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9 復讐の始まり

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「あ、アレネ…なんで」

驚いた様子のヴァンに私は鍵の束を見せる。

「ここは私の屋敷よ?部屋の鍵、すべて持ってるに決まってるでしょ」
「そうだが…」
「あら、いつまで寝てるの?さっさと物置きの鍵つけなさいよ」
「え?今から?真夜中だよ。どうしたの」
「私がしろと言っているのよ、さっさとしなさい。ほら、早く!」

言葉を無くしているヴァンに私はにやりと笑う。

「あら、どうしたの、その顔」
「いきなりどうしたんだ?物置きなんかいつでも」
「それがね、よくないの。あの部屋にあなたを入れようと思ってるから」
「どう言う意味だ」
「言葉通りの意味よ。私の機嫌が悪い時には顔を見なくて済むように、あなたにあの部屋に入ってもらうの。外からしか開け閉めできない部屋にね」
「意味がわからない」

呆れた顔をしたヴァンは、柔らかく私の手を払いのけると、私を宥めるように甘い笑みを浮かべた。

「アレネ、落ち着いて。俺の顔を見たくないって言うならその日は自分の部屋から出ないと誓う。だからいつものアレネに戻ってくれ。それと起こす時はもう少しお手柔らかに頼む。髪の毛を引っ張るなんて手荒な真似はやめてくれ。また明日続きは聞くから」

そう言って再び、横になろうとするヴァンの髪の毛を思いっきり鷲掴みにする。

「ふざけてるの?今しなさい。ああ、そうだわ。今日はもうこの部屋で寝ないでね。言いつけが終われば床の上で寝なさい」

今度こそ彼は不審な顔で私を見つめた。

「あら、何か言いたいことがあるの?分かってると思うけれど…公爵家の娘よ私?あなたの実家へも多額の援助をしているわ。あなたはこれから先ずっと私の機嫌を取り続けるのよ」
「アレネ…」

身分の違いや金銭面は彼が一番言われたくないことのはずだ。案の定、彼は一瞬傷ついた表情を見せる。それを思いっきり馬鹿にした顔で見る。

「あら…傷ついているの?ふふっおかしい」
「なに」
「ねえ、不思議でしょう?私が変わった理由。知りたいでしょう」
「…」
「教えてあげてもいいのよ」

はっと私を見上げる顔に期待の色が見える。訳がわからない。なぜ結婚した途端いきなりこんな扱いを受けるのか知りたい、そう顔に書いてある。

「ふふ、冗談よ。教えてあげない。結婚生活はこれから長いのだから。色々考えてみるといいわ。私からでないと離縁はできないのだから覚悟するのね。」




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