
※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】
私には婚約中の王子がいた。
ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。
そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。
次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。
目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。
名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。
※他サイトでも投稿中

義妹のせいで、婚約した相手に会う前にすっかり嫌われて婚約が白紙になったのになぜか私のことを探し回っていたようです
珠宮さくら
恋愛
サヴァスティンカ・メテリアは、ルーニア国の伯爵家に生まれた。母を亡くし、父は何を思ったのか再婚した。その再婚相手の連れ子は、義母と一緒で酷かった。いや、義母よりうんと酷かったかも知れない。
そんな義母と義妹によって、せっかく伯爵家に婿入りしてくれることになった子息に会う前にサヴァスティンカは嫌われることになり、婚約も白紙になってしまうのだが、義妹はその子息の兄と婚約することになったようで、義母と一緒になって大喜びしていた
。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
完結お疲れ様でした!
カリーナ、お子さん二人とフォーゼム様と末永くお幸せに!
ありがとうございます!
最後までお付き合い頂きありがとうございました!
コメント、とても励みになりました!
感想ありがとうございます!
カリーナは必要以上に自分を責めてしまうので、このような心持ちになってしまいました。
引き続き楽しんでいただけると嬉しいです!
感想ありがとうございます!
ええ、本当に自己中極まりなく、自分たちの欲望以外は考えられない人間たちです。
これからも引き続き読んで頂けると嬉しいです!