【完結】悪女のなみだ

じじ

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サイドストーリー

アンの推測

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美しい、その言葉はカリーナ様のためにこそある。そう思ったほどだ。

フォーゼム様から届けられたドレスを着ることを躊躇っていたカリーナ様に、色々言い募ってなんとか袖を通して頂いた。
そのドレスに身を包んだカリーナ様は本当に美しかった。

届けられたドレスを見たとき、確かに美しい品だとは思ったが、まさかここまでカリーナ様の素晴らしさを引き立たせるとは…。
そして私はふと気づいた。

このドレスの贈り主のフォーゼム様はカリーナ様のことをよくご存知なのではないか、と。
ドレスの形も一般的なものと少し異なるデザインだ。かと言って派手なわけではなく、いたって上品な形だが、着る相手を選んでしまいそうなものだ。
このドレスをカリーナ様に似合うと確信持って贈れるとは、カリーナ様と親しいのだろうか?いや、さっきカリーナ様は付き合いがないと仰っていた。

悶々としながらも私は一つの可能性に気づいた。
もしかして、フォーゼム様はカリーナ様のことを密かに思い続けておられたのでは?
よほど親しい間柄でもない限りドレスなどそうそう男性から女性に贈ることはない。好みの問題もあるからだ。
でも、今回フォーゼム様が初めての贈り物にも関わらずドレスを贈って来られたと言うことは、よほど普段のカリーナ様の装いを見兼ねて、そしてこのようなドレスなら似合うだろう、と気にかけてくださっていたからなのでは。

カリーナ様は付き合いがないと仰っていたところをみると…やはり、本人が気づかないまま人助けでもしたのだろう。
過去にも何度かそう言うことはあった。
カリーナ様はご自身が見た目で謗られることもあるため、他人に対して公正に接しようとされる節がある。

昔、ティルデ子爵のご令嬢ヘンネ様が一度、カリーナ様を訪ねて来られたことがある。
ヘンネ様は優しく謙虚なご性格、そして柔らかな美貌は私から見てもカレン様より美しかった。

そのヘンネ様に嫉妬したカレン様が、令嬢達の集まりの際、ヘンネ様にわざと紅茶をかけようとしたそうだ。
その時に、すっとヘンネ様の前に立たれて紅茶を代わりに浴びたのがカリーナ様だったらしい。

カリーナ様は冷たい声で、カレン様を嗜めるとともに、ヘンネ様に謝罪されたそうだ。

ヘンネ様は、その時のお礼をカリーナ様に伝えにいらしたそうだ。
ティルデ子爵はもともと外国貴族で、見聞を広げるという名目で、妻子を伴ってこちらに来ていたため、その後すぐに帰国されたそうだ。
そのまま、ヘンネ様がいらっしゃればカリーナ様の良きご友人で理解者となったのにと思うことは多々あった。

いや、今はフォーゼム様のことだ。
きっと彼も同じように、カリーナ様に助けられたうちの一人なのだろう。
なんにせよ、カリーナ様の本当の姿を知っている方がいるのは心強い。
どうか、フォーゼム様がカリーナ様にとっての理解者であり、そして願わくば特別な方でありますように。

そう祈りながら、私はカリーナ様を送り出した。

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