【完結】悪女のなみだ

じじ

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本編【第二章】

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「先ほどからあなたは泣いてばかりだな」

優しい微笑みとともに言われて、思わず言い訳をしてしまう。

「あの、すみません…いつもはこんなことはないのですが。フォーゼム様がお優しいのでつい気が緩んでしまったみたいです」

カレンが泣くと優しく労る両親も、私が泣くと憎々しげな表情で見た後無視をした。
男性達もカレンの涙には美しい悲哀を感じるのに、私の涙には誘惑を感じるようだった。
だからこそアンの前で以外は極力泣いたりしないように気をつけていた。

「そうか。泣き顔も美しいがあなたには笑っていて欲しい。あなたを泣かせないように努力しよう」

その言葉にまた泣けてしまいそうになる。彼は私のその様子に気づくと、にやりと笑って続けた。

「もちろん、嬉しくて泣くのであれば大歓迎だよ」

私も思わず微笑んだ。


程なくして屋敷に着いた。馬車が停まり、ドアが外から開かれる。フォーゼム様との幸せなひとときのせいで完全に頭から抜け落ちていたが、カレンはシュナイダー様との婚約が私のせいで破棄になってしまった。
父も母もお気に入りのカレンが不幸になり、気に入らない私が幸せになることを認めるとは思えない。
暗い気持ちで、馬車をおり屋敷を見る。フォーゼム様の馬車を見送ってから部屋に入ることにしよう。そう思って、フォーゼム様に別れの挨拶をしようと振り返ると、彼は私に続いて馬車から降りようとするところだった。

「あの、フォーゼム様?ここはまだバレール邸ではございませんが…」

驚いて頓珍漢なことを言ってしまう。彼は私の言葉を聞くとクスリと笑い、明るい声で答えた。

「ああ。さすがに私も自分の家でないことは見たら分かるよ。先ほどあなたにプロポーズしたんだ。順番が逆にはなってしまったがご両親に承諾を得なければいけないしね。日を改めて伺うのが本来だろうが…一刻も早くあなたとのことをお伝えしたいんだ。迷惑だろうか。」
「いえ、そのようなことは…ただ、カレンのことがありますので」
「ああ。私が彼女とシュナイダーの縁談を壊してしまったことにも謝罪しなければなるまい。」
「そんな。私の落ち度です。もっと他にもやりようがあったかもしれませんのに」
「あなたの責ではないだろう。いずれにせよ、ご両親に説明は必要だ。疑う訳ではないが、あなたの両親はあなたの話をちゃんと聞いてくれるか」

私は思わず黙り込んだ。
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