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マリア=グラッド

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家族はいつも私を苦しめた。
妹は私の大切なものを奪っていった。幼い頃は、一番大事にしてたお人形。大きくなってからはお気に入りのドレスに宝石。それに恋人。
そして、両親はそんな妹を叱ることがなく、それどころか私を嗜めた。私が怒っても泣いても両親から言われる言葉はいつも同じだった。

「お姉ちゃんなんだから妹に譲ってあげなさい」

その言葉は私を苦しめた。私がいつも我慢しないといけないの?私の物を盗ってるのはあの子の方なのに?

妹のマーガレットは自分が両親から優先されるのをわかっているから、私が両親に訴えても冷笑しながらこちらを見ていた。

あれから20年。両親は60を超えて、最近では自分一人で歩くのもままならないようになってきた。普段の世話はメイドがやってくれているが、流石に娘が二人とも離れて暮らすことに心細さを覚えたらしい。私とマーガレットと4人で出会って一度今後のことを話したいと手紙がきた。

私はグラッド子爵領から馬車に乗って2日かけて、実家のヘンデ子爵領にやってきた。マーガレットは、ヘンデ子爵領の隣のクレル子爵領に嫁いだので、半日程でついたようだ。


「久しぶりね、マリア」

母がにこやかに声をかけてくる。父も背後でにこにこと微笑みながら迎えてくれる。マーガレットも穏やかにこちらを微笑んで見ている。
私は微笑んで答えた。

「ええ、お父様もお母様もお久しぶりです。マーガレットも久しぶりね。元気にしていたかしら」
「ええ、姉様も…あら、素敵なネックレスね」
「ありがとう」
「どちらで買ったの?」
「夫がプレゼントしてくれたの。」
「まあ!羨ましいわ…エリオットはそんなことしてくれないし…」
「そう」

嫌な予感がし、その話題を切り上げようとした時、マーガレットのいつもの台詞がでた。

「欲しいわ、それ」
「だめよ」

私は即座に答えた。これは結婚記念日に夫からもらったものだ。

「姉様だけずるい」
「そうよ、マーガレットはエリオットからもらえないのよ。マリア一つくらいいいじゃない。おあげなさいな。」
「お前は姉だろう。ネックレスの一つも妹に譲れないなんて。浅ましい…」

呆れたように言われて、私こそ内心呆れ返った。浅ましいのはどちらだ。

「まあ、ネックレスは置いておいて…今日、私をわざわざお呼びになられたご理由をお聞きしてもよろしいですか」

しれっと尋ねると両親は水を向けられのを待っていたようで、つらつらと話し出した。

「そう、それなんだが、私たちもそろそろ年だ。使用人達がいるとは言え、お前たちの両方と離れて暮らすことに不安を感じてな。それで母さんとマーガレットと相談したのだが、領地は隣接しているマーガレットに任せて、私たちはお前達夫婦に世話になろうと思う。」

私は微笑みながら答えた。

「なるほど。領地とお父様お母様のお世話とで分担するのですね」
「ああ。」
「私が領地の管理の方が良いと申し上げたらどうなるのですか」
「なんとひどいことを」

途端に母は喚き出した。

「マーガレットは、離れた土地に暮らすお前には領地の管理が大変だと思って、私たちと暮らすのを諦めて領地の管理を申し出たというのに」
「そうよ。姉様。私も本当はお父様お母様と暮らしたかったの。」

それを聞いて私はせせら笑った。

「それなら一瞬に暮らせばいいじゃない」
「だから、領地か私達の世話かどちらか…」

母が言い募ろうとしたが、最後まで聞かずに私は告げた。

「領地の管理か両親の世話かだなんて馬鹿らしい二択、よくも思いつきましたね。普通はセットではありませんか。収益となる領地の管理と、負債となるあなた達の世話とを。」
「なんだと」
「マーガレットが全て受け継ぐではいけませんの?おっしゃる通り、私はこちらの領地をもらっても管理が大変です。だからと言ってあなた達の世話を引き受ける気など毛頭ありません。」
「この恩知らずが!」
「それはマーガレットの方ではありませんか?クレル子爵には多額の援助をなさってるのでしょう?私たちは子の誕生日一つ祝って頂いた記憶がございませんが」
「お前のところは金に困ってないだろう!」
「当たり前です。困らないように計画立てて領地を管理しているのですから。貴族の間ですら金遣いが荒いと噂のマーガレット達の方がおかしいのです。それより、利益となる物は自分の手元に、お世話になっておきながら負債となるあなた達の世話は私に、と言えるマーガレットの方こそ恩知らずなのでは?」

私が言い募ると、いつものあの言葉を父は言った。

「お前は姉だろう、妹のために我慢したらどうなんだ!」

私はにっこり微笑んだ。きっと今日こう言うためだけに私はずっと耐えてきたのだ、と思いながら。

「いいえ、もう我慢するのは終わりです。お父様もお母様もマーガレットも、私にはから」






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